アイディアマン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章
アイディアマン
奥村美海と上西香耶はこの時大いに悩んでいた、二人共働いている店の中で難しい顔をしていた。
それでだ、二人で話をしていた。
「どうする?」
「どうするってねえ」
美海は香耶に難しい顔で応えた。
「ヒット商品を出せってね」
「店長さんあっさり言ったけれど」
「それでもよね」
「そう、それでもよ」
具体的にはとだ、今度は香耶が言った。
「具体的にはね」
「美味しくてお客さんに大人気」
「そんなメニューね」
「二人で考えてくれっていうけれど」
その店長がだ。
「具体的にってなると」
「どうもね」
「思い浮かばないわね」
「うちレストランだけれど」
八条レストラン仙台店である、二人はそこにいる社員なのだ。
「ファミレスだから」
「どうもメニューが多くて」
「それでどうするか」
「具体的になると」
「何なら」
香耶はここで美海に言った、見れば美海は黒髪を腹のところまでストレートで伸ばしていて黒目がちの蒲鉾形の小さめの目を持っている。大きめの唇はピンクで眉は奇麗だ。背は一五六位だ。額は前髪で八割程隠している。
香耶は細い眉に奇麗な整った目をしていてかなり色白だ、黒髪は彼女も長く額を隠しているが髪の毛の質は絹の様で目立つ。唇は穏やかな感じだ。ただ背は美海よりも五センチは低い。
「ここは思い切って」
「思い切って?」
「派手に行く?」
こう美海に言うのだった、閉店後の店内の会議室で私服姿で話をしている。終電まで話すつもりだ。
「こうなったら」
「こうなったらって」
「そう、キャビアとか使うとか」
「それ駄目でしょ」
美海は香耶にすぐに返した。
「お金がね」
「かかるから?」
「高くなるし」
メニューのそれもだ。
「だからね」
「アウトっていうのね」
「そうよ、高級食材はね」
それはというのだ。
「ファミレスじゃ無理よ」
「ううん、そうよね」
「ファミレスはリーズナブルじゃない」
それでというのだ。
「それでキャビアとかは」
「無理なのね」
「そうでしょ」
美海はこう香耶に述べた。
「これは」
「ファミレスで高いものを食べるか」
「期待薄だしそもそも採算がね」
「その問題もあるのね」
「だからね」
それでというのだ。
「高級食材はね」
「無理なのね」
「ファミレスってことを考えないと」
「駄目ってことね」
「そうよ」
香耶に話した。
「魅力的ではあっても」
「ここはファミレスってことね」
「このことを忘れたら」
それこそというのだ。
「失敗するわよ」
「ううん、じゃあ高級食材自体を没ってことで」
「そう、安くて美味しくて」
そしてだった。
「親しみがある、例えばね」
「例えば?」
「ハンバーグね」
美海はこちらを出した。
ページ上へ戻る