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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  復活の怪人



これまでのあらすじ

アルカンシェルの砲撃を、どうにかして凌いだ蒔風たち。
しかし、一発を防いだだけでは意味がない。

翼人も、そして翼刀も力尽きた中、「EARTH」は数名のメンバーを時空管理局戦艦クラウディアへと搭乗する。

向かうは、大気圏外に浮遊する戦艦エスティア。
目的はアルカンシェル第二砲の阻止。


メンバーが即座に動き出していく中、外では倒れて動けない蒔風達が転がっていた。


その目の前に現れたのは、新たなる仮面ライダー。
フォーゼこと、如月弦太朗であった―――――



------------------------------------------------------------


仮面ライダーフォーゼ、如月弦太朗は現役高校生である。
彼は学園と人類の平和を守る仮面ライダーだ。

戦いの終わった現在は、天の川高校に通いながら将来の夢へと突っ走っている。



彼の夢。それは、再び学校という場で生きていくこと。
つまりは教員だ。

そう思って意気込み早速教員免許を取りに試験会場に向かった彼だが、まずその前に研修などが必要だとのことで追い返されてしまったのだ。

前準備が必要だと知った彼がしょげ返っていると、特別枠で試験を受けていた人物がいるらしいと言うことを聞いた。

それを友人に調べてもらうと、その女性は「EARTH」からの推薦で来たらしい。

「そうか!!「EARTH」ってとこの奴とダチになればいいのか!!」

そう知るやいなや、彼は「EARTH」へと向かった。


とはいえ、遠い。
彼のバイク「マシンマッシグラー」をフルで飛ばして、ようやくこの時間に到着したのだ。

彼の一番の友人は「時間ぐらい調べろ」とあきれていたらしい。

訪問は明日だ、と一端その場を引こうとした彼だが、この騒ぎを聞きつけ、何とかここまでで侵入してきた、ということだ。




「ってことで!俺も行きますんで!!よろしく!!」

「お前誰だ!?」

蒔風の言葉に従ってクラウディアまで来た弦太朗だが、加賀美にいきなり突っ込まれてしまった。
が、その後翔太郎やフィリップ、映司の話を聞いて一応の信頼を手に入れる。


「あんたも仮面ライダーっすか!?」

「へぇ・・・高校生が・・・・」

「ああ!!俺は仮面ライダーフォーゼ、如月弦太朗っす!!よろしく先輩!!」

「せ、先輩?いやぁ、照れるなぁ!!」

先輩と言われて、一発で気を良くする加賀美。
扱いやすい男である。


「ともあれ、このメンバーで今すぐエスティアへと向かう!!」

「制限時間は残り17分」

「目的は、あの宇宙船を落す!!だな!!」


目的の確認をして、即座に発進するクラウディア。
向かう「EARTH」のメンバーは長門有希、鹿目まどか、天道総司、加賀美新。そして、如月弦太朗の五人。



ブースターを全開にし、上昇の勢いへと乗っていく戦艦。
この調子ならば、エスティア到着まで3分ほどだろう。

しかし、未だ地上に存在するキャスターがそれを許すはずもない。



ズ―――――ゴンッッ!!!


襲い掛かる衝撃。
巨大な戦艦であるクラウディアが、その驚異の雷によって激震した。



「キャスター!!!」

「くっ、やはり!!」

「なんだ!?」

上昇を始めたクラウディアに向け、紫の雷撃を打ち据えるのは、二人の娘と交戦しながらもそちらへと牽制を忘れないプレシア・テスタロッサだ。
フェイトとアリシアも攻撃を放ち続けるが、彼女はその全てを防壁で受けて流している。


プレシア・テスタロッサのデバイスは鞭だ。
基本的にはバラ鞭と呼ばれる短い形状だが、デバイスによる物理的な攻撃を行う際には一本鞭へと形状を変える。


しかし、どちらにしてもフェイトやアリシアの攻撃を受け止められるようなものではない。
二人に近づかれて猛攻を受けでもしたら、とてもではないが捌ききることは不可能だろう。

