| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~光の戦士の軌跡~

作者:トロイヌ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五話

 
前書き
七番勝負に手こずったがなんとか11月になる前に投稿できた……。
これで心置きなくチェイテ城、千年パ○ル、姫路城をよじ登れる! 

 
オリエンテーリングが終わり”Ⅶ組”に割り当てられた第三学生寮に全員で戻りそれぞれ自己紹介を終えた。カイムの自己紹介の時に一応貴族という事でマキアスが反応したが自身の現状の説明すると顔を若干青くして謝罪してきたので、余り気にしていないとマキアスにフォローしている内に夕食の時間となった。初日ゆえまだ当番など決めていない為どうしようかと全員で悩んでいる中、キッチンの様子を見に行って戻ってきたカイムが口を開いた。


「一応冷蔵庫の中に最低限の食材は入ってたし今日は俺が作ろうか?」

「む?カイムは料理ができるのか?」

「なんだか意外です……。」

「これでもそれなりの腕は持ってるよガイウス。しかし意外とは失礼だなエマさんや。」

「ふん、何がそれなりだ。お前の腕がそれなりなら世の料理人のハードルが一気に上がるだろうが。」

「一応皇族お抱えの料理人の家系だもんね……。」


カイムの謙遜にユーシスとエリオットがコメントを言い、それにガイウスとエマが驚いたがカイムはそこまで気にした様子も無くキッチンに入っていった。暫くすると食欲をそそるいい匂いが漂い始め何人かの腹がなり始める。該当者(誰かとは言わないが)が顔を赤くしたりしている内に料理を完成させたカイムがキッチンから出てきた。


「さっき言ったとおり最低限だからこんなもんだがまあ食ってやってくれ。」

「……最低限?こんなにいい匂いなのにか?」

「ただのトラードのグリルがなんでこんなに美味しそうなんだ……?」


リィンとマキアスの驚きも無理はない。料理自体はただのグリルだが焼き加減や調味料のさじ加減が絶妙であり材料のよさを完全に引き出しているのだ。その為材料は凡庸にも関わらずそれ以上の旨味を出している。


「そう言ってくれるのは嬉しいがさっさと食べよう。腹も減ってるし冷めると味が若干だが悪くなるからな。」


そう言うカイムに全員が賛同し食事に入った。その結果、料理は得意でない、あまりやらないと公言しているフィーとサラ以外の女子が崩れ落ちる事になる。その原因たるカイムは料理が口に合わなかったのかと不安になったがそうではないと言われいよいよ女子が崩れ落ちた理由が分からなくなった。なおこれにより料理当番は基本的にカイムが行う事になったのは全くの余談である。










食事の後、カイムはオリエンテーリングの時の約束通り主に剣を使い尚且つ初対面のリィンとラウラからの質問に答えていた。自身が《八葉一刀流》の使い手であり二の型《疾風》において皆伝を貰い《白銀の剣聖》の称号を頂いた事を中心に話した。実は皆伝間近な型もあったりするのだがとりあえずは皆伝した型のみを説明する事にしたのだ。


「俺が主に使うのは旧校舎で見せた奥義の通り先に習得した《疾風》だな、それを中心に他の型を組み合わせて戦ってる。……それはそれとしてラウラさんや、そのギラついた目はやめてもらえませんかね。」


カイムの言うとおり彼の話を聞いてからラウラは好戦的な目でカイムを見ていた。彼女の父曰く、剣の道を極める道中において必ず《八葉一刀流》の剣士と会うことになると言われていた様でその話の通り使い手が二人、しかも片方は《剣聖》の称号を持つ剣士だ。彼女としては是非とも一戦交えたいのだろう。


