| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドリトル先生と春の花達

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二幕その七

「どのお花よりもだからね」
「それでも咲いているのは少しの間だけよね、桜って」
 ポリネシアはこのことを指摘しました。
「春の本当に一時期」
「少しだけ咲いて散っていく」
 ダブダブはしみじみとした口調で言いました。
「あんなに咲いている時期が短いお花ってそうないわよ」
「どうして長く咲いていないのかな」
「せめて一月は咲いて欲しい?」
 オシツオサレツはその短い咲いている時期に思うのでした。
「もっとね」
「あれじゃあ短過ぎるよ」
「僕もそう思うよ」
 ジップはオシツオサレツに完全に同意でした。
「もっと長く咲いていればいいのに」
「今だったら一年中咲いている桜を創られない?」
「今の技術ならね」 
 チープサイドの家族はこう言いました。
「それも可能なんじゃ」
「今だったら」
「植物園の設備でも出来るんじゃ」 
 こう言ったのはダブダブでした。
「温室の気温を調節したりして」
「何で日本人そうしないのかな」
 チーチーは人間みたいに腕を組んで考えるお顔になっています。
「あれだけ桜が好きなのにね」
「いつも見たいと思うけれどね」
 老馬もこう考えます、日本人の桜への愛情を見て。
「それでもなのかな」
「何で春の一時期だけ見るのかな」
 最後にトートーが首を傾げさせて言いました。
「一年中見ようとしないのかな」
「それ不思議よね」
「どうにもね」
「どういうことかな」
「日本人は桜を一年中見たくないの?」
「春の一時期だけでいいのかな」
「それもまた日本人なんだ」
 まさにとです、先生は不思議がる皆にお話しました。
「四季のそれぞれを楽しむからね」
「春だけじゃなくて夏も秋も冬も」
「それでなんだ」
「そう、秋の紅葉も冬の雪もそうで」
 そしてというのです。
「夏の海もね」
「全部だね」
「全部楽しむんだね」
「四季のそれぞれを」
「そうしているからなんだ」
「うん、そうしてね」
 そしてというのです。
「桜もね」
「春の一時期だけなんだ」
「これからはじまろうとしているけれど」
「今の一時期だけ楽しんで」
「それで充分だっていうんだね」
「そしてね」
 それにというのです。
「春は桜だけじゃないね」
「あっ、梅も桃もあるしね」
「菊も蒲公英も」
「そうしたお花もあるから」
「そうしたものも楽しむんだね」
「そうしたお花もあって桜の後はね」
 その次のお花はといいますと。
「次は皐があるね」
「ああ、皐」
「そういえばあのお花もあったわ」
「日本にはね」
「あのお花もあったんだ」
「そう、桜が散ったのを寂しく思ってもね」 
 その気持ちは確かにあってもというのです。
「すぐに皐が咲いて、そして梅雨になれば」
「ああ、まただね」
「梅雨は梅雨でいいお花があるしね」
「だからそちらも楽しむんだね」
「春の終わりから梅雨のお花は」
 日本のそれはといいますと。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