ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~
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侍娘-クリスティナ-part2/学院衝撃!侍娘はお姫様だった!
サイトの前に到着した途端、ルイズたちサイト大好き三人娘(仮名)は彼に向けてものすごい剣幕で問い詰めてきた。
「また尻尾を振ってたわねこの犬ううううう!!ご、ごごご…ご主人様が授業に出てる間に…で、ででで…デートだなんてずいぶんといい度胸じゃない!」
「おわ、ルイズ!?もう授業終わってたのか!?ってかデート!?なに言ってんだよ、俺はただ…」
突然のトリプルアタックに動揺させられ、いきなりルイズからあらぬ疑いをかけられたサイトは困惑ばかりを促された。だがそんな彼の状態をことごとく無視し、シエスタ、そしてアキナが順に問い詰めていく。
「なんですかサイトさん!その浮気現場を見つかったような言い方は!私が、久しぶりにサイトさんとのお時間を作ろうと虎視眈々と狙っていたのに見知らぬ女性と一緒にデートしてるなんて…酷い…」
「シエスタ、なに言ってんだよ!だから俺は彼女に…」
「なぁサイト…怒らないから正直にいいな?そうすりゃ今からあんたに下す罰ゲームを軽くてちょっとだけ痛い程度のものに差し替えてやるからよ…」
「はる…いや、アキナまで…ってか絶対怒ってるだろ!?」
サイトだけでなく、一緒にいたクリスも流石に三人のプレッシャーに気圧されそうになりつつも、彼に尋ねてきた。
「さ、サイト…彼女たちはいったい何者だ?」
(((よ…呼び捨て!?)))
すでに砕けた感じで呼び捨てにしてきているクリスに、またしても動揺を重ね、心の中まで見事にハモッた三人。
「いやその…俺の仲間、だよ」
(そりゃそうだけど、もっと他に言い方が…)
赤の他人と誤魔化されるよりマシだが、物足りなさを感じるコメントにルイズたちは不満そうに唇を尖らせる。
「もしや、この三人の誰かがお前の恋人だったりするのか?」
(な、なななななにを…!!?)
クリスの恥ずかしくも、サイトにはそう思われたいと願望を抱く三人は顔を赤らめる。
「そ、そういう訳じゃないって」
できればそうであってほしい、なんて内心では思ってたりするが、サイトは口に出さないようにした。
(こ、この犬め…)
(…サイトさんの朴念仁)
(このお約束な展開が腹立つ…!!)
が、ルイズたちにこの返答は不満でしかなかった。たとえ今がそうでないとしても、この場しのぎの嘘でも「その通りです」といわれたらどんなに嬉かったことか。その時の表情と怒りのオーラに、彼女たちが自分に対して負のオーラに満ちた視線を向けていることに気づいたサイトは、顔を青くしてどうにかこの身に覚えのない危機を脱する手だてはないにか思案する。走って逃げ出そうとも思ったが、彼女たちのことだ。逃がす気など更々ないだろう。
そんなとき、サイトのビデオシーバーから着信音が鳴り出した。
「は、はい!サイトです!」
逃げ込むようにサイトはそれを開いて応対する。
画面内に姿を見せたのは、アンリエッタだった。シュウ以外でこの回線を使えるのは国の研究素材としてジャンバードを預かっている彼女だけだ。当然、ジャンバードのコクピットからサイトに話しかけている。
『アンリエッタです。突然の連絡でごめんなさい。今お時間いいかしら?』
「ひ、姫様!?」
ルイズも突然のアンリエッタからの通信に驚きを見せた。
『…あの、どうかなされたのですか?妙に焦っておられるようですが…もしや、そちらで何か!?』
「い、いえ!ルイズが勝手に機嫌を損ねちゃっただけですから!」
「ちょっと!それじゃ私が悪いみたいじゃない!あんたがで、デデデデートなんかしてたからでしょ!」