「カイムよ、今から一戦手合わせ願えないだろうか。《剣聖》の称号を持つ剣士の力、是非とも見てみたい。」

「今からは勘弁してくれ。……おいサラ。」

「ん~、何?」

「明日から通常授業が始まるんだろ?当然戦闘訓練もあるよな?」

「そりゃあね。……成る程そういう事、ラウラ。」

「なんでしょうか。」

「最初の戦闘訓練の日の模擬戦であんたの相手にカイムを当ててあげるわ。だからその日まで我慢なさい。少なくともこんな夜中に今からやられたら近所迷惑になるし街道は魔獣が凶暴になるから万が一、億が一があるしね。」

「……分かりました。ではカイムよ、その日を楽しみにしているぞ。」


そう言うとラウラは女子部屋のある三階に上っていった。直ぐに手合わせできないのは残念なようだが変わりに予定を確約できた事に満足したようだ。


「やれやれ、面倒なことだ。」

「なんというか、剣に真っ直ぐって感じよね。」

「ああいうの苦手。」


カイムの言葉にアリサは苦笑混じりに、フィーは少々ウンザリ気味に返した。そしてその日はそこでお開きとなり全員が就寝した。そして数日後の授業の日にあった戦闘訓練の時間に模擬戦の時が来た。


「さあ、始めようカイム!」

「おおう、超やる気じゃねえか。」


グラウンドには待ち望んでいた模擬戦が行える事に気合の入ったラウラと、その様子に若干引いているカイムが相対していた。審判として二人の間にサラが立ち、少し離れた場所で他の”Ⅶ組”メンバーが見ている形だ。特に自分と同じ流派でありながら自分の先を行く剣士の力を見れる機会のリィンと剣の種類こそ違うものの剣士であるユーシスは他以上に真剣に見ていた。


「勝敗は相手に降参の類の発言をさせるかどんなにいっても気絶させた方の勝ち。ただし初日で怪我されても困るからあんまり大技は使わない事、いいわねカイム?」

「俺限定かよ……。」

「当たり前でしょうが。」


サラの言葉に少し不満そうながらもラウラが頷きそれに続きぼやいていたカイムも頷く。それを見てサラは少し後ろに下がり、


「それじゃ──始め!」


試合開始を宣言した。










最初に動いたのはラウラ。カイムに向かって駆けながら大剣を振りかざし射程まで近づくやいなや唐竹に振るう。それをカイムは半身体勢から数歩下がる事で避ける。そこからラウラは切り上げを行いその勢いを利用し体を回転させ左薙ぎを行うもこれもバックステップ二歩で躱してみせる。まるで木の葉相手に剣を振るうような感覚にラウラはじれったさを感じていた。


「なぜ先程から避けてばかりなのだ。真面目にやるつもりはないのか?」

「いや、実力がどれくらいか見る為に少し様子見をね。」

「……それで?」

「見事だよ、その年でこれなら上出来だろう。少なくともこの学園内で生徒の中なら確実にトップクラスだろうさ。」

「まるで年上のような言い方だな。それに実力云々は《剣聖》たるそなたに言われても褒められている気がしないぞ。」

「すまんな、嫌味のつもりはないんだ。それに俺に関しては……まともじゃないのは重々承知しているよ。後悔とかしてる訳じゃないんだがね。」


そういうカイムの表情は曇っていた。後悔はないと言っているのにまるでここにいるのが間違っているかのような、何故自分はここにいるのかと問いかけるような表情だった。その表情にラウラは疑問を持ったが直ぐに余裕の笑みを浮かべ直し話し始めた為、聞く事ができなかった。


「まあしかしこのまま行くのは確かに失礼だな、それにその実力ならなんとかなるだろう。」

「?それはどういう……っ!」


ラウラがカイムの言葉に疑問を投げかけようとした途端、彼女をプレッシャーが襲った。それで悟る、カイムが本腰を入れたと。


「しっかり構えろよ?じゃないと余計な怪我を負う事になるぞ?」

「……覚悟の上だ、来いっ!」


カイムの警告に勇ましく返すラウラ。その言葉を聞きカイムは口元に笑みを浮かべ刀の柄に手を添えた。その動作をみてラウラはいつ攻撃が来てもいいように剣を握り締め、カイムを見定めた次の瞬間……凄まじい衝撃と共に後方に吹き飛んでいた。