ましてや、二人はすでに管理局最速の雷神となりつつある姉妹。
接近戦への持ち込みは、あまりにも容易。


「―――――のはずだったんだけど」

「母さんってこんなに強かったんだ」

アリシアは研究職の、フェイトは病弱なプレシアしか知らないのだから無理もない。

どう見ても「術士」タイプの魔導師であると思い、接近戦へと持ち込めば勝利は確実。しかもこちらは二人ががり。スピードにはかなりの自信を持っていた。

だが、その肝心の「接近戦に持ち込めない」という状況では、いくらこの二人も分が悪かった――――



「ち、近づけない!!」

「こっちはソニックどころか真ソニックまで使ってるのに!?」

彼女たちの高速移動「真ソニックフォーム」は、かつて蒔風が埋め込んだ、加速開翼の技術を転用した「開翼システム」によってバリアジャケットの排除はなくなっている。もちろん、スピードも落ちることはない。
その開翼システムは、ブースターから発せられる加速の力を全身に回してそれを以ってして「加速世界」へと侵入する物だ。

だが、彼女たちのものは「高速移動できる」というよりは「高速での動作が出来る」と言った方が、厳密には正しい代物だ。
つまり、そのスピードのまま動き続けるには限度がある、ということ。

そしてその動きはどれだけ気を付けても、空気との摩擦による熱が発生し、どうやってもそれからは逃げられない。


「母さんは加速した瞬間の私たちの熱源を追ってるんだ!!」

「でも加速でもしないと、あの雷は避けられないって!!」

空気の壁を幾度も吹き飛ばしながら、二人はプレシアへと接近していっては雷に追い回されて引き離される。
その隙に、クラウディアへと雷撃が走り、その進行を阻止しているのだ。



「まずい!!さっきのアルカンシェル、また撃たれる!!」

「せめてクラウディアがいくだけの時間は稼がないと・・・・・!!!」


防護壁によって身を守り、この間にも上昇はしているクラウディアだが、その速度は段違いに落ち込んでいる。
このままでは、上昇だけで残り時間を使い切ってしまう。

なにか突破口が欲しい。

そうしていると、どこからか怒声が聞こえてきた。


『そこどけぇーーーーー!!!』

「!?」

「あの声は・・・・」

ファアーーーーーーーーーーーーン!!!


『オレ、参上ゥッッ!!』

空に穴が開き、その向こうから独特の音を鳴らしながらデンライナーが飛び出してきた。
突然の乱入者に、プレシアも戸惑ったのか雷がブレていく。

戦闘車両からピームや砲撃、砲弾をメチャクチャに飛ばしまくるデンライナーの暴れっぷりは、まさしくそれを操るモモタロスらしい物だ。

その攻撃の全てを受け止めきるプレシアだが、視界は封じられたようで、クラウディアへの攻撃は止んだ。



「今だ!!」

「上昇します!!」

その一瞬の隙を見逃さず、クロノの号令と共にクラウディアが一気に上昇していった。
減圧などを度外視した上昇速度に、中のクルーは椅子や床に押しつけられる体勢になってしまうが、気になどしていられない。


