魔法少女リリカルなのは ~最強のお人好しと黒き羽~
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最終話 小伊坂 黒鐘のエピローグ
今の俺には、一体何が残っているのだろうか?
そう思って俺は、失ったものを数える。
たった独りにされて、それが自由だと神様が言うのだとしたら、本当に理不尽だ。
少なくともこんな現実を俺は望んでなんかいない。
母さんの料理は美味しいし、父さんの魔法と剣術はカッコイイし、姉さんは優しくて甘やかしてくれる。
そんな当たり前に恵まれた環境を、たった一晩で全て奪われた。
許せなかった。
こんな理不尽を生み出す運命に。
もし神様がいるのならば、神様を。
だけど……何より許せないのは、そんな理不尽を目の前にして立ち向かうことができなかった、弱くて醜い俺自身だった――――だからこそ、俺には誰も救えないのだと思っていた。
それでも、誰かを救いたいと思った。
こんな弱い俺は、それでも、何かできるんじゃないかって……何かしたくて、必死に努力した。
天流なんてカッコつけた剣技も、弱い自分が少しでも強くなったと思いたかったから。
だけど、カッコつけただけの強さじゃ、誰も救えなかった。
命をかけても、誰かを悲しませるだけで、必死になっても誰かに迷惑をかけるだけだった。
それでも俺には刀と銃しかなくて、それでしか、何かを変えることはできないと思った。
それを、ただただ必死に鍛えて……その先で、なのは達に出会った。
彼女たちは、俺に生きる意味をくれた。
彼女たちは、俺に生きる価値をくれた。
そして彼女達のおかげで、俺は強くなろうと思った。
彼女達の笑顔を守るために。
これからもっと、その笑顔を続くために。
「よっ、なのは!」
「あ、黒鐘君!」
なのはと始めて出会った海岸は、今はなのはと待ち合わせをする場所になった。
ここから少し歩けば、今度は雪鳴と柚那と交流して、すずかとアリサとも合流する。
気づけばたくさんの友達に出会って、彼女達と楽しい日常を送れてる。
剣術と魔法を極めることばかり考えていた俺が、今や勉強や料理に没頭する。
そして帰りに姉さんのいる病室で過ごして、家に帰る。
平和な日々が、こうして続いていた。
「なのは、髪を結んでるそれ……」
「え?」
そんな日々は、小さく変化する。
こういう、小さな所から。
「うん、フェイトちゃんと交換したんだ」
「そうか。 似合ってるよ」
「えへへ~!」
嬉しそうに微笑みながら、なのはは俺の左腕に抱きつく。
「お、おい!? 歩きづらいだろうが!?」
「え~? この前はフェイトちゃんとおんなじ事してたのに?」
「……え、なんで知ってるの?」
「あ……」
「……つけてたのか?」
「……てへ?」
「てへじゃないから!!」
「ごめんにゃさい!!」
そんなちょっとした真実で驚くのも、日常ならでは。
この時間が、一生続けばいいなって。
姉さんが起きて、フェイトが戻ってきて。
そしたらきっと、もっと楽しくなる。
そんな日々を夢見ながら。
そして、そんな日が来るために、俺はこれからも強くなろう。
この黒き羽と、黒き刃に、小さな誓いを込めて。
そんな俺の日常は、再び終わりを迎える。
魔法が関わる戦いは、再び俺たちを悲しみの物語に導いていく。
その季節は冬。
悲しみも絶望も、そして真実をも、雪は覆い尽くして隠していく。
しかし雪解けと同時に全ては解き放たれ、俺たちは向き合わなければいけなくなる。
その時、俺たちは何を思い、何を選ぶのだろうか。
この手の魔法は何を斬り裂くのだろうか。
その問いかけとともに、俺たちは――――、
「なんで……なんで私たちは戦わなくちゃならないの――――黒鐘君!?」
「私、嫌だよ……戦いたく、ないよぉ――――お兄ちゃん!?」
「ごめん。 俺はそれでも、助けるって決めたんだ――――はやてを」
それぞれの思いを胸に、再び戦場に羽ばたく。
後書き
以上で無印編、終了でございます。
最後まで読んでいただき、心の底から感謝します。
完結に一年以上を要してしまうほど遅い投稿なので、今後はもっと計画的に行きたいものですが。
それはさておき、最後に描かれた次回予告的なやつ。
A`s編の構想は、実はすでに建っております。
ただ、読者様の感想的には不満の多い作品のようですので、続編の投稿は見送らせていただきます。
まずはこの作品の誤字脱字の修正ですかね。
なにせつい最近、主人公の名前を変えると言う無駄に大掛かりなことをしたせいで、まだ『天龍』と言う苗字が残っているらしいのです。
これは早く直しておきたいところ。
なので続編は……最悪やらないかもしれません。
その辺は皆様のコメント次第とさせていただき、一旦、終とさせていただきます。
最後までご愛読いただいた皆様。
つまらないとか、名前が酷いとか書いていただいた皆様。
私はなんとか、完結させることができました。
それは全て皆様のおかげです。
本当にありがとうございました。
それでは縁があれば、また別の作品、またはこの作品の続きでまたお会いしましょう。
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