魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第4話 1人の男と1人の女の子のお話
前書き
こんにちはblueoceanです。
今回は主人公無しです。
零治がますます目立たなくなりそうだな………
新暦73年5月………
「………ったく」
「バルト、食べないの?」
「ああっ?食うに決まってるんだろ?大人はそんなにがっつかねえんだよ」
「私もおとなだもん!!」
「そんな汚れた口で小さな胸張っても全く見えねえっつうの………」
そう言ってフキンで口元を拭いてあげる。
「ねえバルト、買い物が終わったらどうするの?」
「先ずは寝床確保だな。取り敢えずミッドから離れた誰も来ないような廃墟何かがいいと思うが………」
そう言いながら注文した料理を食べる。
「………って!!また汚しやがって!!自分で食べられるものを注文しろ!!」
「食べれるもん!!ちょっと失敗しただけだもん!!」
そう言って再び自分の食べていたパスタをフォークで食べようとするが、巻きつけずそのまま食べようとするので滑り落ちてしまう。
「ううっ………」
「………ったく」
そう言って向かい側に座っていたバルトと呼ばれた男は少女の隣に座り、フォークにパスタを巻きつける。
「ほれ」
「ん………」
そのパスタを小さな口で頬張る少女。
「うまいか?」
「………うん」
少し涙目になりながら答える少女。
「てめえはまだガキなんだ、出来ねえことは当然たくさんある。んなことは全て俺に頼れ。多少は手伝ってやる」
「………ガキじゃないもん、ヴィヴィオだもん………」
「そんなことどうでもいいからさっさと食えよ。この後も長く歩くんだからよ」
「分かった………」
そう言って黙々と自分で食べ始めるヴィヴィオ。
(何でこうなっちまったかな………)
そう思いながらバルトマン・ゲーハルトは窓から見える空を見た………
新暦73年4月………
「さて、どうすっかな………」
少女を助けたのはいいが、その後の事を全く考えていなかったバルトマン。
「………」
そんなバルトマンをヴィヴィオが凝視する。
まるで自分の父親をしっかり認識するかのように。
「………まあてめえみたいなガキだったら何処かの街に置いていけば誰かが助けてるれるか………仕方ねえ、それまでは連れていってやるよ」
そう言ったバルトマンはヴィヴィオを抱き抱え、その場を後にした………
「先ずは金やコイツの服だな………」
そう思ったバルトマンはこの研究所の所長室へとやって来ていた。
しかしここも電気が通っておらず視界が殆ど見えない………
「くそっ、先ずは明かりか………」
壁沿いに歩き、カーテンの様なものを見つけたバルトマン。
それを思いっきり引っ張り引きちぎった。
「わあぁぁぁ………」
「朝日か………って事は今は早朝か」
抱き上げてるヴィヴィオが朝日に感動しているがバルトマンは特に気にすることもなくその光を元に所長室の机を漁る。
「おっと、この鍵は………!」
机の中にあった隠し棚から1つの鍵を見つけたバルトマン。
その鍵を取り、周りを見回すと、本棚にまたもや隠し扉が。その奥の小さな部屋に立派な金庫を見つけた。
「俺の経験上こういう鍵は………」
ヴィヴィオを一旦下ろし、上機嫌で金庫に近づくバルトマン。
そして穴に入れ、回すと見事に金庫が鍵が開けた。
「ビンゴ!!」
そう言って中を見ると、二段重なった金塊を見つけた。
「おおっ、中々隠し持ってんじゃねえか!!」
金塊を全て取り、出てきたバルトマン。
その顔は満足そうだ。
「パパ、何か見つけた………?」
「あん?誰がパパだ?」
「パパ!!」
指を刺されたじろぐバルトマン。