爆炎が晴れた時には、すでにクラウディアは雲の上。
ザマァ見ろ、と言わんばかりに、プレシアの周囲を汽笛を鳴らしながら走り回るデンライナー。



「・・・すごいわね」

「あ、あはは・・・・」

そのデンライナーを見ながら、思わずプレシアが呟く。
いくつかの世界が結合したことは知っていたが、それを目の当たりにするとやはり違う。


「じゃあ、まだ行くわよ。アリシア、フェイト・・・・覚悟しなさい」

「まだまだ余裕だって!!ね?フェイト!!」

「ああ!!」

勇ましく答えるフェイトだが、心境には焦りがある。
アリシアも同等だ。

あの雷のホーミングは、あまりにも正確すぎる。
自らの魔力量からしても、これ以上の消耗は避けたい。


稀代の大魔術師。
プレシア・テスタロッサの仕掛けた攻撃は、ただの雷撃ではない。

それを解かない限り、この二人に勝利はない。


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「核の護衛に、ブレイカー」

呟き、地図の上にコトリと、チェスに使うかのような駒を「EARTH」ビルの位置に置くセルトマン。


「空ではキャスター・プレシアが。そして、大気圏外にはライダー・クライド」

コト、コト

「保険に一枠空けるとして、残り三騎―――――」


そう言って、暗い部屋の中天井に手を向ける。
そして、告げる。


「セイバー、アサシン」

ドドンッッ!!

撃ち出された赤い光は、天空へと伸びエスティアへと到達する。
召喚されたのは、二体。


「さて・・・・どうしてくるかな?「EARTH」」


不気味に笑うセルトマン。
そして、脚を組んで状況を見る。

まるで、観客の一人であるかのように。


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「二体、撃ち出されたな」

「ああ。おそらくエスティアの守りにだろう」

「・・・・・今ならオレら以外のみんなで・・・・むりか」


「EARTH」医務室では、ようやく運び込まれた蒔風たちが仰向けになっていた。
寝返りを打つだけの体力もない。

今はとにかく、他のメンバーに任せるしかない状況だ。


「クソ・・・親父を倒さなきゃならないってのに」

「大人しくしてろ」

それでも起き上がろうとする翼刀の頭を押さえつけ、軽い口調とは逆に厳しい眼差しで外を見るショウ。



「今地上にいるのは翼刀の親父とプレシア・テスタロッサ。空に今撃ち出されたのを含めて、三騎」

「ってことは、あと二騎、ってことやろか?」

「何を召喚する気でしょうか?」

倒れている蒔風たちを奥の方へと押し込み、ショウははやて、アリスと話していた。
朱里や雛里もいたが、エスティアの動向監視のために出て行ってしまった。


「何を召喚する気か、って言ったら、なんでも出せるからな」

「アーカイヴに接続している以上、確かにそうですね」

「そんなにやばいんか?」

「一回呼び出した奴はもう出せないらしいが、同じクラスの物でも召喚できるからな」

「しかも、既存七クラスにあてはまらない者も召喚できますからね」

「恐らく、召喚枠を残しているのは俺達を警戒してだろうしな」


もしすべてを召喚されたら、こっちは残りの戦力を総動員してでも「EARTH」ビルの攻撃に向かうだろう。
何はともあれ、大聖杯さえ破壊すれば周囲の被害はともかく、これ以上の暴挙は食い止められる。


