真似と開閉と世界旅行
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追求〜
前書き
遅れに遅れて申し訳ありません!!事情はありますが、それは置いといて・・・冬休みに入ったので、これからは早く更新出来ると思います。もう一度申し訳ありませんでした!それと早いですがメリークリスマス!ではどうぞ。
「DDAが?」
翌日、57層にあるカフェテラスにて、先日あの後にキリトが槍を巻き上げられたことを知らされた。
『DDA。ディヴァイン・ドラゴンズ・アライアンス・・・聖竜連合のことね』
「(正解。・・・あーやだ。俺ってあのギルドに嫌われてんだよねぇ)」
『クリスマスの時ッスね』
そう。クリスマスの一件の際、デュエルで片っ端から聖竜連合をボコしたのを知られ、あちらさんのブラックリストに載せられているのだ。ちなみに凶器をキリトから巻き上げたのはシュミットと呼ばれるプレイヤーだそうだ。
「あー、いたわねそんな人。でっかいランス使いでしょ」
「そそ。高校の馬上槍部主将って感じの」
「そんな部活日本にないだろ」
キリトのくだらない洒落を一蹴する。
「・・・実はそいつが犯人、てセンはないわよね」
「断定はできないけど、まずないよ。わざわざ凶器を回収する必要が分からない。犯人なら最初から凶器を残さないだろうし・・・」
「俺はあの槍は、犯人のメッセージなんじゃないかと思う」
『・・・確かに』
キリトの言葉に対して詠が呟く。ちなみに指輪と同化?している詠の声は俺や亮といったメンバーにしか聞こえない謎仕様だ。亞莎も同様だが・・・何故だろう。
「しっかし、これは過去に何かあったと考える方がいいんじゃないか?」
「そうね。カインズ氏、グリムロック氏、シュミットの間には何かがあった」
「つまり、殺人動機は快楽とかではなく、復讐、もしくは制裁ってことだよな。犯人はギルティソーンという名前を持った槍を用いての公開処刑を決行した。・・・カインズ氏が過去に何か罪を犯して、それに対する罰として殺したとアピールしているのか」
「じゃ、シュミットはどちらかと言えば狙われる側ってことか。カインズさんと何かしらの関係があり、“何か”をした。・・・カインズさんが殺されたことでシュミットは焦りだした・・・」
「その何かが判れば、自動的に復讐者も判る気がするな。・・・ただこれが全部、犯人の演出に過ぎない可能性もある。先入観は持たないようにしないとな」
「そうね。特に、ヨルコさんに話を聞くときはね」
『まあ、今の情報からなら・・・』
『そッスね。となると・・・』
頭の中に響く推理の嵐に頭痛を覚えながらも俺はふとアスナを見た。
「(・・・むー)」
朝に会ってから気になってたのだが、アスナの服装が何時もの紅白服ではなかった。ピンクとグレーの細いストライプ柄のシャツに黒レザーのベストを重ね、ミニスカートもレースのフリルがついた黒。足にはグレーのタイツに靴はピンクのエナメル、頭に同色のベレー・・・うん。かなり本気でお洒落に力を入れてる。つかこれ、かなり値が張ると思うのだが・・・気付けばキリトもアスナをぼんやりしながら見ていた。
「・・・何見てるの」
「えっ・・・あ、いや・・・」
そこでキリトは素直に感想を告げればいいのに・・・
「えーと・・・そのどろっとした奴、旨い?」
アスナは自身が食べていた謎のポタージュを見て、もう一度キリトを見て、微妙な表情を向けたのち、溜め息を吐いた。・・・それと同時に、この服装はキリトの為に着てきたのだと言う知りたくない事実まで知ってしまった。俺は無言でキリトの足を踏みつけた。
「な、何すんだよ」
「・・・うっせーよバーカ」
アスナは咳払いをして、表情を戻す。
「わたし、昨夜ちょっと考えたんだけどね。あの黒い槍が発生させた貫通継続ダメージだけど・・・」
「うん?」
「例えば、圏外で貫通属性武器を刺されるじゃない?そのまま圏内に移動したら、継続ダメージってどうなるのか知ってる」
俺とキリトは首を傾げる。
「試したことはないけど。毒や火傷とかの継続ダメージは圏内に入れば消えるし・・・貫通ダメージも同じじゃない?」
「でも、そしたら刺さってる武器はどうなるの?自動で抜けるの?」
「・・・うわ」
「それもなんだか気持ち悪いな。・・・よし、まだちょっと時間あるし、実験しようぜ」