そうだそうだと言わんばかりにシエスタとアキナも同意する。ひどい言い草だ、とサイトは愚痴をこぼしたくなった。
『あ、あら…そうだったんですか。サイトさんが焦ってるときって、何か災いが起こっていることが多いですからてっきり…』
まるで自分が慌てる度に怪獣災害でも起きているかのような言い方だ。当然アンリエッタはそのつもり言ったわけではないと思うが。アンリエッタまでルイズらの言葉を真に受けている。
だがそれ以上に、全く別のところに衝撃を受けた者がいた。
「サイト、どういうことだ!?アンリエッタがなぜそんな小さな箱の中から話しかけているのだ!?も、もしや…お前妖術師だったのか!?サムライだったというのは嘘だったのか!?」
「…はい?」
まるで漫画に登場する、「テレビの中に人が!?」と驚く田舎出身の世間知らずキャラのような一言に、サイトたちは目を丸くする。
誤解が誤解を呼び、それどころかさらなる誤解を呼び続ける状況が続いていき、サイトの精神はさらにすり減らされてしまうのだった。
サイト、今度こそルイズらに説明中……
「じゃあクリスは、あくまでサイトに学院の案内を申し込んだだけってこと?」
「さっきから言ってるだろ…」
げんなりした様子でサイトはうなだれる。彼女たちの勘違いで、研ぎ澄まされた刃のような視線で突き刺され続けかなり疲れきった様子だ。
『やれやれ、こういうとこ見るたびに、俺なんでこいつと合体してんだろって思うな…』
『…呆れるくらいなら助けろよ』
頭の中から聞こえてきたゼロの声に、猫の手も借りたい思いのサイトが助力を申し出るが、ゼロからの態度はそっけない。
『知るかよ。俺がどう力を貸すってんだ。お前の問題だからお前で解決しとけ。親父も、痴話喧嘩は犬も食わないって言葉を地球で学んだとか言ってたからな』
お前もこういうときは薄情だよな…とサイトはゼロに悪態をつかずに要られなくなった。
っていうか、ウルトラセブンさんよ…地球で何を学んできたんだよ。
一方でアンリエッタとクリスは談笑していた。
『無事に魔法学院にくることができたみたいね、クリス』
「本当に、アンリエッタがトリスタニアの敷地内からこちらに話しているのか?本当に妖術を使っているわけではないのだな?」
「ああ…これは遠くの人間と会話が可能な機械なんだよ」
クリスがいまだに目を丸くしたままサイトたちに尋ねる。実際はシエスタも、アンリエッタという国の頂点の姿と声をこんな時と場所で目の当たりにしたことで驚いていたりする。
「まさか、こんなマジックアイテムがあるとはな…」
『え、えっと…クリス、ルイズたちとは仲良くなれたかしら?サイトさんとは特に会いたがっていたみたいだけど』
少々混乱気味の空気を消そうと、アンリエッタが話を切り替えてきた。
「あ、ああ。アンリエッタ、ルイズとはたった今会ったばかりだが、サイトは思った通りだった。私が会いたいと思えるだけのサムライだったよ」
『それは良かったわ。ルイズも私にとって大切なお友達だから、是非仲良くしてあげて』
「あぁ、もちろんだ」
画面越しに互いに笑みを見せ合うアンリエッタとクリス。女王と奇妙な格好の侍娘が互いに砕けた感じで語り合っている様に、特に貴族でもあるルイズが疑問を抱いてクリスに尋ねてみた。
「ね、ねぇクリス」
「ん?なんだルイズ」
「あなた、姫様とどんな関係なの?」
「あぁ…そうか、まだ皆には言っていなかったな」
クリスはサイトたち全員を一望できるように向き直り、今度はサイト以外にも自分が何者なのかを伝えた。
「改めて自己紹介しよう。私の名はクリスティナ・ヴァーサ・リクセル・オクセンシェルナ。このトリステインへ留学に来た、オクセンシェルナ王国の王女だ」
「…え…?」
えええええええええええええええ!!!?
