夜食

　炒めた野菜とソーセージをそのラーメンの上に乗せてだ、そのうえでテーブルにラーメンを持って来てだ。
　席に座って箸を出して頂きますをしてから食べる、翔大は最初に卵とソーセージを食べて言った。
「あれっ、これは」
「美味しいでしょ」
「ああ、卵もソーセージも美味いな」
「だから入れたのよ」
　リンは麺を食べつつ言った。
「こうしてね」
「成程な」
「ええ、それとだけれど」
「それと？」
「あんたが茹でた麺だけれど」
「まずいか？」
「いい茹で加減よ」
「インスタントだと変わらないだろ」
「いや、インスタントでも茹で過ぎたらのびるから」
　当然のことである、このことは。どの面でも茹で過ぎるとどうしてものびてしまうものだ。
「下手な人はね」
「のびるんだな」
「それが適度だから」
　それでというのだ。
「いい感じよ」
「そうなんだな」
「それで野菜とかどう？」
　リンは翔大からこのことを聞いた。
「美味しい？」
「ああ、味付けもいいしな」
「ちゃんと火通ってる？」
「しっかりとな」
　玉葱のそれもというのだ、葱は細かく刻んで生のまま上から乗せている。
「いい感じだよ」
「だったらいいわ」
「ああ、しかしな」
「しかし？」
「本格的な夜食になったら」
　暗いリビングの中での言葉だ。
「食パン齧るとかじゃなくて」
「だからスイッチが入ったからよ」
「だからか」
「そうよ、こうしたの作ったのよ」
「本当に変なところでスイッチ入ったな」
「自分でもそう思うわ。じゃあ食べたらね」
「寝るんだよな」
「何言ってるのよ、丼もお鍋も洗ってよ」　
　リンは翔大にこのことも言った、自分の向かい側の席に座る弟に。
「そうしてからね」
「寝るのかよ」
「そうよ」
　こう言うのだった。
「全部奇麗にしてからね」
「しっかりしてるな」
「常識でしょ」
「真面目だからな、姉ちゃん」
「いえ、常識でしょ」
　真面目云々抜きでなくというのだ。
「食べたら後片付けをするのは」
「そんなの朝でいいだろ」
「すぐにしないと駄目よ」
　あくまでこう言うリンだった。
「そこはね」
「お母さんと同じこと言うな」
「当たり前でしょ、いつも奇麗にしていないと」
　実際に母親にそう教えられている、翔大もそれは同じだが性格の違いがはっきりと出ていた。