その言葉にアスナは目を丸くする。
「じ、実験!?」
「百聞一見」
「論より証拠って訳か」
・・・という訳で俺達はフィールドに向かう。門を出た途端、目の前に“OUTER FIELD”の文字が表示された。・・・つまり、ここからはダメージが通るという事だ。・・・俺は降りだしていた雨を鬱陶しく思いながらキリトに聞く。
「実験って何をするんだ?」
「こうするんだよ」
キリトはそういってベルトからスローイングピックを取り出す。・・・そうそう、SAOに置ける武器には属性のようなモノがあって、斬撃、刺突、打撃、貫通に分かれている。ちなみに俺の方天画戟は万能で、当て所によってその判定が変化する。・・・ちなみに亮の迷切は主に刺突、もしくは斬撃。擬音は斬撃。葬解には打撃の判定がある。
「・・・」
キリトは装備の耐久値を減らしたくないのか、身に付けていたグローブを外し、手の甲に狙いを定め・・・
「ちょ・・・ちょっと待って」
・・・アスナがそれを止めた。見ると高価な治療クリスタルを取り出していた。
「大袈裟だなぁ。こんなピックが手に刺さったぐらいじゃ、総HPの一、二パーセントくらいしか減らないよ」
「バカ!圏外じゃ何が起きるか分からないのよ!さっさとパーティー組んでHPバー見せて!!」
「別に普通に視認できるHPでも・・・」
「パーティー組んだ方が色々分かりやすいでしょ。ほら、サキも」
「・・・へーい」
俺とアスナはキリトにパーティー要請を飛ばし、左上のHPバーにアスナとキリトのHPバーが追加される。それを眺めていたら・・・
「・・・なに?」
不意にアスナが声を出した。どうやらキリトがアスナをまた見ていたらしい。
「いや・・・なんつうか、こんなに心配してくれるとは思わなくて・・・」
言った直後、アスナは顔を赤く染めながら雷を落とした。
「ち・・・違うわよ!いえ、違わないけど・・・もう、さっさとしてよ!!」
「じゃ、じゃあ、いきます」
キリトはそう言って、大きく息を吸ってから・・・ピックを手に向かって放った。
「・・・っ」
キリトが僅かに顔をしかめる。俺はすぐに左上を見上げる。
「(ざっと三パーセント位か・・・問題は)」
数秒後、キリトの手から赤いエフェクト光が血のように吹き出す。それと同時にHPが少し削れる。・・・これがカインズさんの命を奪った貫通ダメージ・・・
「・・・早く圏内に入ってよ!」
アスナに言われ、再び門を通る。表示された文字を横目に、キリトのHPバーを見つめるが・・・
「止まった、な」
そしてキリトの手を見ると、変わらずに赤いエフェクト光を撒き散らすピックの姿があった。
「武器は刺さったまま、でも継続ダメージは停止、か」
『じゃあどうしてカインズは死んだのよ。まさか転移結晶使ったとか?一撃でHPを・・・いえ、無理ね。話の通りにアーマーを着込んでいたなら、そんなにダメージは通らない』
『亞莎さんから聞いた特定下に置けるコード解除ッスかねぇ』
「(うーん・・・そもそも、あれってカインズさんだったのか?)」
『はあ?ちょっと、昨日確かめたんじゃないの?』
「(・・・まあな。スペル違いがないかとKの欄は全て調べたし・・・でもなぁ、あんなに鎧着込んでたら外見でカインズさんって言われてもなぁ)」
『じゃあ咲さんはヨルコさんが嘘をついてるって言うッスか?』
「(いや・・・ただ、何か隠してるんじゃないかとは思う・・・)」
『そうよね。第一、復讐が目的なら身の回りの人間も殺さない?この場合ヨルコさんも・・・って意味だけど』
『昨日言ったじゃないッスか。ヨルコさんには知り合いだからこそ、事件を広める役割を・・・』
『だから、それはーーーーー』
『でも、やっぱりーーーー』
「(お前ら・・・推理すんのは勝手だが、ボリューム下げろ。頭に声が響いて気持ち悪い・・・)」
ふと、その言葉で愛依を思い出した。
「(・・・大丈夫かな)」
『愛依さんなら平気ッスよ』
「(人の思考を勝手に読むなっつーの)」
『言っとくけど、普段から筒抜けよ?』
・・・マジか。
「・・・キ、サキ、聞いてる?」
「え?あ、ごめん。何?」
「ヨルコさんに話を聞きにいくわよ」
「あ、ああ。もうそんな時間?」
昨日からリパルと詠は推理合戦してるし・・・案外仲良いんだよな、この二人は。
「(亞莎から連絡は・・・特にないか)」