予想外の答えに、全員が絶叫した。
突然学院を訪れたオクセンシェルナの姫であるサムライガール、クリス。
彼女の来訪をきっかけに、サイトたちの非現実的な日常はまたひとつ、新たな波乱を呼ぶことになる。
オクセンシェルナ。ハルケギニア大陸の中でも、トリステインから結構遠い地に位置している小国である。トリステインとも親交のある国で、なんと王女でもあるクリスはそんな遠い国からはるばる留学生として来訪してきたのだ。その関係ゆえに、アンリエッタとクリスは互いに古くからの友人でもあったのである。
だが、留学だけが彼女がトリステインに来た目的ではなかった。
「トリステインに来たのには、この国をここしばらくの間に襲撃した怪獣や異星人たちのことを知るためだ。オクセンシェルナでは未だその脅威は見られないが、いつ忍び寄るかわからない。私は国の代表としても、本国に怪獣や星人の脅威を伝えなければならないと思ってこの国に来たのだ」
「でもそれならわざわざ姫である君を寄越す必要があるのか?」
別に王族である彼女自身がくる必要なんてない。別に信頼できる部下にでも頼んでしまえばいいのではないか?そう思ってシュウはクリスに尋ねた。
「逆に王族である私自身が赴くことで、他国へ我が国の姿勢を示すためだ。これはもうひとつの理由とも関係している」
「もうひとつの理由?」
アキナが首を傾げる。
「このトリステインヘ支援を行うためだ。
トリステインとオクセンシェルナは古くから友好のある国同士である反面、互いが大陸の遠い場所に位置している故、手間も時間も大きくかかる。よって、トリステインと同盟関係にあるゲルマニアを介して微力ながらトリステインへの支援を行う予定だ」
それに続けてアンリエッタがビデオシーバーから説明を繋げてきた。
『最近のゲルマニアは静観を貫くつもりだったようですが、オクセンシェルナが発破をかけてくれたお陰で我が国への援助を以前よりも積極的に行ってくれるようになりました』
「発破をかけたって、何を言ったのですか?」
『えぇ、トリステインヘ支援を行わなかったら、この先出現する怪獣たちの情報をゲルマニアには届けてもらえなくなるかもしれませんよ、と伝えたんです。彼らは強大な軍事力を持つ割には怪獣共との戦いを渋っていた。無理もないかもしれませんが、それでは貴族としての面目が立たないでしょう?』
ルイズからの問いに対して、アンリエッタは笑顔で答えた。その満面の笑みから冷酷なことを口にしている。いくら怪獣や星人といった共通の脅威を持つ人間同士とはいえ、ゲルマニアが未だにトリステインとの同盟を持っておきながらこれまで積極的な支援をしてこなかった。国の存亡を賭けた脅迫を仕掛けるとは、見かけによらずとんでもないことを言ってのけたものである。
「しかし本格的支援が始まるまで時間がある。せっかくの機会だからそれまでこの学院でご教授願おうと思ったのだ。話はすでにオスマン学院長たちにも通してある」
「そ、そんな…王族自ら他の貴族と同じ席で学業に励むなんて聞いたことないわ」
「そんなに変なのか?王族だって勉強しないと政治できないだろ?」
ルイズのリアクションが大きいことに、サイトはよくわからずに首を傾げながらルイズに言う。
「あんたわかってないわ。王族が他の貴族と一緒に勉強するなんて普通じゃないのよ。寧ろ他の者に示しがつかない印象を抱かれるわ」
そう、王族というものは常に誇り高く孤高でなければならない。だから自分たちより下の存在である者たちとの接触はあまり多くないのだ。余計なことを吹き込まれることだってある。だからこそ王族として最も望ましい姿を、他の貴族たちに示すことができる。この考えが古き伝統を重んじるトリステインでの考えだった。
『ルイズ、そのように言っては、彼女がせっかくこの学院に来たことさえも否定したようなものですよ?』
「あ…!す、すみませんクリスティナ殿下!け、決してそのようにいうつもりでは…」
ビデオシーバーから、アンリエッタのがっかりした様子の声が聞こえてきて、ルイズは慌てふためいた。
「ふふ。いいんだ。お前はアンリエッタの言うとおり礼儀を重んじる真面目な奴だな。
それと、私のことは王女としてではなく、ただのクリスとして接してくれ」
「は、はい。わかりま…いえ、わかったわクリス」
「うむ、やはりこれが一番いい」
ルイズも躊躇いがちではあったが、ちゃんと自分のことを愛称で呼んでくれたことにクリスは満足していた。アンリエッタの映像越しに、自分の数少ない二人の友人が仲良くなれたことで笑顔を見せていた。
「明日からしばらく、よろしく頼むぞ。
