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真田十勇士

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巻ノ百九 姉妹の絆その七

「大久保殿に限ってです」
「切支丹とつながってるなぞじゃな」
「こう言っては何ですが」
 こう前置きして言うのだった。
「上総介殿、お父上も含めて」
「そのうえでじゃな」
「大久保殿を陥れようとしていると思いましたが」
「その話を聞いてか」
「若しやと思いはじめています」
「そうか、お主も」
「服部殿に調べてもらうことはです」
 家康のその決定はというのだ。
「お早いことでよかったかと」
「そうか、しかし影だけか」
「尻尾も見えなかったとのことです」
「姿は見せぬか」
「そうそう迂闊なことはせぬ者達の様です」
 切支丹、つまり伴天連の者達はというのだ。
「やはり」
「それだけに余計にじゃな」
「表の伴天連の者達ではありますまい」
 教会を建てそこで信者を増やしている様な、というのだ。
「妖しきの者達でしょう」
「本朝を乗っ取ろうとしている」
「表の者達ですら他の教えを認めず危ういのです」
「ならば裏の者達はじゃな」
「尚更です」
 危ういというのだ。
「ですから」
「ここはじゃな」
「服部殿によく働いてもらうべきです」
「十二神将全てを連れて行く様にさせた」
「それでは」
「相当な者達でもな」
「はい、隠れることは出来ませぬ」
 伊賀者達の間でも手練れ揃いの彼等が全ているならというのだ。
「必ずや」
「そうじゃな、ではな」
「はい、このままです」
「あの者達に調べさせ歯向かうならな」
「その時も考えてですな」
「あの者達を行かせた」
 服部と十二神将達をというのだ。
「そうさせたのじゃ」
「では後は」
「半蔵がやってくれるな」
「そう思います」
「必ずな、しかしじゃ」 
 家康は崇伝に苦い顔でこうも言った。
「わしは覚悟しておる」
「大久保殿が、ですな」
「切支丹とつながりよからぬことを企んでいれば」
「その時はですな」
「成敗する」
 その苦い顔で言い切った。
「何としてもな」
「大久保家自体を」
「譜代中の譜代、あの家の者達には何かと助けてもらっていたが」
「それでもですな」
「その時は仕方がない」
「何としてもですな」
「すべきことをする」
 家康がというのだ。
「さもなければ天下は治まらぬからな」
「天下の為にはですな」
「本意でないこともせねばならん」
「それが天下人、一の人ですな」
「それがわかったわ」
 将軍、そして大御所になってだ。家康もそのことが実際にその身からよくわかったのだ。それで今も言うのだ。
「よくな」
「だからですな」
「大久保家もそうであるし」
「他のことも」
「全ては天下万民の為じゃ」
「それは出益ねば」
「天下はまた乱れる」
 そうなってしまうこともだ、家康はわかっていた。 
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