「なっ、があっ!?」


吹き飛ぶ直前に見えたのは一瞬で目の前にきたカイムの姿、その後は宙を舞った後地面に落ちていた。蹲った状態から顔を上げると少し前には自分の剣が地に刺さり、そこから更に先には刀を納刀するカイムの姿があった。それで悟った、自分はカイムの攻撃を受け切れなかったと、僅か一撃で勝敗は決したと。流石に一撃で負けた事は認めたくは無かったがもはや体は言う事を聞かず、意識も朦朧としていた。


「ここまで、とはな。」


一矢報いるくらいはできると思っていた。いくら実力は上でも同年代、付け入る隙はある筈だと。だが実際はこれである。胸中に悔しさが溢れるが同時にここまで見事にやられた事に対する清々しさもあった。そして今度は必ずや剣を届かせると。そう胸に誓ったのを最後にラウラは意識を手放した。










「あれは完全に気絶してるわね……勝者、カイム!」


勝敗が決したその場は静まり返っていた。無理もないだろう、カイムが攻勢に入った次の瞬間には決着がついていたのだから。


「……リィン、見えたか?」

「いや、踏み込んだのが見えたと思っていたらもう戻ってきていたというか、そんな感じだったよ。」

「俺も似たようなものだ……ここまで差があったとはな。」

「だな……。」


リィンとユーシスは剣士としての力量差に苦い顔をしていた。しかしそれも束の間、ユーシスはいつもの調子に戻っていた。


「ふん、まあいい。目指すべき目標があるのはいい事だ。まずは必ず追いついてやる。そしていずれは追い越して見せよう。」

「……そうだな。」


対してリィンの顔は晴れない。あれはかつて自分が諦めた境地、修行を打ち切られた自分では追いつくなど無理な話だ。そう感じると思っていた筈なのに彼の胸を占めるのは悔しさだった。何故諦めるのだと、あそこに至りたくはないのかと。頭で無理だ、仕方ないと言い聞かせても心は叫んでいた、諦めるなと。


「追いつきたいな……。」


知らず知らずの内にそう呟いていた。
そんなリィンとユーシスの後ろでは他の”Ⅶ組”メンバーが話しをしていた。


「な、何をしたのか全く分からなかった……。なんて無茶苦茶な……。」

「うーん、あれでも割と手加減してるんだけどね。ね、アリサ。」

「私は戦ってる所はあんまり見た事ないんだけど……でも雰囲気的には確かに手加減してるかも。」

「そ、そうなんですか!?」

「付き合いのある二人が言うならそうなのだろう。俺も精進せねば。」


マキアスは目の前で繰り広げられた光景にただただ驚き、カイムと付き合いのあるフィーとアリサは彼が手加減している事を見抜く。その事にエマは驚愕し、ガイウスは自分も負けないようにと更に強くなる事を決意する。そんな”Ⅶ組”メンバーを尻目にサラはカイムに説教をしていた。


「アンタねぇ、そりゃ気絶まではいいって言った私にも責任はあるけど本当にさせる奴がいる?それも女の子相手に。」

「いや、うん。そこに関しては本当に反省してる。でも何というか、これくらいに負かしてもむしろバネにして伸びるタイプだと思ってな?なんか嬉しくなってつい、な……。」

「全く面倒見がいいと言うか律儀と言うか……まあいいわ、あれじゃ気が付いても少しの間動けないでしょ、保健室まで運びなさい。」

「いや、そこは女子に任せるべきじゃね?」

「他はこれから模擬戦、私は審判。アンタしか空いてるのはいないのよ。そら、役得だと思っていきなさい。」

「何だよ役得って……ったく。ただ大剣はあとで届けるなり寮に持ってくなりしてくれよ?いくらなんでもバランスが悪くなる。」

「分かった分かった。ほら、いきなさい。」


適当な返しをする更にブツブツ文句を言いながらもカイムはラウラを背負い、保健室に向かう。途中でアリサとフィーに止められるも先程のサラの言い分を説明され見送るしかなかった。残る女子のエマは二人が先に意見した事とカイムの言い分に納得した事により何も言う事無く苦笑いしながら見送るのだった。