特にサイト、お前とは同じサムライ同士だ。これからも仲良くしたい」
「へ?」
王女とは思えないほどに、さも当たり前のようにクリスは言ってのけたが、それ以上に屈託のない穢れなき笑みを見せ、サイトをやたらと名指しし続けているこの状況の方が、ルイズたちに衝撃を与えていた。
その後のサイトは、いつものことのごとく、ルイズたちから、自分たちが目を離している間に、クリスとどこまで仲良くしていたのかを問い詰められたとか。
…これ以上詳細に説明すると面倒なので、勝手ながら割愛さえていただく。
一方そのころ…
M78星雲光の国。
この日もまた、光の国は平和だった。毎日一日中、その光は国の人々の心までも照らし続けている。
だが、彼らは忘れていない。自分たちがこうして生きている間もまた、悪しき者たちの計画が進んでいる事を。そしてその分だけ、自分たちは悪を倒すために試行錯誤しなければならないことを。
光の国の『宇宙警備隊本部』へ、一つの赤い光が舞い降りてきた。ウルトラマンゼロの師である紅の獅子、ウルトラマンレオである。そんな彼を、ウルトラセブンが迎えに来た。
戻ってきたレオは、セブンと握手を交わした。
「セブン兄さん、ハルケギニアの調査を終えました。ついでに、前から頼まれていたものの回収も」
「ありがとう、レオ。どうだ?例の星…惑星エスメラルダは?」
「緑の溢れる国、人の幸せにあふれた都市、灼熱の砂漠…驚くほどに環境は地球と同じでした。人間やそれに近しい種族の知的生命体たちも、それぞれ独自の文明と文化を栄えさせています」
ゼロへの二度に渡る救援と、ハルケギニア大陸の存在する惑星エスメラルダ。その星の調査とその他の頼みごとを、ボーグ星人と戦うゼロへの救援を終わらせたレオは終わらせて光の国へと帰還したのである。
「ただ…地球と比べると、とてもとは言いませんが、あまり技術・文明力は高くないようです。故に侵略者に隙を与え、怪獣相手への対処も難しい状態でした。魔法…と呼ばれる地球人にはない特殊能力を持ち得てはいましたが、地球防衛軍の持つ防衛兵器と比べると、威力の桁が違いすぎます。しかも使うことが可能な人間も限定されていました」
「そうか…」
「侵略者や怪獣に備え、エスメラルダの大気圏外でパトロールを行うべきでしょうか?あいつを甘やかしたいわけではありませんが、ゼロたちの負担も減るでしょう」
話を聞き、地球と同様に観察しつつ、エスメラルダの知的生命体たちが自らの力のみで撃退できるまで、自分たちも陰ながら力を貸すべきではないだろうか。そう思ったが、セブンから首を横に振られた。
「…いいや、それではかえって侵略者たちにあの惑星をより広範囲に知れ渡らせてしまう。まだエスメラルダのことを知らない星人たちもいるはずだ。その中で悪しき者がいたら、格好の的にされてしまう。万が一の時が来るその時までは、ゼロたちに任せよう」
「なるほど…」
確かに、自分たち宇宙警備隊は侵略を目論む異星人や、知性を持った邪悪な怪獣たちに警戒されている。故に、エスメラルダ人たちを利用した狡猾な罠を張ってあの星を混乱に陥れようとする可能性も否定できなかった。
「しかし、度々ゼロの面倒の大半をお前に押し付けることになって済まないな」
「いえ、これしきのこと。あなたから受けた恩は返しきれないものです」
かつてセブンが変身不能に追い込まれた時、彼に代わってレオがセブンからの手ほどきを受けながら、地球を守っていた。その縁もあって二人は固い信頼と絆で結ばれている。
「それに、ゼロに何かを…という点については、今度はあなたの番でもある。そのために、俺にこれを探させていたのでしょう?」
「ああ…」
セブンは、レオが差し出したエメラルドに光る鉱石を受け取った。この鉱石は、レオがハルケギニア内にある、とある鉱山から回収したものだった。
「予想以上に高い純度のエネルギーを秘めた鉱石だな。この鉱石さえあれば、ゼロ専用のウルトラブレスレットを作れる。あいつはウルトラの父たちでさえも驚かせる、ずば抜けた可能性を秘めている。その成長に、通常のブレスレットでは耐えきれないかもしれない。そのためにこの『エメラル鉱石』が必要だったんだ」
「ゼロの成長は、俺たちでも目を見張るものがありますからね」
セブンからの頼みで、光の国を追放されていたゼロを引き取ったレオ。荒れていた頃から彼の面倒を見ていたこともあり、彼が引き取った当初と比べてどれほどの可能性を見せてきたのか、傍にいたこともあってすぐに察していた。
ふと、ゼロのことについて触れたことで、レオはあることを思い出した。
「ゼロといえば、少し気になることがありました。あいつの傍にいるウルトラマンについて…」