だが、目ざといことにセルトマンは「EARTH」が対峙した最強の敵を、未だ召喚していない。


「一クラス残しているのはそう言うことだろう。「あれ」を出されたら、翼人のいない今では勝ち目がない」

「でも、そこまでしてやりたいことって・・・・」


セルトマンの目的は「世界を破壊して、なお存在できる自らの存在の証明」だ。

様々な方向性の完全を作り出したのも彼だ。
その行く先は、容易に想像がつく。


「恐らく、あいつの完全は」

「完全?」

「ああ、あれだけ配下の人間に各完全を与えていて、自分はありません、なんてことはないだろうな。セルトマンの完全はおそらく「人間の完全」だ」

「・・・・ってというとどんなものです?」

「わ~からん」

「だぁ、わからんってなぁ・・・・」

「しゃーないだろ。だが、自らの絶対的な存在の証明、ってのは解っている」

「でもどうやって世界を破壊する気なんでしょう?」

「大聖杯まで持ち出して・・・・なあ?」

「ってことで、彼を呼んでみた」

「彼?」


「あの・・・・呼ばれてきたんすけど」


と、そこにひょっこり顔を出してきたのは、皐月駆だ。
彼の顔を見て、はやてとアリスは納得のいった顔をして手を叩く。


「なるほど、劫の目ですか」

「そ。突発的だが、未来視の能力を持つこいつなら、セルトマンの動向もわかるだろう?」

「そういやそやったなぁ・・・・考えてみれば、とんでもないロストロギアやな」


いきなり話の渦へと放り込まれた駆は、なんだなんだとうろたえているうちに椅子に座らされ、お菓子を奨められた。

「ほれ、これ喰っていいぞ」

「お茶でもどうぞ」

「は、はぁ・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


ガバッ

「で?これからどうするんや(ヒソヒソ)」

「わからん・・・そもそもどうやって発動するんだ?あれ(ヒソヒソ)」

「任意の発動じゃないですからねぇ・・・・(ヒソヒソ)」

「何してんですか」

呼んだはいいが、これ以上どうしようかと悩んでいる三人に、駆が三白眼で睨み付けてきた。
このままでは進展しないので、とりあえず事の次第を話すショウ。



「かくかくしかじか」

「なるほど・・・・まあ確かに頑張れば見れないことはないですね」

「マジか!!」

「でも特定の未来は見えないし、それがこの時間軸の未来とは限らないですよ?」

「構わないさ。何かのヒントが欲しいから」

「わかりました・・・・では」


そう言って、駆が目を閉じて意識を集中させる。
出来る、とはいってもやはり未来視という能力はかなり神経を削るらしい。

額に汗がにじみ出し、肩が震えだす。


そして見終わったのか、ガッッ!!と目を開き、後ろに身体を反らしてしまう。


「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

「どうだった?」

グイッ、と頭を上げ、駆が立ち上がる。
未来視の内容を知りたいショウだが、その様子を見て一刻の猶予がないことを悟る。


「どうした?」

「いえ・・・よかった、まだ・・・・」

そこまで言って、医務室の扉が開いた。
カイザと交戦し、それを撃破した巧が重傷で運ばれてきたのだ。

今からなら命に問題はないが、かなり消耗しているらしい。


瞬間、駆が叫んだ。


「その人から離れろ!!!」

「え?キャぁッッ!!!」

突如として現れた謎の物体に、巧を運んでいたシャマルが悲鳴を上げた。

それは、砂のようなものだった。
否、それは砂というよりは、もっとグレーで、色が薄く―――――


「あれは・・・・灰か?」

「確かに乾さんはオルフェノクですが、なぜ!?」


そう、それはオルフェノクが負傷、もしくは死亡した際に発生させる灰だった。
しかし、それは巧の物ではない。

それは―――――

「ア゛・・・ア゛ぁ゛あああああ!!!」


巧の衣服に付着してきたのか、バラバラになった灰が再構築された物だった。

再構築、とはいっても、ボロボロの身体だ。
無理矢理形を得たらしく、表皮はボソボソで、暴れるたびに灰を周囲に振り撒いている。

それでも、身体をとどめておくだけの力はあるのか。
崩壊しそうでしないような、そんな風体をしていた。


そしてもはやそいつに元の理性はなく、ただの化け物としての存在でしかない。


その化け物は、シャマルの胸を掴んで振り回し、特に方向を定めることもなく投げ飛ばした。
そのまま止まることなく暴れまわり、ベッドを飛ばし、床を破壊し、台座をひっくり返していく。


