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真田十勇士

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巻ノ百九 姉妹の絆その八

 だからだ、今も言うのだ。
「腹は括っておる」
「既に」
「その時はわしも迷わぬ」
「さすれば」
「どうしても切支丹は捨て置けぬからな」
 このことが念頭にあってだった、家康は腹を括った。それ故に言うのだった。
「そうする」
「むしろです」
「断固たるものにせねばな」
「これが民百姓の並の罪ならです」 
 そうしたものならというのだ。
「別にです」
「罪一等か二等は減じてな」
「大目に見てもいいですが」
「むしろそうせねばな」
「はい、惨い刑や厳しい法はです」
「本朝には馴染まぬ」
「あの織田様でもです」
 信長もとだ、崇伝は家康もよく知るこの者の話もした。
「確かに重罪人には容赦しませんでしたが」
「それでもな」
「多少の罪はさして気にされませんでした」
「あれで民百姓には寛容な方じゃった」
「はい、ですから」
「民百姓には寛容でな」
「仁の心を忘れてはなりませぬ」 
 崇伝は民百姓、天下の殆どの者に対してはそうならないと考えていてそれで家康にも言った。
「決して、ですが」
「切支丹となるとな」
「その話が違いまする」
「無暗な殺生は論外にしても」
「あえて厳しいことをせねば」
 そうしなければというのだ。
「本朝を乗っ取られてしまいます」
「そうなっては何もならぬ」
「そうなりますな」
「全くじゃ」
「そうじゃ、だから大久保家についてもな」
「伴天連が関わっているとなれば」
「容赦せぬ、しかし」
 家康は大久保家、彼にとってはまさに譜代の中の譜代の臣の家である彼等について思いそれでこうも言った。
「あの者達は何を考えてじゃ」
「若し伴天連とつながっておるなら」
「それは何故じゃ、しかもどうも彦左衛門辺りはじゃ」
 その大久保家の者であってもというのだ。
「そんなことは一切知らぬな」
「あの御仁は文字通り武辺です」
「至って不器用な男じゃ」
 そしてその不器用さがまたいい、家康はこうも考えていた。
「文字通り槍一筋の者」
「だからこうしたことについては」
「知る筈もない」 
 家康は彼については確信して言った、言い切ったと言ってもいい。
「断じてな」
「ですな、話を聞いても」
「かえって驚くわ」
「そうなりますな、やはり」
「うむ、しかしな」
「本家については」
「違う、あの者達は何を考えておるか」
 深く考える顔でだ、こうも言った家康だった。
 その家康にだ、崇伝ははっと気付いた顔になってだ。そのうえで主に対してこうしたことを言った。
「伊達殿では」
「伊達か」
「はい、あの御仁はおそらくですが」
「まだ天下を狙っておるか」
「非常に野心の大きな方です」
「そして切支丹ともな」
「はい、支倉殿のことで」
 この者の話も出た。
「気になる動きもあります」
「南蛮と密かに結ぼうとしておるか」
「そうでは、そして」
「その時はか」
「はい、辰千代様を」
 家康の六男であり正宗の妹婿である彼をというのだ。
「そうでは」
「辰千代か」
 家康はその名を聞いて顔を顰めさせてこう言った。
「前からじゃ」
「あの方についてはですか」
「あの勘気をどうかと思っておる」
 気性が激しい、このことに気をつけているというのだ。 
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