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とある3年4組の卑怯者

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32 遊園地

 
前書き
登場人物のセリフの特徴 その1
藤木・笹山さん・永沢:特になし
リリィ:外来語を漢字でルビを片仮名で表記
城ヶ崎さん:興奮するとき、語尾に小さい「っ」が入る 

 
 夜、藤木家では藤木の父と母が話をしていた。
「なあ、お前、今日の新聞に遊園地の招待券が折り込んであったんだ。いつも仕事で遅くなるから茂も家では寂しく感じているだろう。だから今度の日曜、家族で遊園地に行こうと思っているんだが、どうだ?」
「そうですね、私もたまには茂に家族で一緒にどこかへ行くという事させてあげたいし、そうしましょうかね」
「よし、茂にも伝えるか」

 朝、藤木は朝御飯の時に母に声をかけられた。
「茂、今度の日曜皆で遊園地に行こうと思っているんだけど、行くかい?」
「え、いいのかい?」
「うん、お前にいつも家で独りにさせているからたまには母さんも父さんと一緒にどこかへ行くって事させてあげようと思ってね。それに昨日の新聞に遊園地の招待券が入っていたし、使う方が得だからね」
「うん、母さん、ありがとう・・・」
 藤木は少し喜んだ。

 こうして藤木家は静岡県内のとある遊園地に行くことになった。
「ここが遊園地か・・・」
 藤木は遊園地の規模の大きさに驚いた。
「さ、入るぞ、茂」
「うん・・・」
 藤木は両親と共に入口の門をくぐった。藤木はいろいろアトラクションが存在していて、どれから楽しもうか迷ってしまった。
「あら、あのステージで、色んなショーがあるってね」
「そうだね、行ってみるか」
 母が興味を持ったようなので、一家はステージで行われるショーを鑑賞することにした。
 
 ステージではちょうどショーが始まるところだった。いろいろなことをやる予定だった。バンドによる演奏、手品、パントマイム、大道芸などが行われた。藤木もその両親も夢中で様々なショーにのめりこんでいた。
「それじゃあ、アトラクションといくか」
 藤木の父はそう言ってステージを出ようとした。母も藤木もついて行こうとする。
「そうね、茂、お前が乗りたいもの何でもいいよ」
「そういわれると迷うなあ・・・」
 ステージを出た時、横から聞き覚えのある声がした。
「あ、藤木君!」
 藤木は声のした方向を振り向いた。笹山が彼女の両親と共にいた。
「さ、笹山さん・・・!?こんにちは」
 藤木は笹山とその両親に挨拶をした。
「藤木君も来てたの?」
「うん、遊園地の招待券が届いたからね」
「そうなんだ。ウチにも来たの。そうだ、せっかくだから一緒に見て回ろうよ」
「え、いいのかい?」
「うん、藤木君と会えて嬉しいもん」
「あ、ありがとう、父さん、母さん、いいかい?」
「ああ、いいぞ」
 藤木の父が答えた。こうして藤木の家族と笹山の家族、共に行動する事になった。

「藤木君、あのブランコ乗ろうよ!」
「うん、いいよ・・・」
 藤木は笹山との行動で嬉しくもあるが、緊張していた。二人はブランコに乗る。
「父さんと母さんは乗るかい?」
「わ、私たちはいいよ。二人で楽しんできなよ。ねえ、笹山さん?」
 藤木の母は笹山の両親に振る。
「そ、そうですね」
 笹山の母が答えた。
(もしかして、高いところが怖いんじゃ・・・?)
 藤木はそう考えてしまった。
 藤木と笹山はブランコに乗って、ワイヤーに掴まった。ブランコが空中に浮かび上がる。藤木は落ちそうでやや恐怖感はあったが、空を飛んでいるようで楽しむ事ができた。やがてブランコが段々と地上に降下していく。藤木と笹山はブランコから降りた。
「藤木君、もしかして怖かった?」
「あ、いや、そんなことないさ!空を飛んでいるみたいで楽しかったよ!」
 内心では怖かったのに藤木は嘘をついてしまった。
「そうなんだ、私は落ちそうでちょっと怖かったけど、高いところから色んなとこ見渡せて楽しかったわ」
「はは、そうだね・・・」
 一行はドロップタワーに乗ることになった。藤木は笹山の隣に座った。
 座席部分が30m上の最上部までゆっくり上昇して、その後、勢いよく降下を繰り返した。全員悲鳴をあげずにはいられなかった。
 藤木は上下を行ったり来たりで、心臓に悪く思ってしまった。やっと降りられると、藤木の父が恐ろしそく感じるような表情をした。
「やれ、寿命が縮むと思ったよ」
「父さん、大袈裟だよ・・・」
 それぞれの両親は今度は気を休める場所がいいと考え、観覧車に乗る事にした。
(笹山さんと二人で観覧車・・・、あ~、ワクワクするなあ)
 藤木は笹山と二人きりでゴンドラに乗り、恋人同士の一時のようなことを楽しめると思った。しかし、藤木と笹山はそれぞれの両親と乗ることが決まり、妄想通りの事はできなかった。
「藤木君、また後でね」
「あ、うん・・・」
(笹山さんと一緒に乗りたかったのに・・・)
 藤木はやや落ち込んだ。相変わらず運が悪い男である。そして家族で観覧車に乗った。ゴンドラは上へ上へと上がっていく。
「茂、向こうが清水だ。あっちは富士山も見えるぞ」
 藤木の父が説明した。
「本当だ。こっちは海も見えるよ」
「そっちは焼津の漁港だね」
 藤木母が言った。
 12分間、観覧車を楽しんだ。笹山と同乗する事は叶わなかったが、藤木は家ではなかなか味わえない、両親と共に一時を過ごすことができたのでそれでも満足だった。
「父さん、母さん、一緒に乗れて楽しかったよ。ありがとう」
「茂・・・」
 藤木の両親は息子・茂から観覧車に同乗したこと感謝され、ありがたく思い、涙が出てしまいそうになった。
 笹山の家族と再合流し、メリーゴーランドを楽しむこととした。藤木と笹山は馬が隣同士になった。回転している間、笹山は笑顔で満喫しているようだった。藤木は笹山の顔を盗み見る。自分も笹山と同じくらい、いや、それ以上かもしれないくらい、楽しんだ。
 次に家族で飛行船に乗って旋回し、ウォーターライドを楽しんだ。ウォーターライドは笹山と二人で乗ることになった。藤木はドキドキした。
「笹山さん、ドキドキするね」
「え、ええ、そうね」
 そして、二人は思いきり悲鳴を挙げた。終わった後、藤木は笹山から話しかけられた。
「藤木君と一緒に乗って楽しかったわ」
「ぼ、僕も笹山さんと一緒になれて、楽しめたよ」
 藤木も礼をしたくなった。笹山の父が話しかけてくる。
「かず子、藤木君。お腹空いただろう。それそれ昼ご飯にしようか」
「そうね、そうしよう!」
「う、うん・・・」
 こうして、一行は園内のレストランへと足を運んだ。 
 

 
後書き
次回:「記念」
 遊園地と満喫する藤木と笹山。笹山の父は二人の記念写真を撮ることを提案し、笹山も藤木と二人で何か記念の土産を買う事を考え・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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