その最中、ショウは荒れ狂う化け物の顔を見た。

全身と同じく、灰色の顔面。その中で、目だけが赤い。
真っ黒な白目に、真紅の黒目。

その表情は、彼は直接知らないまでも名前は出てきた。


「ありゃ、カイザの装着者じゃねぇか!?」

草加雅人。
彼がカイザの装着者にも関わらず、その肉体を崩壊させなかったのは埋め込まれた「オルフェノクの記号」によるものだ。

その適合率が低かったかつての装着者は、変身してもその後肉体が灰になって崩壊、死亡していた。
だが彼はその適合率の高さが故に、変身しても死ぬことがなかったのだ。

とはいえ、元は人間。
後付のオルフェノクの因子に耐えられるはずもなく、度重なる変身の末、彼は結局、肉体を崩壊させて死ぬことになったのだ。


その時は覚醒しなかったが、今回はその確率が的中したのだろう。
オルフェノクの記号は、死んだ彼を復活させた。

しかし、それはあくまでも「オルフェノクの記号」という不確定要素によるもの。
故に、彼はこのような化け物として再顕現することになったのだ。



だが、ショウをはじめとして彼等はそんなことは知らない。

倒されたはずの彼が、突如として出現し、しかも化け物となって医務室であばれているのだ。
当然、その場はパニックになる。


「な、なんだこいつ!?」

「おいこっち来たぞ!!」

「うわぁ!!」「きゃぁああ!!!」


その暴れっぷりは、まるで狭い密室に、勢いよく投げつけられたスーパーボールのようだった。
走り回り、暴れまわり、手を向ければその先で火花が散って小爆発が起こる。

ショウですら、この状況には30秒も出遅れた。
咄嗟に対処しようとするメンバーも、薙ぎ倒されていってしまう。


「このままじゃ医務室が使えなくなるぞ!!」

「くそ・・・・死者の魂を、一体どこまで利用すれば気が済む――――!!!」


セルトマンがこのことを狙っていたのかは知らない。
先にも言ったように、草加がオルフェノクとして不完全ながらも復活するかどうかは確率の問題だ。

だが、セルトマンはカイザが倒されたときに知っていたはずだ。
まだライダーは完全に倒されていない、と。


そうしているうちに、暴れまわる怪物は医務室の一角へと突進していく。
その中には、倒れて動けない翼人たちと翼刀しかいない。

止めろ!!と誰かが叫んだ。


しかし、火花が散り、羽毛が舞い、まともな視界すら封じられたこの状況の中でそれを実行できるものは――――――


「チェック」

《Exceed Charge》

バシィ!!


一人だけ、いた。

怪物の胸元に、三角錐の形をした、白いポインターが撃ち込まれた。
クルクルと回転するそれは、怪人の侵攻を押止めていたのだ。


「が・・・ア゛ぁ・・・・・」

「ハァッ・・・ハァッ・・・・はぁ・・・」

怪人の眼前にいたのは、膝立ちになった仮面ライダーデルタ―――三原修二だった。

「草加・・・・あれだけ言ってたお前が、まさかオルフェノクになってしまうなんてな」

「うぐァ・・・・」

「だったら、俺がお前のその苦しみ、終わらせてやる!!!」

ダンッッ


医務室というその空間が破壊された中、デルタは飛び上がり、ポインターに向かって蹴りを放つ。
その蹴り――――ルシファーズハンマーは怪人の胸を貫き、後方へと飛び出していく。

瞬間、怪人はビクン、と動きを止め、だらりと上半身をうなだれさせる。
身体からはデルタに倒されたもの特有の紅い炎を上げ、そのまま灰化して消滅していく。

消え去る一瞬、怪人はデルタへと振り返ったように見えたが、炎のせいではっきりとは見え無かった。



「はぁ・・・・はぁ・・・・」

突如として出現した脅威。

たった一瞬の大立ち回り。
撃破はしたものの、その傷跡はあまりにも大きい。


「まずい・・・・回復すらままならなくなったぞ」


破壊された医務室。
無事な部分はあるが、ほんの一部だ。


「やってくれたな、セルトマン―――――!!」

ギチリ、と拳を握りしめるショウ。


外では、その消滅を合図とでも言わんばかりに、更にサーヴァントが召喚されてエスティアへと打ち出されていった。




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「これで良し・・・「EARTH」は当分、動けないはずだ」