「テメェ………その言い方変えねえとぶっ殺すぞ!!!」
「おおっ………!!」
大きな声で怒鳴り散らしたバルトマンだが、怒鳴られた当のヴィヴィオは拍手をする始末。
「こ、コイツ………」
流石のバルトマンも何も言えなかった………
「さて、取り敢えず最低限集まったか………後は武器か………」
金塊を手に入れたバルトマンはヴィヴィオの服と金塊を入れるバックを見つけ、次に何かあったときに戦える武器を探していた。
「ねえねえバルト?」
「何だ?」
何とかパパと言わせないように自身の名前を言わせるようにしたバルトマン。
ヴィヴィオは嫌そうだったが、無理矢理承諾させた。
「肩車~」
「ふ・ざ・け・る・な!!」
しかし今のバルトマンは右手でヴィヴィオを抱えており、左手で金塊が入ったバックを持っていた為、両手が使えないでいた。
(しかし両手が使えないのは面倒だ………仕方がないか………)
「おい、ガキ。肩車してやる」
「本当!?」
「ああ、だから静かにしてろよ」
「うん!!」
右手でそのままヴィヴィオを持ち上げて肩に乗せる。
「高~い!!」
「………さっきまでの無口は何処に行ったんだ?ったく………髪の毛握ったら自分で歩かせるからな」
「分かった!!」
そう言ってバルトマンの高さに感動するヴィヴィオ。
興奮していたが髪の毛は掴まなかったので取り敢えず怒るのは止め、先に進むことにした。
「で、何処に行くの?」
「武器を探しにだ。いざというときの………な」
そう呟いてついた場所はある研究室。
「恐らくここにデバイスがある筈なんだが………」
所長室で見つけたこの研究所の地図を見て呟く。
ライターの火をつけながらなのでちゃんとは見づらかったので断言出来なかった。
「バルト、入ろう」
「………だな」
ヴィヴィオに言われて悩んでも仕方がないと思ったバルトマンはヴィヴィオを乗せたまま中に入っていった………
「これは………!!」
中に入るとそこには見慣れた斧が中央に1つ置かれていた。
「綺麗………」
ヴィヴィオが思わず言葉を溢した。
その中央に置かれた斧の部分だけ光が照らされており、神々しさを感じる。
「バルバドス………」
自分の使っていた斧であり、バルトマンに様々な実験を行ったクレインが作った斧でもある。
「だが何だ、このボロボロの姿は………?」
中央に置かれた斧、その姿は錆が酷く、使えるか怪しいほどボロボロだった。
しかし、その錆の所々の合間から見える斧の姿がヴィヴィオやバルトマンに神々しく感じさせた。
「これじゃあ使えねえな………」
「………ううん、この斧はね、使い手を待っているよ」
「何言ってんだガキ?」
「遥か昔に決戦用に造られながら使われなかったデバイス、それがバルバドス」
「へえ~俺の斧と同じ名前なのか………てかお前………」
「血気盛んながら聖王に最後まで殉じた殺戮の聖騎士、彼は聖王の敵となるものはかつての味方でも容赦しなかった。そして実際に大虐殺を行い、味方に処刑された聖騎士。そんな彼に使われる筈だったデバイス」
そんな事を知っているヴィヴィオに驚きながらもバルトマンはその斧から目を離せなかった。
(まるで俺と似たような境遇………クレインが造ったバルバドスもこれから名前を取ったのか………)
「………バルト?」
「おいガキ、こんな錆びた斧本当に使えんのか?」
「えっ?私知らないよ?」
「は?さっきこの斧は聖王の聖騎士が使ってたとか言ってたじゃねえか!!」
「?」
本当に分かってないヴィヴィオの反応に戸惑うバルトマン。
(ただのガキでは無いとは思ってたが更に謎になったな………)
「でもバルトに似合うと思うよ。所々輝いてるし」
「いや、理由になってねえし………」
しかし他の武器を選ぶにしてもその部屋の中には他に何も無い。
