とある3年4組の卑怯者
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37 謝罪
前書き
みどりが会いたがっているので家に来てくれとまる子に誘われた藤木。拒む理由がなく一旦は承諾するも、後でリリィから彼女の家でケーキを食べないかと誘われたことを理由に断ってしまう。そして藤木が来ないとまる子から聞かされたみどりは泣いてしまった!!
当初の計画では今回で藤木と堀さんを初対面させようと思ったのですが、今後の展開を考えて先送りにしました。
まる子の家ではまる子から藤木が来ないことを知らされたみどりが号泣していた。
「藤木さん・・・、私は藤木さんに嫌われてしまったんでしょうか・・・、う・・・、ぐす・・・、うわあああん!」
「吉川さん、泣かないで、まる子ちゃんたちが困っちゃうじゃない、泣かないように頑張るんじゃなかったの!?」
「でも、堀さんに藤木さんを紹介できなくて・・・、うう・・・」
「藤木さんって?」
「ウチのクラスメイトの男子だよ・・・、みどりちゃんが好きなんだ」
まる子が説明した。
「そうだったのね・・・、吉川さんが好きな人の名前だったんだ・・・」
堀はみどりの気持ちが分かったような気がした。好きな人に会えないから悲しくて泣いているのだと。
「私は藤木さんに嫌われているのですね・・・」
「違うよ、藤木は用事があって来られなかったんだよ・・・。本人はすごく行きたかったんだけどさ・・・」
まる子はみどりを励まそうと誤魔化した。
「吉川さん!」
堀がみどりを叱咤し出した。
「藤木君だって藤木君の都合があるのよ!嫌われたなんて早合点よ!元気出して!また会えるわよ!泣いてると藤木君だって会いにくくなるわよ。だから藤木君に会いたいのなら頑張って泣かないで堪えようよ!!」
まる子とたまえは堀が必死でみどりを諭しているのを見て、彼女はとても友達想いだと思った。
「う・・・」
「泣かなきゃまたきっと会えるわよ」
「堀さん・・・」
「藤木君を紹介できなかった気持ちは分かったわ・・・私もその人に会うのを楽しみにしているから、今日はまる子ちゃんやたまちゃんと遊ぼう・・・、ね・・・」
みどりは泣き止んだ。
「は・・・、はい・・・」
(す、すごい・・・、あのみどりちゃんを説得した)
まる子は堀に驚いた。
「ごめんなさい、堀さん。そうでしたね。まる子さん、たまえさん、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。私、もう泣きません!」
「みどりちゃん・・・」
「それに泣き虫を治すと堀さんと約束したのですから・・・」
まる子もたまえもホッとした。こうして四人で菓子を食べたり、後にまる子の姉も交えてトランプで遊んだりした。みどりは負けても決して泣かないように頑張った。
藤木はリリィの家でケーキをご馳走になった後、花輪とリリィ、三人で雑談をしていた。
「花輪クンってホント色んな女子から好かれるのね。凄いわ」
「まあ、確かにね。でも僕は全ての女の子のheartを受け入れるつもりなのさ」
「でも特別好きな人っているの?」
藤木はリリィの質問にドキッとした。もし花輪に好きな人がいるとしたら誰なのか、少々気になっていた。だが、もしリリィとか笹山とか言ってしまえば自分はどちらかを諦めなければならないか、不安にもなっていた。
「もしかして、いつも接してくるみぎわさんとか?」
「おいおい、みぎわクンからも確かにValentine's dayからchocolateやmufflerを貰ったことはあるけど、ああいうtypeは苦手さ・・・」
「へえ、そうなんだ」
「今は特別好きな人はいないね」
「そうなの・・・」
藤木は花輪の今の言葉に安堵してはいたが、もしかしたら孰れは自分の好きな女子を好きになるのではないかという不安感もあった。
「私はそうね・・・。花輪クンは素敵だわ」
藤木はリリィの言葉に堕落しそうな感じを覚えた。
(そうだよな、僕みたいな冴えない男なんかよりも花輪クンみたいに頭がよくてお金持ちの男子の方がいいよな・・・)
しかし、リリィは続けた。
「でも、藤木君も私の事好きになってくれてるし、初めて会ったのも藤木君だし、藤木君も気になってるの・・・」
リリィの言葉に藤木は愕然した。
「ほ、本当かい?」
藤木は思わず聞いた。
「もちろんよ。私には藤木君も好い人に見えるわ。前に藤木君を招待した時もそう言ったじゃない」
「あ、うん・・・」
(そういえば、そうだったな・・・)
藤木は花輪に負けたわけではないとわかって安心した。
「藤木クン、よかったじゃないか。リリィクンの想いが伝わっているんだからあのlove letterは無駄にはならなかったんだよ。僕も君のloveを応援しているよ」
藤木はリリィが惹かれる花輪から恋を応援されることに変な気もあったが花輪には「ありがとう」と言った。リリィは藤木の想いは有難かったが、花輪も捨てきれなかった。