「ゼロの傍にいるウルトラマン?…ネクサス、という戦士に変身する若者のことか?」
「はい」
セブンからの問いにレオは頷いた。
「以前、ファウストという、我々ウルトラ一族とよく似た闇の戦士と戦った時でした。あの時、あの邪悪な空間の影響によって、俺とゼロは本来よりもパワーが落ちてしまっていました。ですが…」
レコンキスタの侵攻を受けたタルブ村にて、なりゆきなところもあったが、まだテクターギアが取れていなかった頃のゼロと共に、彼とも共闘した。ダークフィールドを展開され、敵も自分たちよりも数が多かったこともあって苦戦を強いられたが、ルイズたちも頑張ってくれていたこともあって最後に勝利することができた。
光の国でも聞いたこともないウルトラマン…ネクサス。そして自分たちとよく似た黒い巨人、ファウスト。レオも気にならないはずがなかった。
だが、レオがネクサスを気にしていたのはそれだけではなかった。
「あの邪悪な空間の中、彼だけはパワーダウンしているようには見えませんでした。それどころか、逆に力が上がっているように見えたのです。彼も苦戦していたので、気のせいかとも思いましたが…」
「………」
レオはあまり嘘を言うタイプではない。大事なことならなおさらだ。セブンは今のレオからの報告に、腕を組んで考え込む。
「さらに、この星へ帰還する途中、我々の力と似た気配も二つ感じました。何かあの星でかつてないほどのことが起こる…嫌な予感がしてならないのです」
さらに続けて、新たに気になったことを告げたレオ。内心では、ゼロ(正確にはサイト)の傍にいる、あの地球人の少女ハルナについても、彼は警戒心を持っていた。ちなみにその二つの光の正体が、別次元のウルトラ戦士であるダイナとコスモスだったこと、そのハルナの正体がファウストだったが、彼女を操っていた黒幕が敗れたことで事なきを得ていたのを、まだ知る由もなかった。とはいえ、正体がわからない以上、警戒するには十分な理由だった。現にこの時にも、まだ闇の巨人たち以外にも…あの星を蝕もうとする邪悪な影がうごめいていたのだから。
「…わかった。すぐにブレスレットの開発を急ごう。万が一ゼロに何かあっては…。レオ、今ゾフィーたちがギガバトルナイザーの調査任務に向かっている。今のところ何も進展がない状態だが…回収した奴が何者なのか、それだけでも知っておきたい。彼らと合流して任務に助力してほしい」
「了解しました。では」
レオはセブンからの頼みを聞き入れ、すぐに宇宙警備隊本部から飛び立った。レオを見送った後、セブンはレオから受け取ったエメラル鉱石を見つめる。
思えば、ゼロに対して父親らしいことを直接してあげたことがなかった。
6000年前、かつて地球人の恋人ができるよりもずっと昔…自分にはブルー族出身の妻がいた。しかし同年、光の国へ復讐のために戻ってきた、あの『ウルトラマンベリアル』によって妻は死んだ。生まれたばかりの息子も、その時一緒に死んだとばかり思っていた。そのためゼロを知ったのも、息子としてではなく、戦災孤児として。親もおらずがむしゃらに自分の溢れんばかりの才能と力を磨く彼の姿を、息子だと知っていたわけではないのに、放っておけなかった。一緒に生きるはずだった妻や息子、ゴース星人とパンドンとの戦いまで独自に地球を守っていた頃の恋人との時間を、埋めたかったのかもしれない。
その時のゼロが、本当に自分の息子だと知ったのは、ゼロがプラズマスパークコアに手を出そうとした直前だった。ゼロと自分の関係のことを知った瞬間は、共に生きていたいと渇望したが、それもできなかった。しかしゼロがあんな風になったのは自分の責任だ。親子として離れていた時の時間は、もう戻らない。亡き妻、そしてアンヌとの時間も…。
でも、それでも息子に対して、親らしいことをしてあげたい。
今から作るブレスレットは星人と戦うための武器だ。できればそういったものじゃないものをプレゼントしてあげたかったが、今は邪悪な手の者たちが宇宙に蔓延っており、ゼロもまたウルトラ戦士として彼らと戦うことを運命づけられている。なら少しでも、戦闘に邪魔にならない程度に、若者らしくおしゃれな形に仕上げてやろう。
(待っていてくれ、ゼロ)
今から作るウルトラブレスレットが、息子の力になってくれるように願いながら、さっそくセブンはブレスレットの制作に入った。
後書き
ゼロがメビウスが地球を去って数年後の時代に存在しているため、本作ではセブンにも設定面で手が加えられてます。
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