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キコ族の少女

作者:SANO
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第8話「1997年……」

 初仕事に失敗して不貞腐れていた恥ずかしい過去を教訓に、俺は修行を続けた。

 ちなみに、あの後は皆に仕事とその他諸々で迷惑をかけてしまった事に対して、謝罪した。
 怪我の治療もせずに逃げたことに注意を受けたものの、特に怒られることはなく笑って許してくれたので、ノブナガに言われてても安心しきれなかった不安がスッキリとなくなった瞬間だった。

 その後の修行はと言うと、基礎練習を中心としており特に話をすることがないので、代わりとして初お披露目となった俺の念能力について少し話をしようと思う。


**********


 俺の念能力「体を持たぬ下僕達(インビジブルユニット)」は操作系・具現化系・放出系と、三つの系統の複合技である。
 似たような能力だと、ゲンスルーの「命の音(カウントダウン)」やレイザーの「14の悪魔」とかが、何度も登場してて印象に残っているかな。
 で、どちらも熟練者が使用していた事で察しがつくと思うが、1年ちょっと修行した俺の力量程度では使いこなすのは難しい。
 さらに、右目に少々特殊な能力がついている俺も例外なく、一つの系統……操作系しか極めることが出来ない事も難しさに拍車をかけている。
 まあ例外中の例外として、クラピカ―――と言うかクルタ族―――の”絶対時間(エンペラータイム)”が存在するが、あれを基準にしたら挫折すると自信を持って言えるだろう。

 では、なんで能力が使用できてるんだ?という疑問だが……理由はいくつかある。
 一つ目は、俺は放出系寄りの操作系であるため、有効距離が短いものの―――現在の実力では(ハクタク一匹限定で)1kmが限界―――一応は使えるという事。
 ただ放出系寄りであるがために、唯でさえ低い習得率の具現化系が更に低くなっているので、いくら念獣を作り出そうとしても陳腐な物が限界であり、とてもではないが実戦使用は出来ない。
 この問題を解決したのが二つ目となる理由であり、俺の右手にある指輪……原作を考えれば”絶対時間(エンペラータイム)”に匹敵するチートな代物である。

 外見上は、グリードアイランドで使用する指輪を思い浮かべてもらえればいい。
 そして、指輪の効果についてだが……実のところ、全て判明していない。
 というのも、こいつは出所不明のアクセサリーで、よく見ると外側に神字が彫られているのだが、製造年数が古いことに加えて乱雑に扱われていたのか大半を解読できず、二つの効果があるということが判っているだけである。
 そして、二つの効果うちの一つを使うことで、初めて俺の能力が使用可能になる。

 一応だが名前をつけてあって「主を助ける道具(サポーター)」……名前のセンスは何も言うなよ。
 指輪を媒介とすることによって、具現化系でない者でも具現化系の念能力を使用できるという、素晴しいチート効果である。
 ただ、一度でも使った指輪はそれ以降は、最初に具現化したモノしか具現化できなくなってしまう制限がある。
 さらに容量があるらしく、それを超えたものを具現化しようとすると壊れて、効果が無くなったただのボロい指輪になる……というかなった。
 そして、もう一つの能力と言うか呪い的な効果は、一度でも指に合わせてしまうと、壊れるか、人体から離れる(指を切断される等)といったことが無い限り外せなくなる事。
 それを知らずにはめた俺の人差し指、中指、薬指の三本に指輪がはまっているので確認済み。

 ちなみに、俺の指にたどり着くまでの経緯を簡単に説明すると……。

 団員がある骨董コレクターの家に盗みにいった。
   ↓
 面白い指輪を発見、有難く頂戴。
   ↓
 シャルが調べ、指輪の能力がおおよそ判明。
   ↓
 俺が能力開発に悩んでいると耳に入る。
   ↓
 開発の役に立ててごらんと、渡される。
   ↓
 まだ解析できないから身に付けるなと言われたものの、興味本位で……
   ↓
 取れなくなり、大慌て……

以上。

 物凄く反省してます!だから、その拳をしまってください!あっ、ちょっ、まっ……ぴゃっ!?



――――――――――

――――――――

――――――

――――

――



 修行に明け暮れ気づいてみれば、この世界に来てから2年の月日が経った1997年―――
 原作開始年まで後3年までの年、現在の旅団全員がとある仮アジトに集結していた。

 今回も、俺は団員ではないもののノブナガの後についていって参加させてもらっている。
 前のように、参加せずに鍛錬をしててもいいのだけれど……


「み、見てる…」
「目ぇ合わせるな」


 某変態野郎が俺を視姦中につき中止して、ノブナガの背中に避難中。
 うぐっ、なんか視線が回り込んできてるのか悪寒がする……ええい、これ以上見るな!!妊娠するだろうが!!
 悪寒に耐えつつ視線を合わせないために他の団員へと視線を彷徨わせていると、ふと漫画やこれまでを合わせても初めて見る人間が二人いることに気づく。
 一人は、よく言えば体格のいい、悪く言えば太っている男。
 もう一人は、神父のような格好をした眼鏡の男。

 はて? 誰だ?