真っ暗な部屋の中、セルトマンが打ち出した腕を握りながらつぶやく。
草加雅人がオルフェノクとなって暴走したのは、うれしい誤算だったらしい。


「フォーゼがこのタイミングで結合・・・か」

セルトマンは、アーカイヴに通じている。
だからこそこれまでの人物を召喚でき、また「EARTH」メンバーの弱点を突くようなこともできたのだ。

しかし、それはあくまでも「最大世界」のアーカイヴ。結合していないフォーゼに関しては、その限りではない。


「まあオーズの原典から、多少なりの情報はあった」

だが、その情報も完全ではない。故に、今から彼がすべきなのは。


「さて・・・・原典の確認でもしてくるか」

そう言って、深く椅子に座り込むセルトマン。
原典が、再び浸食されていく。





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ガシュゥ・・・・・・


「エスティアと同高度に到着しました」

「妨害はプレシアだけだったな・・・・」

「何もないならいいじゃねえか!!さ、行こうぜ、先輩方!!」


そのころ、ようやくエスティアへと到着するクラウディア。
あれ以上の妨害は特になく、無事にたどり着いたことに顔をしかめるクロノだが、弦太朗は特に気にすることもなく勇ましく叫ぶ。


「若いな」

「ん?あんたは確か、カブトだったな!!」

「そうだ。天の道を行き、総てを司る男だ」

「・・・・・どういうことっすか?」

「あーこいつのことは気にすんな。にしても天道、若いなって?」


「・・・・・・ここまで妨害がなかった。ということはつまり、ここから先にある、ということだろう」

「そうなのか?」

「まあそうだな。セオリーだな」

「更に召喚の光が三発、すでに確認されている。中にいるとみていいだろう」

ガシャ、とストレージデバイスを握り、バリアジャケットを着込んだクロノが入念にチェックをしている。
その光景に、クラウディアのクルーたちは驚いていた。


「て、提督まで出るんですか!?」

「当然だ。あの船の艦長の相手は、僕以外にさせる気は無い」

仏頂面だが、その瞳には燃えるような闘志が宿っている。
一度やると言ったら、絶対に曲げない人だ。それを知っているからこそ、クルーたちはそれ以上のことは言わなかった。



「さて、ここにいると言うことは全員宇宙空間での活動ができる、と思っていいな?」

「当然だ」

「任せろ!!」

「良し・・・・ではこれから、エスティアへと乗り込むぞ」

それだけ言って、外へと出ようとするクロノ。
最初の確認からして、恐らくこのまま宇宙空間を突破していくつもりなのだろう。

短時間ならば、バリアジャケットでも真空状態の中を進むこともできる。



エスティアに向かう外への扉―――実際には脱出ポットの噴出孔―――の前に向かう一向。

「時間は残り少ない。行ける奴がどんどん先に進むべきだ」

「行くぞ―――――変身!!」

「「変身!!」」

天道のカブトに続いて、ガタック、フォーゼへと変身する三人。
まどかも魔法少女へと変身し、長門は良く見ないとわからないくらいに頷いた。


そして、扉が開かれる。


エスティアは、「EARTH」他と同型の戦艦だ。
その船体の三分の二は、砲台として存在している。

クルーがいるべき部位は、後方三分の一にあたる円形部。
そこから前方に伸びた二本の槍状の砲台が、残り三分の二を占める。


今、クラウディアとエスティアはちょうど側面部を見せ合いながら、反対方向を見ている。
クラウディアの左側面と、エスティアの右側面が向き合っている状態だ。



「いいか!!あの先端の砲台の片方だけでも破壊すれば、アルカンシェルは発射できない!!」

クロノが、ここから見て左側にある砲台部を指さして叫ぶ。

つまり、今回の目的を達成するには、それさえ破壊すればいいということだ。
だがそれに対しカブトが、もっともな返答をする。


「ああ―――――できたらな!!」

それと同時に、クラウディアから一斉に飛び出していくカブト達。
カブトは自らのマシンに乗り、ガタック、フォーゼは後部にクロノと長門をそれぞれ乗せている。

まどかに至っては、その身一つで、まるで水中に浮くかのような滑らかな動きで飛び出していった。


それは、彼女がカブトの後ろに乗りたくなかったわけではない。
そこに乗っていては、皆を守ることができないからだ。


すなわち


「来たぞ!!」

「シューティングスター!!!!」

彼等を打ち落とそうとする、砲撃の脅威を打ち落とす為である。



彼等が飛び出したことを確認したエスティアは、側面の砲台を一斉にこちらに向けて打ち出してきたのだ。
とはいっても、それは正確に撃ち抜くものではなく、圧倒的な弾幕を以ってして掃射するモノだった。

