とある3年4組の卑怯者
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33 記念
前書き
遊園地へ向かった藤木の家族は、笹山の家族と偶然にも出会う。そして、藤木と笹山はそれぞれの家族と共に遊園地内のアトラクションを楽しむのであった!!
藤木と笹山、それぞれの家族はレストランで食事をすることになった。藤木はラーメン、笹山はコロッケ定食を食べた。
「かず子は藤木君とホント仲がいいのね」
笹山の母が言った。
「うん、藤木君は初めて会った時から私の大切な友達だもん」
「えっ!?」
藤木は笹山の発言に驚いた。
「藤木君は私の事好きになってくれてるし、それに優しいし・・・。ね、藤木君?」
笹山はやや照れながら言った。
「う、うん・・・」
藤木も非常に恥ずかしくなり、赤面してしまった。
「茂、そうだったのかい?」
藤木の母もこの事実を知らないようで驚いた。
「う、うん・・・」
「いや、ごめんね、こんな子が人を好きになるなんて、この子ったら学校で卑怯って呼ばれてるし、こんな子から好かれちゃ、迷惑じゃないのかい?」
藤木の母がやや申し訳なさそうに笹山に聞いた。
「いえ、そんな、迷惑なんて・・・、それに私は藤木君は卑怯だとは全然思っていませんから安心してください」
「笹山さん・・・」
(ああ、笹山さんにこんなに良く言われるなんて、嬉しいけど、母さんと父さんに知られて、なんか自分がみっともないなあ・・・)
藤木は両親に笹山を好きになるなんてとんでもなく思われるから諦めろと迫られるのではないかと不安に思った。
「へえ、藤木君はかず子のどこが好きになったんだい?」
笹山の父が藤木に聞いた。
「それは・・・優しいところです。いつも卑怯と呼ばれて、スケート以外何の取り柄もない僕にもいつも笑顔を見せてくれるからです。初めて会った時も、僕を心配してくれていましたし・・・」
(藤木君・・・)
笹山は藤木に自分のいいところを言われて、己の藤木への主観と重なり合っていることに改めて感じた。
「それじゃあ、かず子も藤木君も優しいもの同士だね。二人とも将来いい夫婦になれるかもな」
笹山の父がからかった。藤木の心臓が大きく揺れる。
「ちょっと、やだお父さんったら・・・」
笹山が恥ずかしくなった。
(笹山さんといい夫婦になれるのかな・・・)
藤木は顔がにやけていた。
「おい、茂、何ニヤニヤしてるんだ?そんなに嬉しいのか?」
藤木は父親に現実に戻された。
「あ、そ、その・・・」
藤木は答えられなかった。
「藤木君、かず子と仲良くなってありがとう。またいつでもうちにも来てね。お菓子作ってご馳走するわ」
笹山の母が藤木に行った。
「は、はい、ありがとうございます」
「藤木君、次ジェットコースター乗ろうよ!」
「う、うん、そうだね・・・」
一行はジェットコースターの乗り場に並んでいた。
(う・・・、怖いな・・・)
藤木は怖さで震えていた。
「藤木君、もしかして怖いの?」
「い、いや、そんなことないさ!」
藤木は笹山を心配させまいと慌てて嘘をついた。そして乗る時が来た。藤木は笹山と同じ席に座った。そのとき笹山が藤木に話しかける。
「藤木君、私ちょっと怖いかな」
「え・・・?」
藤木は正直に言える笹山が羨ましく感じてしまった。対して自分は見栄を張って怖くないなんて嘘をついたのだから・・・。
「でも藤木君がいれば怖さも忘れるかもしれないわ」
「ど、どういうことだい?」
「あ・・・、ごめんね、何でもない・・・」
笹山は恥ずかしがった。そしてコースターが出発して上昇する。そして一気に下降し、乗客は全員悲鳴を挙げた。もちろん、藤木も笹山も悲鳴を挙げる。
「ひいーーーーーーーっ!!」
「キャーーーーーーーっ!!」
二人は振り落とされそうになると感じた。そして、終わった。
「笹山さん、悲鳴すごかったよ」
「藤木君もすごい悲鳴上げてたわ。やっぱり怖かったんじゃない」
「う・・・」
藤木は嘘がばれた。しかし、笹山は咎めることなく、寧ろ笑っていた。
「ハハハハハ、藤木君ったら強がっちゃって!」
「あ、う、うん、でも笹山さんもちょっとどころか結構怖がってたよ、ハハハハハ!!」
「やだ、藤木君ったら!!」
お互い笑いあった。それを見ていたそれぞれの両親は二人はかなり仲が良いと改めて感じていた。
そしてこの後、藤木は今度はのんびり楽しめるものがいいと思った。そして、いろいろな動物に会えるという汽車を見つけた。
「笹山さん、あの汽車に乗って色んな動物見に行こうよ!」
「え・・・、うん、いいわね、行こう!」