「あれは、4のガブと8のテイロだ」
「……ガブ?テイロ?」


 俺の心を読んだのか、ノブナガが二人の名前を教えてくれるが、やっぱり知ら……ん?4番と8番?
 8番は確か、シルバに殺されるはず。
 4番は……あれ?なんでヒソカがここにいるんだ?


「そういえば言ってなかったな」
「??」
「お前の例があったからかは知らねぇが、ガブが推薦してるんだよ。以前から顔を何度か出してたが、今回の仕事を見て入団させるかどうか決めるらしいぞ」
「……そうなんだ」


 これは、歴史が変化したと見るべきなのだろうか?
 でも、ヒソカが偽装入団した経緯について原作では、団員を殺して代わりとして入ったとした語られてないから、変化したと断言が出来ない。
 悪寒が治まった事も相まって、思わずヒソカを盗み見てみるも即効で気づかれて目を合わせてきた。
 そして、ニタリとした笑顔を俺に向けてくるため、サッとノブナガの背中へと退散。

 あっあの変態、マジで俺のこと狙ってるっぽい。
 団長目当てで旅団に入ろうとしてるくせに、他のやつに目移りしてるんじゃねぇよ!


「目ぇ合わせるなって言っただろうが…」
「ぅっ……ごめん」


 ヒソカの視線に犯された上に、ノブナガに怒られ意気消沈。
 でも、それはクロロが登場しヒソカの舐めるような視線が無くなったことでいくらか軽減された。


「皆、集まってるようだな……さっそくだが―――」


 グルリと周囲に見渡して、全員が揃っていることを確認したクロロは、今回の仕事の説明をさっそく始める。

 今回の仕事は、ある国の典型的な独裁者が、国民から搾取し続けて貯めに貯めた財産を頂くというもの。
 小国とはいえ一国のトップに対して強盗しようとしている事に驚くが、その独裁者は警戒心が異常に強いらしく国家予算を使用して、金庫を守るための軍隊を作って警備に当たらせている事にも驚かされる。
 これはナチスドイツの武装親衛隊みたいなやつですね?判ります。
 独裁者の私兵のようなもの故に、潤沢な資金と権力を利用した、特殊訓練を積んだ兵士や契約ハンターなど正規軍以上の戦力を保有しているらしい。
 
 
「――あと、お前等に紹介しておきたい奴が二人いる」


 一通り仕事の説明を終えた後そう言うと、クロロは俺とヒソカを一瞥する。


「え、っと……?」
「行って来い」


 どうすればいいのか困っているとノブナガに背を押されて、そのままの勢いでクロロの元へ移動する。
 その間、皆の視線が俺とヒソカ……特に俺へ集まり、緊張でキリキリしだす胃に少し顔を歪めつつも、なんとなくの流れでクロロの右手側に立つと、俺に合わせたのか左手側にヒソカが立った。
 そして、何の前触れもなく俺の頭にクロロの手が置かれ、思わずビクリと身体が震えた。


「こいつの事は知ってる奴が殆どだろうが、ノブナガが入団の推薦をしているユイだ」
「……っ」


 クロロが俺を紹介した瞬間、視線の重圧が俺を襲った。
 この世界に来たばかり―――昔の俺だったら、耐え切れずに気絶しているか逃げ出していただろうけど、伊達にノブナガの弟子をやってるわけではない。
 平然と……は無理でも、せめて普通に立っていられるように気持ちを奮い立たせて、視線の重圧に対抗する。


「……と、こんな風に度胸はそれなりだが、まだ発展途上でノブナガが育ててる最中だ」
「…………ぅぅ」


 予想してたけど、強がっているのバレてますやん。
 俺って、そういうの隠すの下手なのかな……


「そして、この男はガブが推薦しているヒソカだ……まあ、見たとおりの男だな」
「ヨロシク」


 多分、俺と同じような重圧にさらされているはずなのに、そよ風に吹かれているかのように平然と受け止めているヒソカ。
 これが、俺と旅団員(レベル)との差……
 一瞬、沈みそうになった気持ちはすぐに初仕事の後にノブナガが言った言葉を思い出して持ち直す。

 気落ちするな。
 これから……そう、これから強くなればいいんだ。
 ノブナガの為にも、自分の為にも・・・… 
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