取りあえず昨日の内に決めておいた時間に宿屋に向かう。そして宿屋前にいるヨルコさんを発見して、近寄る。
「悪いな、友達が亡くなったばっかりなのに・・・」
「いえ・・・いいんです。私も、早く犯人を見つけて欲しいですし・・・」
そう言いながらアスナに視線を向け、目を丸くする。
「うわぁ、凄いですね。その服全部、アシュレイさんのお店のワンメイク品でしょう。全身揃ってるとこ、初めて見ましたー」
その言葉にキリトは首を傾げる。
「・・・それ、誰?」
「知らないん「知らないのかお前は!」っ!?」
ヨルコさんの言葉を遮るように俺は叫んでいた。
「アシュレイさんって言ったらアインクラッドでいち速く裁縫スキルを完全習得したカリスマだ!最高級のレア生地素材を持参しないと作ってもらえないが、当然その分見映えもいい!現にアスナ・・・は・・・」
気付いた。周りの空気が絶対零度と化していたことを。俺はゆっくりと下がる。
「・・・って、ア、アスナからよく聞かされて・・・」
「にしては饒舌だったような・・・」
「(のワの)」
「こっち見ろよ」
「うるせぇ!どうせリアルじゃしま○らの服しか着てないんだろ!だからこういうのに疎いんだ!」
「な・・・確かに服には拘らないが・・・」
「何やってるのよ・・・」
ふとキリトがアスナを頭から爪先まで見る。するとアスナは何を思ったのか・・・
「ち・・・違うからね!」
・・・何となく何が違うのかは分かったが・・・とにかく昨夜訪れたレストランに入り、奥に座る。ちなみに個室を使わない理由は、個室の防音設備が完璧でない為。亮から聞いた話では、聞き耳スキルを上げていれば防音を無視できるらしい。それよりもこうやって雑談に見せかけた方が情報が漏れにくい・・・らしい。
『咲、ちょっとは考えて発言しなさい』
『今のはちょっと危ないッスよ』
「(へーい・・・)」
ヨルコさんから得た情報は・・・多かった。まず第一に、聖竜連合のシュミット並びに鍛冶屋グリムロックはヨルコさんやカインズさんが昔、所属していたギルドのメンバーだということ。第二に・・・犯行動機の候補が出てきたこと。
「それ、詳しく聞かせてもらえないか?」
・・・ちなみに俺は先日のアレがあるので、一席離れた位置にいる。とにかく、聞いた話は・・・まず、所属していたギルドの名前は《黄金林檎》・・・宿屋代や食事代を稼ぐための・・・所謂“生きるため”のギルドだったらしい。そんなある日、サブダンジョンに潜って、見たこともないモンスターに遭遇した。一目でレアモンスターと判断したメンバーは全員で追いかけ・・・ラッキーで倒せたらしい。そしてドロップしたのは指輪アイテムで・・・なんと敏捷力が二十も上がるらしい。
『・・・でも、このギルドでそんなレアアイテムが出たら・・・』
そうだ。案の定、ギルドで使用する派と売って儲けを分配する派に割れたらしい。結果はギルドメンバー八人中五人が売却。・・・そして中層の商人では扱えないだろうとギルドリーダーが前線の街まで持っていき、売るということになったらしい。皆はわくわくしながら帰りを待った。・・・だがーーーーー
ーーーーーリーダーは帰ってこなかった。
生命の碑を確認し、そのリーダーの名には・・・斜線が引いてあり、死亡時刻はリーダーが上層にいった日の深夜一時過ぎ。死因は・・・貫通属性ダメージ。
「そんなレアアイテムを抱えて圏外に出る筈がないよな。てことは・・・睡眠PKか」
「(・・・ゲス、だな)」
『半年前ならまだ手口が広まる前ッスから・・・』
『きっと資金節約でドアロックできない公共スペースを使ったのかもしれないわね』
俺は溜め息を吐く。・・・更にヨルコさんから情報を得ていく。売却に反対したのはカインズさん、シュミット、並びに・・・ヨルコさん。カインズさんとシュミットは自分が使いたいからという理由。ヨルコさんは・・・当時カインズさんと付き合っていたかららしい。その関係はギルドの解散に伴い自然消滅したらしい。更に驚きなのは・・・
「それで・・・グリムロックですけど・・・」
「・・・彼は黄金林檎のサブリーダーでした。そして同時にギルドリーダーの“旦那さん”でもありました。もちろんSAOでの、ですけど」
「え・・・リーダーさんは女の人だったのか?」
・・・グリムロックさんは何時も笑顔を絶やさない人だったらしいが、妻が死んでからは荒み、消息を絶ったらしい。
