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提督はBarにいる。

作者:ごません
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ハロウィン間近!カボチャレシピ特集・その3

「うぅ、下着を見られるなんて……」

「……もうお嫁に行けない」

 ひとしきり悲鳴を上げた2人は、まるで子供のようにグズっている。

「今更パンツやブラジャー見られた位で動揺すんなっての。ここは女所帯だし、俺ともそんなに浅い付き合いでもねぇだろうに」

 そもそも、艦娘のパンツやブラジャーなんてのは提督になると見慣れてしまう物だ。艦娘が着ている制服は、ただの衣服ではなく装甲の役割を果たしている。妖精さんの謎技術が詰め込まれている制服は、一定量のダメージを吸収してくれるがその許容量を超えるとその分子結合が崩壊ーー要するにボロボロになってしまう。それが所謂『中破』と呼ばれる状態であり、更にダメージが進むと機関部等の艤装の出力低下を招く。これが『大破』。そして大破状態から致命的な一撃を貰うと、機関部が停止、海上での浮力を保てなくなり、艤装はただの鉄屑兼錘(おもり)と化す。そんな状態で人が浮いていられる筈もなく、艦娘は水底へと沈んでいく。これが『轟沈』だ。ウチは轟沈こそ出さないように立ち回っているものの、大鎮守府であるからこその戦果も求められる。その為ぬるい戦闘というのは数少なく、逆に中破・大破だらけで帰投なんてのも珍しくない。そうなれば艦娘達は半裸に近い状態であり、パンツやブラジャーが見えてしまうなんてのは日常茶飯事だ。そして俺をからかって来る奴など、逆に見せつけて来ようとするんだから始末が悪い。見馴れない方が無理という話だ。ウブな童貞の小僧でもあるまいし。

「あ~……なんだ。その、俺に見られたのが気になって嫁に行けないってんなら、イザって時には俺が貰ってやるから安心しろ」

「ホントに?」

「あぁ。今更1人増えようが2人増えようが、大差はねぇよ」

 ケッコン人数に関しては間宮と伊良湖という、通常ならケッコン出来ないを2人を娶った時点で最早諦めた。これからは『来る者拒まず去る者追わず』のスタンスで行こうと思う。養えない程困窮してる訳でもねぇしな。

「やったぁ!」

「言質は取ったからね、提督!」

 さっきまでグズっていたのはどこへやら、2人はニンマリと笑いながらイェーイ!と乾杯までしてやがる。どうやら俺はしてやられたらしい。

「明日から演習頑張らなきゃ、ね。鬼怒ちゃん?」

「そうだね、一日も早く指輪貰わなきゃ!んじゃ提督、ごちそうさま!」

 鬼怒と由良は皿に残っていた料理と酒を急いで平らげ、そそくさと帰っていった。明日から人一倍訓練に励む事になるのだろう。

「うまくやられましたね?店長」

 クスクスと笑いながら早霜に慰められてしまった。

「あ~……まぁ、訓練にやる気を出してくれるならいいさ」

 その辺は流されるままにしてりゃあ上手く行くだろ……多分。





「しかし……どうすっかなこの大量のカボチャ」

「観賞用カボチャも混ざってれば良かったんですが」

 カボチャの山を見回していた早霜が、オレンジ色の大きいカボチャをコンコンと叩いて音を確かめている。観賞用カボチャってのは甘味がなく食用に向かないカボチャで、大きく育ててお化けカボチャを作り出したり、ハロウィンには欠かせない飾りのジャック・オ・ランタンを作るのに使われるカボチャだ。山雲農園は鎮守府の食料事情改善という山雲の趣味と実益を兼ねた物であるからして、観賞用カボチャは育てないだろうが。