そして、藤木と花輪はリリィとリリィの母にケーキをご馳走になったお礼を言って帰ることにした。
みどりは藤木には会えなくともまる子たちに堀を紹介できてよかったと思っていた。そしていつか藤木にも会って学校に友達ができたと報告したいと思うのであった。
「まる子さん、たまえさん、お姉さん、本日はありがとうございました」
「さようなら。また会えたらいいわね」
みどりと堀はまる子とその姉、そしてたまえに別れの挨拶をした。まる子たちも「さようなら」と返した。
帰る途中、みどりは堀から聞かれた。
「ねえねえ、吉川さんってその藤木君って人どこが好きなったの?」
「それは・・・、スケートしている姿がカッコよくて・・・、それで好きになってしまったんです」
「スケートね、じゃあ、今度スケートに行こうって誘ってみたらどうかな?」
「誘いたいのですが、なんか恥ずかしくて・・・」
「恥ずかしがっちゃだめよ、勇気出して誘ってみて!」
「は、はい!」
翌日の朝、まる子は教室に入ると、藤木がリリィに話しかけられている所を見て、盗み聞きした。
「藤木君、昨日は来てくれてありがとう」
「うん、こっちも楽しかったよ・・・、君のお母さんの好きなメーカーのケーキは本当美味しいよ。また来てもいいかい?」
「ええ、いつでも待ってい・・・」
その時、小杉が急に話に割り込んで来た。
「何、ケーキだって??!おい、何で俺を誘わねえんだよ!!??」
「え、あ、いや、その・・・」
「藤木ばかりずりーぞ!!今度は俺にも食わせろよ!!いいな!!」
「わ、分かったわ・・・。また今度ね・・・」
「おっしゃ、絶対だぞ!!」
小杉の厚かましい態度にリリィは何も言えなかった。まる子は昨日藤木はリリィの家で楽しく過ごしていたと察した。
放課後、藤木は帰ろうとした途端、まる子に呼び止められた。
「ちょっと藤木・・・!」
「あ、さくら・・・」
まる子は怒りを笑いで誤魔化していた。
(う、こりゃやっぱり怒ってるよ・・・)
「昨日はリリィと一緒で楽しそうだったね・・・。おかげでこっちは大変だったよ!」
「う・・・、で、でも、僕にはリリィの家に行くというちゃんとした理由があったから断ったんじゃないか!!」
まる子は作り笑いをやめた。
「何言ってんの!!アタシが誘った後からリリィに誘われたんでしょ!!アンタってどこまで卑怯なのさ!!」
藤木は自分の代名詞を言われてギクッとした。
「みどりちゃん泣いてたよ!!藤木に嫌われたって泣いてたよ!!」
(それで諦めてくれればこっちは楽なのに・・・)
「アンタどうしてみどりちゃんがアンタに会いたがってたか分かる!?」
「わ、分からないよ・・・」
「みどりちゃんはね、今まで学校に友達がいなかったけど、転校してきた女の子と友達になったんだよ!!初めて学校で友達ができたことをアンタに言いたかったんだよ!その子をアンタに紹介したかったんだよ!!」
藤木は以前、共にデパートに行った時、みどりには学校に友達がいないと彼女の祖父から聞いて彼女が可哀想に感じた事を思い出した。敬遠した自分がいつも以上に卑怯に見えて済まなく思った。
「そうだったんだ・・・。さくら、みどりちゃんの電話番号教えてくれるかい?今日謝っておくよ」
「うん、わかった。アタシの家に来なよ」
藤木はまる子の家に向かい、みどりの電話番号を教えてもらった。そしてさくら家から直に吉川家に電話をかけた。
「もしもし。みどりちゃんの友達の藤木といいますけどみどりちゃんいますか?」
『あら、ちょっと待っててね』
みどりの母が応答し、少ししてみどりと変わった。
『藤木さんですか!?みどりです』
「みどりちゃん、ごめんよ。昨日は行けなくって・・・」
藤木はみどりは泣いてしまうのではないかと思った。
『いえ、いいんです。藤木さんは都合が悪かったんですから。急に誘った私がいけないんです』
「そんなことないよ!僕も悪いんだ!本当にごめん!!」
『そうですか・・・。藤木さん、私の学校に転校生が来て、仲良くなったんです。私、初めて学校で友達ができたんです・・・』
「そうなんだ。さくらから聞いたよ。よかったね・・・」
『はい、すごく可愛くていい人で、私は泣き虫を治すとその人と約束したんです!そしていつか藤木さんにも是非紹介したいと思います!そして藤木さんにふさわしい人になれるよう頑張ります!待っていてくださいね!』
「あ、うん、さよなら・・・」
藤木は電話を切った。みどりがその転校生と仲良くなり、成長しようとしていることを理解した。
(みどりちゃん、ごめんよ、卑怯な事して・・・)
藤木はまる子に電話を借りた礼をして帰った。
後書き
次回:「書店」
旅番組を見て広島に興味を持ったリリィ。広島に関する本を探そうとして書店に入るも、買いたいと思った本が上級生に立ち読みされ・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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