そう思ったバルトマンはヴィヴィオを下ろし、渋々バルバドスを持ち上げた。
「………やっぱり錆びたただの斧だな」
「いいじゃん、強そうだよ」
「しかしこれデバイスか?待機状態はどうすんだよ………」
持ってみても何の反応の無いバルバドスを見て、ため息を吐きながら呟くバルトマン。
「前のデバイスとは大違いだよったく………起動しろ、バルバドス!!」
そう怒鳴るように名前を呼ぶと、バルバドスは震え、光り出した。
「な、何だ!?」
錆の部分がどんどん剥がれ落ちていき、中から銀色の斧が現れた。
「ま、まじか………」
「綺麗だね………あの光はこの光だったんだ………」
不思議と握ってみると前に使っていたバルバドスと似たような感覚を受けたバルトマンは、その感覚を確かめる様に何度も握り、振ってみる。
「同じだ………あのバルバドスと………」
『我を呼び覚ました者よ………』
「何だ?」
『我は太古の遺物なり。我を扱うのなら覚悟せよ。我は殺戮の主を持つ斧。使えば人としての幸福は訪れないと思え』
「そんなもの必要ねえ。俺は強者と戦い、勝つこと。………ただそれだけだ!!」
『その先に何を望む?』
「最強の称号、そして俺自身満足出来る戦いを………!!」
『………ならば我を使いこなしてみせよ!!そして我にその強さを見せつけるが良い!!』
そう言ったバルバドスを光輝き、バルトマンの腕輪となった。
「これが………」
「何だかすごく偉そうだったね」
「だが面白い、見せてやるよ俺の強さを………!!」
そうデバイスに誓ったバルトマンだった………
新暦73年5月………
「なのによ………」
美味しそうにデザートのアイスを食べるヴィヴィオを見ながら呟くバルトマン。
取り敢えず手に入れた金塊を非合法の換金屋で使う分を金に変え、金塊はミッドの金庫を借り、そこに入れた。
金塊は随分の金になり、暫く生活していくのには問題無い。
そしてもう1つバルトマンにとって有利な出来事があった。
「本当に誰も俺が気がつかないな………」
そう、若返ったおかげで誰もバルトマン・ゲーハルトだと思われ無いのだ。街を普通に歩いても問題無し、管理局員に道を聞いても問題無かった。
更には念には念をと名前を変え、バルト・ベルバインと名乗っているおかげ余計気がつかれないでいる。
「ふぇ?」
「いや、俺も忘れ去られたなと思ってな」
「バルト、有名だったの?」
「まあな」
「ふ~ん」
特に興味が無いのかそう言って再びアイスを堪能するヴィヴィオ。
(後はコイツをどうにかするのも考えねえとな………)
「ふんふ~ん」
「………」
ご機嫌なヴィヴィオを先頭にショッピングモールをバルトマンは歩く。
「ね、次はどこ行くの?」
「………悪いが次はガキは入れねえ場所なんだ。あの子供広場で待っていてくれないか?」
「うわぁ………!!」
沢山の子供がアスレチックで遊んでいる子供広場、ヴィヴィオの目もキラキラしている。
「分かった!!遊んでるね!!」
「後、これはお金だ。喉が乾いたら何か飲めな」
「うん!!」
そう返事をしてヴィヴィオはバルトマンの言葉を疑わずダッシュで遊びに行った。
「………じゃあな」
そんなヴィヴィオを見て、静かにその場を後にした………
「よし、この後はどうすっかな………」
ショッピングモールを出て、近くのベンチに座り考えるバルトマン。
またテロリストとして戦い続ける生活も悪くない。管理局と敵対してクレインに相当の報いを受けさせるのも良いだろう。
だがそう思っても自分に納得出来る答えではなかった。
「暫くは大人しくしているか………」
一番の目的だったウォーレンとの戦いも出来なくなり、その相棒の黒の亡霊にも負けた。再戦を望んでも良いと思うが、今の自分に勝てる気がしない。