「う、うん……?」


保健室に向かう道中で目を覚ましたラウラの視界に最初に入ったのは白い天井だった。そして左右を見るとベッドと壁があり、薬の匂いが鼻をついた。それらの情報からラウラは自分が保健室のベッドに寝ているということを認識した。そのまま起き上がると見覚えのある白い髪を持った少年が入ってきた。


「おお、目が覚めたか。ちとやり過ぎた、すまん。」

「先程目が覚めたばかりだ。そして気にしなくていい、完璧に打ち負かされてむしろ清々しいくらいだ。無論、悔しさもあるが。」

「そうか。」


そう言いながらカイムは傍にあった椅子に座る。少しの間沈黙が続いた後、ラウラが話を切り出した。


「一つ聞きたい事がある。」

「ん?何だ?」

「そなたは自分をまともじゃないと言い、それに後悔していないとも言った。なのにあの時のそなたの顔は明らかに曇っていた。それは何故だ?」


そう問われるとカイムは一瞬呆けた後、困ったような笑みを浮かべた。


「何というか、直球で聞いてくるな。」

「すまぬ、どうも誤魔化しながらというのは性分では無くてな。」

「だろうな……まあ、いずれ機会が来たら話すよ。」

「今すぐは……無理だな。うん、自分でも知り合って直ぐの人間にあれこれ話すのは無理だ。それはしょうがない。」

「分かってくれて何より。さて、立てるか?もう放課後だし寮に戻ったほうがいい。」


カイムの言葉にラウラは窓の方を見ると既に夕暮れ時だった。あともう少し経てば日は完全に沈み夜になるだろう。


「こんな時間になるまで眠っていたのか。」

「……本当に申し訳ない。」

「気にしなくてもいいと言ったであろう。ところで先程戻ったほうがいいと言ったがそなたは戻らないのか?」

「晩飯の材料買いに行くんだよ、時間が遅くなるとグチグチ言いそうなのがいるしな。」

「……ならば私にも手伝わせてくれ。」


肩をすくめながら言うカイムにラウラは少しの間考えた後、ラウラは手伝いを申し出た。その言葉にカイムは首を振りながら断った。


「まだ目覚めたばっかだろ?明日もあるしあんま無理はしない方がいい。」

「体に痛みはもう引いている、荷物運びくらいは問題ない。それに……」

「それに?」

「そなたが模擬戦の時に使った技の事も詳しく聞きたい。欲を言えば旧校舎で見せた技やほかにも習得しているであろう物もな。」

「……実はそっちが本命だろ?」

「ふふふ、バレたか。」

「ったく、お手柔らかに頼むぜ?」


ラウラの言葉にカイムは苦笑いしながら了承した。
その後、カイムとラウラは学園外にある街で八葉の技などの話をしながら食材の買出しを行い、寮へと帰宅した。余談だがその際アリサとフィーにジト目で見られ棘のある態度を取られカイムが困惑する事になるのだがそれはまた別の話。また更に余談だがカイムとラウラの買い物風景にそこでバイトを行っている彼等の同級生のベッキーは、


『なかなかいい雰囲気だった、会話の内容は色気もクソも無かったけどな。』


というコメントを残したそうだ。そしてそのせいか彼女もからかう気にならなかったようだ。


 
 

 
後書き
最後はちょっと蛇足過ぎましたかね?
戦闘描写は下手くそなのでかなり短めにしましたがご容赦を。
書いてる内に上手くなればいいんですがねぇ。
あ、あとカイムがラウラに放った技はカシウスやヨシュアが使っていた雷光撃です。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