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真田十勇士

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巻ノ百六 秘奥義その九

「今宵出した、贅沢は確かにならぬが」
「しかしですな」
「やはり駿河の酒ば美味いですな」
「それも実に」
「江戸は水が悪い」 
 大久保は曇った声で言った。
「関東全体がな、だからじゃ」
「はい、酒もですな」
「どうしてもですな」
「悪いですな」
「口に合いませぬ」
「あれば飲むが」
 質実な大久保らしくだ、そうした時は文句を言わずに飲むがそれでもちうのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「駿河の酒は美味い」
「それは事実ですな」
「そうじゃ」
 全くというのだった。

「嘘はいかん」
「ですな、美味いものは美味い」
「しかと言うことですな」
「隠すことなく」
「そうあるべきですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だから言う」
「この酒は美味い」
「駿河の酒は」
「実にですな」
「いや、遠江や三河の酒もいいですが」
「酒は駿河ですな」
「思えば大御所様もじゃ」
 大久保は家康の話もした。
「駿河がお気に入りなのもじゃ」
「酒が美味いせいもありますな」
「思えば幼い頃は駿河におられてです」
「そして駿府を拠点にもされていましたし」
「今も移られています」
「それじゃ、駿府におればな」
 家康が幼い頃から若い頃を今川家の人質そして家臣として過ごし大名になり駿河を手に入れてから拠点とし今も住んでいるその場はにいればというのだ。
「こうした酒もありな」
「親しみもある」
「だからですな」
「大御所様はあちらにおられますか」
「駿府に」
「あの方はやはり駿府じゃ」 
 笑ってだ、大久保はこうも言った。
「駿府が一番お好きなのじゃ、とはいってもな」
「はい、三河もですな」
「やはりお好きですな」
「我等の故郷だけあって」
「格別のお情けがありますな」
「そうじゃ、しかし三河というか岡崎はな」
 この城のこともだ、大久保は話した。
「どうも小さい」
「ですな、広く治めるには」
「どうにも」
「狭く小さな城です」
「治めるならば駿府が最もよいです」
「大御所様はそこもおわかりでな」
 駿府が広く治めるに適した場所であり城であることをだ。
「あの城に入られtおるのじゃ」
「そうしてですな」
「あの様に治めておられますな」
「それも天下全体を見て」
「そのうえで」
「そうじゃ、しかしこれからはじゃ」
 家康は駿府から天下を治めているがというのだ。
「この江戸から天下を治めることになる」
「江戸の城からですな」
「日に日に城も町も整ってきておりますが」
「江戸から天下を治める」
「そうなっていきますか」
「うむ、江戸の城はかなり大きくなる」
 その造りがというのだ、本丸の巨大な天守を軸に渦巻の様に城が広がっていっているのだ。 
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