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とある3年4組の卑怯者

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29 避球(ドッジボール)

 
前書き
 転校生・堀こずえの歓迎会代わりとして休み時間にドッジボールを行うことになったみどりのクラス。みどりは堀に、クラスの皆に迷惑かけない為に絶対に泣かないと決心する・・・!! 

 
 ドッジボールが始まった。みどりは堀と同じチームになった。
(堀さんと同じチームになった・・・。嬉しい・・・)
 みどりは堀に、そして皆に迷惑をかけないようにと思い泣かないようにと決意した。

 相手側が先にボールを投げた。一人の男子がボールをぶつけられる。当てられた男子は外野へ出た。それをみどりのチームの女子が拾い、相手の男子の足元を狙って投げ、アウトにした。

 アウトになったり、ボールが外野へ回ったり、外野が相手をアウトにして内野へ復活したりと続き、堀にボールが回ってきた。堀がボールを投げる。その球は電車が走るように速く見え、相手の男子をアウトにした。
(ほ、堀さん、かっこいい・・・)
 みどりは堀の姿にに見とれてしまった。ところが、みどりが相手の女子が投げたボールに当てられてしまった。
「あ・・・」
 みどりは泣きそうになってしまった。が、自分が決意した皆に迷惑をかけないために泣かないということを守ろうとして泣くのをこらえて外野へ向かう。
(絶対に泣いちゃいけない、泣いちゃいけない・・・)
 しかし、目に涙があふれそうになる。それでもみどりは我慢した。そして、そのボールは相手チームの外野に転がり、内野にパスをする。それを堀のいるチームに投げるが、一人の男子が、それを何とか受け止める。それを相手に当てようとするも、よけられて、ボールは外野へ向かった。みどりの隣にいた女子がボールを取り、パスをする。それを堀が取る。堀が投げる。みどりは堀を応援していた。
(堀さん・・・頑張って!)
 堀が投げる。堀が投げたボールを相手チームの男子が取ろうとして当たってしまった。
(す、すごい・・・)
 みどりは再び見とれた。その時、隣にいる女子に呼び掛けられて現実に戻った。
「吉川さん、ボール来てるよ!」
「えっ?」
 みどりはボールが近くで転がっているのに気づいていなかった。
「あ、ごめんなさい・・・」
 みどりは慌ててボールを取りに行く。
(どうしよう?堀さんにパスしようかな?それとも自分で頑張って当てようかな?)
 みどりはどうしようか考えた。
(堀さんにパスすればまたアウトにしてくれるかもしれない・・・。よし、堀さんにパスしよう!)
 みどりは堀にパスしようとしてボールを投げた。が、簡単に相手チームの男子に取られてしまった。
(ええ、そんな・・・)
 みどりは再び泣きそうになる。そして、その男子が奪ったボールは堀を襲う。堀はよけきれずに足に当てられた。
(あ・・・、あ・・・)
 堀が外野に行く。みどりは堀の元に向かう。
「堀さん、ごめんなさい、私のせいで・・・」
「いいのよ。ゲームなんだから」
「は、はい・・・」
 みどりは堀に慰められた。そして己の決意を思い出し、涙を何とかこらえた。
「おい、おい、二人とも、ゲーム中だぞ」
 同じ外野にいる男子が忠告した。
「あ、ごめんね」
「すみません」
 少しして授業開始のチャイムが鳴る。
「ああ、終わっちまったか」
「堀、お前のシュートすごいカッコよかったぜ!」
 同じチームだった男子が堀を賞賛していた。
「ありがとう。私も転校前はよくやっててね、ドッジボール好きなの」
 みどりは気軽に話しかけられる堀が羨ましかった。その一方で自分はなかなかその輪に入れなかった。
 
 そして教室に入り席に着く。みどりは再び堀に謝ろうとした。
「あの、堀さん。さっきはごめんなさい。私本当は堀さんにパスしようとして、そうしたらボールを取られてしまったんです・・・」
「吉川さん、もういいって。ありがとう」
「あ、はい・・・」
「吉川さんとドッジボールできて、楽しかったわ」
 みどりはえっ、と感じた。堀がみどりにお礼をしている。みどりは今度は嬉しくてしょうがなかった。
 
 やがて給食の時間になった。みどりはいつもなら独りで黙々と食べるのだが、今日は違う。隣に堀がいる。みどりは勇気を持って堀に話しかけた。
「あ、あの・・・堀さん・・・」
「何?」
「私、堀さんと一緒に給食食べられるなんて、嬉しいです」
「え、そうなの?」
「ええ、私学校に友達いないんで、ずっと独りだったんです・・・」
「そうだったの・・・」
 堀が気の毒そうな表情をしていた。しかし、すぐに笑顔に変わる。
「なら私が吉川さんの友達になるわ」
「え?い、いいんですか・・・?わ、私で・・・」
「もちろん、私もクラスの皆と友達になりたいもの!もちろん吉川さんともね!」
「あ、ありがとうございます・・・」
 みどりは堀と友達になれたことが嬉しかった。みどりは今日は堀にいろいろと親切にしてもらい、学校生活で最も楽しい日と感じるのであった。

 放課後になった。クラスの女子たちが堀に話しかけ、一緒に帰ろうと誘う。みどりは堀と一緒に帰りたいと思った。今まで独りで帰る毎日だったが、今日ぐらいは友達で帰るという事をしたい。彼女はそう思っていた。
「あ、あの・・・!」
「え?」
「わ・・・私も一緒に帰ってよろしいでしょうか?」
 みどりは思い切って堀たちに声をかけた。
「もちろんいいわよ」
 堀は一切の反対もなく承知した。
「吉川さんも一緒でいいかな?」
「ま、まあ、いいけど・・・」
 女子の一人が応答した。

 みどりは堀と共に下校するという事は出来たが、慣れない集団での下校で堀になかなか話しかけることはできなかった。そして、堀と道が別れる時・・・。
「私こっちの道なの、ここからさらに向こうの角を左に曲がって二軒目よ」
「へえ、私の家と近いわね!」
「今度遊びに行ってもいいかしら?」
「もちろん。是非来てね!」
「ありがとう!」
 クラスの女子一人と共に自分の家へと向かうことになる堀。みどりが別れを寂しく思う。そのとき、堀がみどりに話しかける。
「吉川さん、さようなら。吉川さんもよかったら私の家に遊びに来てね」
「え、あ、ありがとうございます!さようなら・・・」
 堀が去っていく。みどりは自分と家が同じ方向の女子二人と帰る。その女子が話しかける。
「吉川さん、堀さんと仲いいのね」
「今日のドッジボールも泣かないようにしてたわよね。いつもならすぐ大泣きするのに・・・」
「いえ・・・、私は堀さんと一緒に遊びたかったからだけですから・・・。それに私友達いませんし・・・」
「へえ、まあ、その泣き虫のとこ直したらもっと友達になれるかもね」
 みどりは二人の女子と別れた。みどりは顔が沈んでいた。
(私は泣き虫か・・・)
 みどりは泣き虫をどうしても治したいと思った。 
 

 
後書き
次回:「泣虫」
 みどりは自分の性格を顧みる。自分は泣き虫でそれによって多くの人々に迷惑をかけていた事。そしてその泣き虫を治したいという一心で堀と友達になりたいと思う気持ちが強まり・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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