「いっそ知らない管理外世界で修行でもするか………」
そんなことを思った時だった。
「あん?何の音だ………?」
今、居たショッピングモールから大きな爆発音が響き、多くの人が慌てて出てきた。
「おい、何があった?」
逃げ出した人を捕まえ、聞いてみた。
「テロだよテロ!!子供広場に居る子供を人質に取り、管理局に要求してるんだ!!何でも爆弾も仕掛けてるらしい!!」
そう言うとバルトマンの手を払い、走って逃げていった。
「………全く手がかかる」
溜め息を吐きながらバルトマンは人混みをかき分け中に入っていった………
「これはこれは………管理局のアイドルがいるなんてな………ひひひ………」
腕を縛られ、その腕に腕輪を付けられたなのは。
子供達を誘拐したのは5人グループの武装魔導師。
デバイスだけでなく、銃などの質量兵器を持ち、その扱いも慣れているという根っからのテロリスト達だ。
「何であなた逹こんな事を………?」
「先ずは金、そして過去に捕まった仲間の開放だな。その後は逃げるのにこのショッピングモールを爆破しても良いんじゃねえか?」
「確かにな。これだけ人質がいれば迂闊には手を出せないだろうし、爆弾で脅しても良いだろうな」
「金手に入ったらどこ行く?」
「取り敢えず遠くの管理外世界だな。その後、その金使って好きにすればいいさ。人質のガキを売っても良いし、その管理局のアイドルで楽しんでも………」
と卑猥な目でなのはを見るテロリストの1人。
しかしなのははそんな視線にも屈せず睨めつけるのを止めないでいた。
「ふふ、強気な女も中々………」
「ゲスめ………」
「くくっ、褒め言葉をありがとう………」
その男はそう言って他の4人の所へ向かった。
「お姉ちゃん………」
「大丈夫だよ、直ぐにお姉ちゃんの友達が助けに来てくれるから」
その友達とは当然フェイトの事である。
実はフェイトは近くに潜み、この場を監視している。いざというときに対応できるように。
(私のデバイスはアイツらに取り上げられちゃったし………ここはチャンスを待ってフェイトちゃん頼るしかないか………)
自分の不甲斐なさに申し訳無く思いながら、怯えている子供達に声を掛けるなのは。
そんな中1人だけ変わった女の子がいた。
「バルト何してるんだろう………」
1人椅子に座り足をパタパタさせる女の子、ヴィヴィオである。
「あれ?あの子は確か………」
体を少しずつずらしながらその女の子に近づく。
「君、大丈夫?」
「うん?特に問題ないよ」
にゃははと笑うヴィヴィオに少し呆れるなのは。
(大物なのか怖いもの知らずなのか………だけど凄い強い子………)
「君、名前は?」
「ヴィヴィオ!」
「私は高町なのは、よろしくね」
「………ったく、やっと人混みを抜けられたか………」
勇ましく中に入ったバルトマンだったが逃げる人に揉みくちゃにされ。完全に萎えていた。
「面倒だ………戻るかな………」
と呟くがヴィヴィオの元に足を進めるのを止めない。
「第一何であのガキの為にこんなことしなきゃならねえんだ?このバルトマン・ゲーハルト様が………」
そう話しているうちに刻一刻と目的の場所へと歩いていく。
「こんな姿を見たらウォーレンの野郎どう言うか………」
大笑いされそうだなと小さく笑うバルトマン。
「まあいい、もうここまで来たんだ、久しぶりに暴れてやるよ………」
バルトマンは嫌な笑みを浮かべながら呟いたのだった………
「なのは………」
フェイトは子供広場近くの書店に隠れ様子を見ていた。
チャンスを待ちながら様子を見ていたが、中々隙を見せない。
(相当こういう経験してる奴等だ………やっぱり迂闊には手を出せない)