「(・・・)」
『咲さん?』
「(いや・・・もし、もし本当に詠や恋と二度と会えなくなっていたら・・・どうなっていたんだろうかなって)」
『・・・そんなの想像しないでよ。もし咲に二度と会えないかもしれないなんてことがあったら・・・考えたくもないわ』
『・・・でも、そんな外史もあるッスよね・・・?』
「(ああ、外史は選択の数だけ増えていく。前に言われたけど、俺と亮は外史の“基点”らしい。俺と亮が存在する外史は全て俺達の外史が中心にある)」
『つまり?』
「(簡単に言うなら、延長コードにいくらコンセントを刺していても、延長コード自体のコンセントを抜いたら全部止まるだろ?)」
『分かりにくいようで分かりやすいわね』
『ようするに、もしここにいる咲さん達の外史が“消滅”したら、他の咲さん達の外史も消滅するってことッスか?』
「(そういうこった)」
「・・・サキ?どうしたの?」
「(っと・・・)いや、何でもないよ。話は終わった?」
「ええ」
俺達は外に出る。
「(しっかし、得た情報が全部グリムロックさんが犯人だと結びつけるものばかりだな・・・露骨過ぎて怪しいような・・・)」
その時、キリトがわざとらしく咳払いしながらアスナを見た。
「うほん、いや、えーーーと。その・・・よ、よく似合ってますよ、それ」
・・・俺は盛大に溜め息を吐き、アスナは若干顔を赤くしながら指をキリトの胸に突きつける。
「うー!そーゆーのはね、最初に見たときに言いなさい!!」
アスナは着替えてくると言って最寄りの無人家屋に入って・・・見慣れた騎士団服に身を包んでいた。取りあえず次にやることはカインズさん殺害の手口の検討をつけること。だが・・・
「でもな・・・もうちょっと、知識のある奴の協力が欲しいな・・・」
「そうは言っても、無闇と情報をばら撒いちゃヨルコさんに悪いわ。絶対に信頼できる、それでいて私達以上にSAOのシステムに詳しい人なんか、そうそう・・・」
「・・・・・・あ、いるじゃん。あいつ呼び出そうぜ」
「誰?」
キリトにアスナが尋ねると、凄まじい名前が飛び出した。
「ヒースクリフ」
「「えぇぇぇ!?」」
俺とアスナは同時に声を上げる。ヒースクリフとはKoBの団長・・・つまりアスナの上司に当たる。
「ま・・・まった!俺は行かないからな!」
「なんでだよ?お前だって何回かは・・・」
「攻略ならいいけど、プライベートであの人に会うのはな・・・」
「・・・そ、そうよ。それに呼べるわけ・・・」
「昼飯おごるとか言えば来るんじゃないか?ほら、試しに」
「・・・無理だと思うけど」
アスナがヒースクリフにメッセージを送り・・・返信メッセージを見たとき、フリーズした。
「・・・やっぱダメか?」
「いえ・・・来るって」
気のせいかアスナは冷や汗をびっしりかいている気がした。
「・・・お、俺は別で情報を集めるから・・・そ、それじゃ!」
「あ!待ちなさい、サキ!」
俺は逃げるようにその場から去り、路地裏に入る。
「・・・詠」
『・・・来ると思ったわ』
指輪が光り、詠が実体化する。
「・・・で、話を聞いてくればいいの?」
「ああ、頼む。・・・ごめんな」
「いいわよ。ボクは咲と月の為なら何でもするつもりだから。・・・でも、キリトには何回か顔を見られてるのよねぇ」
「だったらフード被れば」
「・・・それしかないわね」
詠はメニューを開き、少し操作して黒いローブを装備し、フードを深々と被る。
「じゃ、行ってくるわね」
「ああ、気をつけて」
詠はそのまま路地裏から出ていった。
『オイラ達はどうするッスか?』
「んー・・・リパル、お前の耐久値幾つだ?」
『今・・・60%を切ったッス』
「じゃあ整備を兼ねてアイツのとこに行くか。・・・ああそうだ、亞莎に新しい情報を・・・」
まったく・・・これは長引きそうだな・・・
後書き
咲
「独り言多いなぁ・・・俺」
亮
「あはは。にしても出番ない・・・な」
シリカ
「・・・」←MOREDEBAN看板を捧げている。
亮
「・・・ごめん」
シリカ
「・・・ぐすっ」
咲
「まあ・・・ちゃんと出番は考えてあるらしいから・・・頑張れ」
亮
「(俺的にはクラインの方が空気のような・・・)」
咲
「そ・・・それじゃあ、次回もよろしく」
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