「そんな事より提督、カボチャ料理のお代わりをお願いします。出来たら次は洋食がいいです」

「まだ食うのか?赤城。お前にしては珍しいなぁ」

「いいじゃないですか、たまには」

 ぷ~っと頬を膨らませて、赤城が拗ねる。まぁ他の鎮守府の赤城よりも食費が掛からなくて助かってるのは事実ではあるし、たまにはいいか。



《簡単ホワイトソースで、ウィンナーとカボチャのクリームグラタン!》※分量2人前

・ウィンナー:6本

・カボチャ:1/8個

・玉ねぎ:1/2個

・バター:20g

・薄力粉:大さじ2

・牛乳:300cc

・ピザ用チーズ:適量

・塩、胡椒:各少々

・粉チーズ:大さじ2




 さて、作るか。まずは野菜の下拵えから。カボチャは種とワタを取り除いて1cm角に切り、玉ねぎは薄切りに。カボチャは切り終わったら耐熱皿に乗せてふんわりとラップをして、600wのレンジで2~3分加熱する。

 ホワイトソースを作っていくぞ。フライパンにバターを入れて火にかけ、バターが溶けたら薄切りにしておいた玉ねぎを加えて炒める。

 玉ねぎがしんなりしてきたら薄力粉を振り入れて、更に炒める。粉っぽさが無くなってきたら牛乳を注ぐ。

 煮立ってきたらピザ用チーズを加えて溶かし、塩、胡椒で味を整えればホワイトソースは完成。チーズの量はお好みだが、あんまり入れすぎるとくどくなるからその辺は上手く調整してくれ。

 グラタン皿にウィンナーとカボチャを並べたら、先程作ったホワイトソースを上から満遍なくかける。全体に粉チーズを振り掛けたら、オーブントースターでいい焼き色が付くまで焼いたら完成。大体7~8分てトコかな?



「そういえば、なんでハロウィンにはカボチャをくりぬいてお化けの顔みたいなのを作るんです?私、その辺の事に疎くて……」

 グラタンをトースターに放り込んだのを見計らって、赤城が話しかけてきた。

「あぁ、ジャック・オ・ランタンの事か。それにはハロウィンの成り立ちから順を追って説明しないと解りにくいな」

 ハロウィンってのは、元々古代ケルト人を起源とする祭りでな。日本でいうとお盆と正月を足したような物なんだ。ケルト人の一年の終わりが10月31日で、この日は夏の終わりと冬の訪れの境目の日とされていた。そしてこの日は祖先の霊が家族を訪ねてくる日でもあるとされ、時期を同じくして出てくる魔女や悪霊、質の悪い精霊から身を守る為に人々は仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いていたそうだ。

「成る程……焚き火をする、なんて辺りは日本の迎え火みたいですね。でもなんでそれがカボチャに繋がるんです?」

「焦るなって、赤城。ちゃんと順序だてて説明してんだからよ」

 ジャック・オ・ランタンは元々ハロウィンとは無関係の民間伝承のような物だったらしい。日本でいう火の玉とか鬼火のような物で、その正体は堕落した人生を過ごしたせいで天国から締め出されて現世をさ迷う遊び人の霊だとか、悪魔を騙して地獄行きを回避したものの、天国へも行けない狡猾な人間の魂の成れの果てだとか、色んな説があるらしい。その特徴はカブをくりぬいて顔を象ったランタンを持っている事……そう、最初はカボチャじゃなくて萎びたカブだったらしい。それがアメリカに伝わって、アメリカではカブよりも安価で手に入れ易かったカボチャに成り変わったらしいな。そしていつしかジャック・オ・ランタンはハロウィンの飾り物となり、善い霊を呼び寄せ悪霊を寄せ付けない魔除けの焚き火の代わりとなった訳さ。

「成る程、それで……」

 話を聞き終えた赤城が、妙な事を口走る。

「ん?何が『それで』なんだ赤城?」

「あっ、いえ……何でもありません。それより提督、他のカボチャ好きの皆に持っていってあげたいので、何かデザートを持ち帰り用に作って頂けませんか?」

「あん?……まぁ、カボチャの消費になるから構わねぇが」

 なんか調子狂うな、今日の赤城。 
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