子供広場は各専門店があるショッピングモールの空いた場所、それもフードコート並の敷地の中にあり、様々な遊び場があるため子供達には大人気なのだ。
人質の子供は6人しかいないが、それぞれテロリストが近くに付いており下手に砲撃魔法でも放ったら巻き込んでしまう。
そしてアスレチックは子供サイズなので近くに隠れながら行こうとしても見つかり、こちらから向かっても邪魔になるといったフェイトにデメリットが多い条件下にあった。
「本当にどうしよう………ってあの人って確か………」
考えていたフェイトの視界に子供広場に向かっていく1人の男がいた。
「………って!!何で子供広場に!?しかも丸腰で………!!」
驚き、思わず飛び出そうとしてしまう自分を何とか抑え、その場に留まった。
「危ない危ない………でもあの人何で………あの子を助けに来たとしても無鉄砲過ぎるよ………いざとなったら………」
そう呟いてフェイトはバルディッシュを構えるのだった………
(そう、出てこなくて正解だ。中々冷静な嬢ちゃんだな)
子供広場に行く途中、潜んでいる魔導師を発見。
あの場に出てこられたら足手まといになると思ったバルトマンは大きく息を吐いた。
(これでいい、でなければ意味がない)
これはヴィヴィオを助ける為ではない、自分の憂さ晴らしの為だと言い聞かせる。
既に相手のテロリスト達も警戒し銃を構えている。
「面白い、そんな安っぽい銃で俺を殺す気か………」
「誰だお前!!」
「バルト!やっと迎えに来た!!遅いよ!!」
「ヴィヴィオちゃんのお父さん………?」
「やかましい、ガキ!それにそこの姉ちゃん、そのガキは俺の娘じゃねえよ」
「で、ですよね………少し若いなって思ってびっくりしました」
「パパです!!」
「違うってんだろ!!その呼び方やめねえと俺は1人で帰るぞ!!」
「い~や~だ!!」
「だったらパパって呼ぶの止めやがれ!!」
「ちょっと喧嘩は………」」
ヴィヴィオだけでなくなのはまでテロリスト達を無視して会話をし始める。
当然テロリスト達は………
「ふざけるなあああああ!!!!」
怒り、全員銃をバルトマンに向けた。
「いいねえ!!そうこなくっちゃな!!やろうぜ殺し合いを!!」
獣のように低い体勢からバルトマンは地面を思いっきり蹴った。
「撃てえええ!!!」
テロリストのリーダーからの命令で一斉に発砲するテロリスト達。
「凄い音~!」
「ヴィヴィオちゃん、伏せて伏せて!!」
他の子供は怯えてその場にうずくまっているのにも関わらず、ヴィヴィオだけが拍手をする。
なのはが慌てて無理やり伏せさせるが相変わらず興味があるのか見ようと隙を見ては立ち上がろうとする。
「うぐっ!?」
そんな中、獣の様な動きで銃弾を躱しつづけたバルトマンは1人のテロリストの銃を手刀で落とし、その顔面を思いっきり掴んだ。
「くっ!?」
「おっと、撃つなよ」
その男を持ち上げ盾にするバルトマン。
それを見て渋々銃を降ろすテロリスト達。
「マシンガンならともかく連射が出来ない銃で俺を殺せるかよ。………まあ例え連射出来る銃でも俺は殺せないがな」
「化け物………」
「だが魔法ならどうかな………?」
そう言ってそれぞれデバイスを展開するテロリスト達。
「ほう………質量兵器だけならまだ手加減したがデバイスを使うならこっちも少し本気出すかな………」
「ギャアアアアアアア!!!!」
掴まれた男が大きな電流と共に大声を上げて気絶した。
「電流………?お前、電気変換気質を持ってるのか!?」
「まあな、だが安心しろお前らみたいな奴等にデバイスは使わねえからよ」
「コイツ………!!」
余りにも舐め腐った態度にテロリストも怒りが表に現れ始めた。
(今なら………!!)