こうして一行は汽車に乗ることにした。藤木は再び笹山の隣の席に座る。列車が出発した。列車は森の中を走る。アナウンスが聞こえた。
『どうもご乗車ありがとうございます。この列車では様々な動物に巡り合う事ができますので、是非ご堪能下さい』
そして、模型ではあるが、トラが、ヘビが、ゴリラが見えた。
『この森の中では、トラ、ヘビ、ゴリラなどいろいろな動物が見えます。間もなく川に入ります。川をよく見ますと、ワニ、白鳥、カワウソに出会えます』
アナウンスの通り、ワニ、白鳥、カワウソが見えた。列車は鉄橋を渡り、今度はサバンナに入った。
『只今サバンナに入りました。ここにはシマウマ、ライオン、ゾウ、キリンなどがいろいろと見えます』
「藤木君、色々いるわね」
「うん・・・」
(笹山さんも楽しんでいる・・・、よかった)
藤木は自分が決めたアトラクションで笹山が楽しそうな表情をしているのがとても嬉しかったのだった。
サバンナでシマウマやライオン、ゾウ、キリンを見ると、今度は山に入った。アナウンスが入る。
『続いて、こちらの山には、リスやクマ、シカ、イノシシが住んでいます』
リス、クマ、シカ、イノシシが見える。そして列車はトンネルに入る。
『たくさんの動物をご覧になりお楽しみいただけましたでしょうか?本日は列車にご乗車頂きましてありがとうございます。間もなく、列車は終点に到着いたします。ご利用ありがとうございました』
こうして列車は到着した。藤木も笹山も列車を降りる。藤木の父が次の予定を提案する。
「よーし、あの展望台に行こうか」
「うん、笹山さんもいいかい?」
「もちろん!」
一行は展望台に上った。そして、観覧車に乗ってから二度目となる静岡県の街々を見渡す。
(僕も笹山さんもこの場所に住んで会った・・・。もし笹山さんに会うことがなかったらどうなっていただろうか・・・?)
藤木は笹山のいない世界では自分は生きていけないかもしれないと思っていた。
「かず子、記念に藤木君と一緒に写真を撮らないかい?」
笹山の父が提案する。
「え?うん、そうね、藤木君、いいわよね?」
「え・・・?も、もちろんさ!」
笹山は藤木の手を取る。笹山の父は用意したカメラを持って二人を写そうとした。
「はい、笑って、笑って!!」
藤木と笹山は笑顔で写真を撮ってもらった。そして展望台を降りてショップへ向かう。
「藤木君、記念に何か買って行こう!」
「う、うん・・・」
ショップに着き、藤木は何を買おうか迷った。そして笹山が提案する。
「藤木君、あのストラップ買おうよ!」
「あ・・・そうだね」
藤木と笹山はストラップの種類が豊富で迷った。藤木は猿の形のストラップにしようと決めた。
「あ、藤木君はお猿さんにしたの?」
「う、うん」
「じゃあ、私は・・・」
笹山が手に取ったストラップは、鳥の形のストラップに決めた。その鳥は雀のように見えた。
「へえ、可愛い鳥だね」
「え?ありがとう・・・」
こうして二人はそれぞれが選んだストラップを購入した。また、各々の両親はお土産としてクッキーを買っていた。
「このストラップは私と藤木君が一緒に遊んた記念にしようね」
「うん・・・」
笹山が笑顔で言っていた。当然、藤木も笑顔でいられないわけがなかった。
「それじゃあ、帰りましょうか」
笹山の母が言う。
「うん、そうね」
こうして藤木の家族も笹山の家族も共に帰ることになった。そして分かれ道に差し掛かった時。
「それでは笹山さん、本日はありがとうございました」
藤木の母が挨拶した。笹山の母も礼をする。
「こちらこそウチの子と楽しませていただきましてありがとうございます。では失礼いたします」
その時、笹山が藤木に礼をする。
「藤木君、今日は楽しかったわ。ありがとう」
「え・・・?うん、僕も笹山さんと一緒で楽しかったよ。じゃあね」
「さようなら」
こうしてそれぞれの家族は別れた。そして藤木が両親に礼を言おうとする。
「あの、父さん、母さん」
「何だ?」
「今日はありがとう。父さんや母さんと一緒に楽しめて本当に楽しかったよ」
「茂・・・」
父も母も息子に楽しい思いをさせる事ができてよかったと心の中で感動するのだった。
後書き
次回:「来客」
リリィは城ヶ崎のピアノを聴きにまる子たちと城ヶ崎家に遊びに行っていた。そんな中、永沢が彼の弟・太郎を連れて現れ・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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