既に緩めていた縄を完全に解き、倒れている男に静かに近づくなのは。
(せめてレイジングハートを手にすれば………)
ゆっくり、ゆっくり近づきていく。
「この野郎!!」
「ふん!!」
そんな中、バルトマンは素手で次々とテロリスト達を沈めていった。
そして3人目もデバイスの刃を避け、カウンターで腹部に拳を入れた。
もちろん電撃付きで。
「くそっ、弱すぎて話にならない………」
横から来る魔力弾を見向きもせず避け、そう呟く。
「さて、後は………」
そう言って残りの2人のテロリストを見る。
「くそっ、何て化け物だ………」
「こうなったら………」
そう呟きながらリーダー格の男は懐から小型の機械を取り出す。
「爆破して全て破壊して………うおっ!?」
「させない!!」
リーダー格の男をピンクの輪が縛り、動けなくした。
「管理局です!!投降してください!!」
そして最後にフェイトがやって来て、テロリスト達は投降したのだった………
「バルト~!!」
「………はぁ」
ヴィヴィオに抱きつかれたながらため息を吐くバルトマン。
不完全燃焼な状態で鬱憤を完全に晴らせてないバルトマンはモヤモヤとした感情を残し憂鬱になっていた。
フェイトが来た後、直ぐに他の管理局員がやって来てその場を制圧。
爆弾も無事処理され、人質も無事開放された。
開放されたヴィヴィオは直ぐにバルトマンに抱きついた。
しかしバルトマンは無表情でその場に立ち尽くしている。
「何?私に会えて嬉しくないの!?」
「お前なんてどうでもいい、それよりも俺のこのモヤモヤをどうにかしてくれ………」
「うん?」
「………お前に話した俺がバカだった」
「あの………」
「あっ、さっきのお姉さん!!」
そう言ってヴィヴィオはなのはの方に走っていきそのまま抱きついた。
「初めまして、私高町なのはって言います。助けてくれてありがとうございました。だけど………」
「何だ?」
「何であんな無茶を?」
「無茶?あんな奴ら相手にか?バカ言うなよ、あんな奴等との戦いで何処に無茶があった?」
「あなたの子供もいたんですよ!?もし人質にされたらどうするつもりだったんですか!?」
「どうするもこうするもぶっ潰す、それだけだ」
「本当にそう思ってるんですか………?」
「それ以外何がある?」
「何て無鉄砲な人!!ヴィヴィオちゃんがどうなっても良いですか!!」
「さて………な」
パン!!
大きな音がその空間に響き渡り、皆が注目する。
なのはがバルトマンの頬を思いっきりビンタしたのだ。
「何するんだ………?」
「私、怒ってます!!自己中心的で周りの事なんて考えない。最低です!!救える力があるのに、みんなを助けようとは思わなかったのですか!!!」
「だから何だ?それはお前の考えだろうが。俺に何の関係がある?………手を出したからにはそれなりの覚悟はあるんだろうな………?って何だガキ?」
もの凄い形相でなのはを睨むバルトマン。しかしなのはも決して負けていなかった。
一触即発の雰囲気の中、その空気を壊したのはヴィヴィオだ。
「喧嘩だめ、なのはお姉ちゃん良い人なんだから」
「俺は悪い奴だよ、だから関係無い」
「えい!!」
「あたっ!?だから何を………」
足のすねをヴィヴィオに蹴られ、文句を言おうとしたバルトマンだったが………
「「………」」
「うっ………」
涙目で睨むヴィヴィオとその後ろからなのはに睨まれ、何も言えなくなってしまう。
「バルトは悪い奴じゃない、私をお外に連れていってくれた。バルトは私の大事な人。パパ!!」
「だから俺はお前のパパじゃ………」
ブチン!!
そんな音が響いたかの様になのはの顔が暗くなる。
まるで何かに取り憑かれたかの様に。
バコーン!!
そして直ぐに大きな音と共にバルトマンの頭に鋭い痛みが走る。
「っ、一体何が………」
そう思い、痛みの原因を見ると………
そこには広辞苑を片手に持ったなのはが居た。
「バルトさん、何か言った………?」
「いや、何にも………」
黒いオーラを発するなのはに流石のバルトマンも何も言えなかった………
「じゃあね~!!」
ヴィヴィオがなのはに向かって大きく手を振る。
あの後、事情聴取の後、無事開放された。時刻は既に20時。
「ふあ~ぁ」
「何だ眠いのか?」
「だ、大丈夫……だもん!!」
事情聴取の途中なのは達と一緒に夕食を食べたバルトマン達。
そこにはフェイトも参加し、女性陣は大いに盛り上がっていた。
そんな場面に居づらい思いをしながら耐えたバルトマンはもうバテバテ状態だった。
(しかしあの金髪の嬢ちゃんは中々美人だった。あれは将来が楽しみだ………対してあの栗色の髪………なのはだっけか?アイツのあの威圧感は凄かった、俺でさえあんなの始めてだったな………)
そんな事を思いながらウトウトしてるヴィヴィオの手を繋ぎ歩く。
(生活拠点はもうここでいいだろう。若返った事もありバルトマンだと誰も気がつかないなら普通に生活してても問題ない。それに木を隠すには森の中だしな。後は………)
そう思いながらヴィヴィオを見る。
「ヴィヴィオを預けちまえば面倒な事は無くなる………何がパパだ、ったく………」
そう呟いてヴィヴィオを見る。
既に目を瞑っている状態で歩いており、もはや限界みたいだ。
「………ったく、仕方ねえ」
「わっ!?」
持ち上げられてびっくりするヴィヴィオだったが背中に乗せられ、その大きな背中に安心感を覚えた。
「大きい………」
「まあ、背が大きいからな」
「暖かい………」
「そりゃあ人の体温があるからな」
「バルト………」
「あん?」
「私達はずっと一緒………家族だよ………ね………」
そう言ってヴィヴィオは寝息を立て始めた。
「………家族か………」
『バルトマン、今日の俺は一味違うぜ!!』
『相棒が居ないのにか?そんな状態でよくもそんな口がきける!!』
『1つ教えておく、人は守りたい者が出来れば誰よりも強くなれる。そして今の俺には大事な家族が出来た。負けねえよ絶対………』
「ウォーレンの野郎、最後の戦いの前ににそう言ったんだっけな………そして………」
『嫌だね、俺は元々お前を殺すために戦った訳じゃない、お前が危険な奴だから止めただけだ』
「俺に2度目の敗北をつけた有栖零治、どちらも大事な者を守るために戦っていた………」
そんな2人を思うと前みたいに決して下らない事じゃない。
「俺が家族か………」
バルトマンは自嘲気味に呟いたのだった………
「ここが!!」
「ああ、新たな家だ」
事件があった3日後、これから住む家の前にやって来た。
………って言ってもマンションである。
「ここ全部使っていいの!?」
「アホか、ここの2階の一室だけだよ」
「な~んだ」
「………ってかここの部屋全部ってどうやって使う気だよ………」
呆れながら階段を上っていく。
どこにでもある普通のマンション。中には部屋が4つあり、風呂トイレも完全完備。家具も既に置いてあるものを使用していいとなっていたため、バルトマンは即決した。
「何号室~!?」
「近所迷惑だから静かにしろくそガキ!」
と言ってもヴィヴィオのテンションは下がることがなく、かなりはしゃいでいた。
「何が嬉しいんだか………」
そう呟きながらバルトマンは自然に笑みがこぼれた。
「おい、どこ行くんだ?ここだぞ」
さっさと先を歩くヴィヴィオはかなり先に歩いていた。
そんなヴィヴィオを気にせず鍵をさして回す。
そんな中黙って帰ってくるヴィヴィオ。
そして………
「何で教えてくれないの!!」
バルトマンの脛を蹴ってきた。
「蹴るなっての!!大体お前が勝手に歩いていったろうが!!」
「でも教えてくれてもいいじゃん!!バルトの意地悪!!!」
「んだと!?だったら家にも入れねえぞくそガキ!!」
「嫌だ!!絶対侵入するんだからね!!」
口論が止まらずギャーギャー騒ぐ2人。
「ちょっと一体何を騒いで………あっ」
「あっ、なのはお姉ちゃん!!」
「何でお前が………」
そこに自分達の部屋の隣の住人、寝癖頭のなのはが出てきた………
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