いつもの動きならば、到底当たるモノではないだろう。
しかし、ここは宇宙空間。

いくら彼等でも、いつもと同じ動き、というのは難しい。


それを、まどかの弓が無数の矢を放ち防護する。



まどかの背後には、系統樹のような紋様が。
そこに描かれた円形陣の全てより、四方八方へと放たれていく弓矢。

同時にまどか自身も進み、エスティアへと突撃していく。



真っ先に砲撃部へと向かって行ったのは、カブトだ。
搭乗者もいないため、クロックアップを発動させてカブトエクステンダーをエクスモードにして特攻を仕掛けに行く。

この装甲ならば、あの砲台は破壊できると踏んだのだろう。


だが、どこからか飛来してきた紫色の斬撃にエクステンダーの先端部が弾かれ、機体部へと落下して行ってしまう。
クロックアップは解けてしまったが何とか体勢を整える。しかし、カブトはバイクと共にエスティアの右側――――クラウディアとは反対側へと落下してしまった。



「天道!!」

叫ぶ加賀美だが、こちらもそうはいっていられない状況。
しかしこちらは特に邪魔もなく、無事砲台部へと着地していった。

それを見届け、まどかが一安心といった風に息を吐く。


だがそれもつかの間。
砲撃が一瞬にして止んだ瞬間、エスティアから何かが伸びてきた。

それは、黄金のエネルギー物質。
先端が二又になった剣の形をしたものだった。

その二又に挟まれ、ガキィ!!と拘束されたまどかが振り回され、エスティア最後部へと落される。



一方、それらを心配するフォーゼだが、後ろに座るクロノの言葉にそれを止められる。


「行くんだ!!彼らのことが心配なのはわかるが、今やらなきゃいけないことをやらなければ、敵を押しとどめる彼らに申し開きできないぞ!!」

「・・・・オォ!!ぜってーに止めて見せるからな!!!」

《ド・リル・オン》

ベルトのドリルスイッチを捻るフォーゼ。
そしてマシンマッシグラーの推進力を利用し、左足にマテリアライズされたドリルでそのまま突っ込んでいった。


「ライダードリルキーーーック!!」

ドガァッッ!!!と勢いよくエスティアの壁に突っ込み、マッシグラーを「ウィンチ」で回収するフォーゼ。
そうして二人が乗り込むと、空気の放出を止める為か、シャッターのように壁がガコンッ!!と勢いよく降りてきて穴を封じた。


「よっしゃ!侵入成功だな!!」

「出来れば直接砲台を狙いたかったのだがな」

「あっちは先輩たちに任せる!!」

年上のクロノに対しても軽快にそう言い放つフォーゼ。
親しみやすいと言えばそうだが、馴れ馴れしいと言えばそうだ。

まあクロノにしてみれば、彼以上に面倒な絡み方をしてくる翼人を知っているので(しかも子供ころから)、適当にあしらう。



「行くぞ。こっちだ」

「おう!!仮面ライダーフォーゼ、タイマン張らせて・・・・・なあ、これタイマンなのかな?」

「違うだろ。どう見ても」


アホな会話をしながら、二人は進む。
とりあえず、敵はいない。




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内部に侵入した二人だが、その他は全員外、つまり宇宙空間だ。

その中で、まずカブトが遭遇したのは――――――


「クゥッ・・・・」

少し力むような声を出しながら、何とかカブトエクステンダーを着地させるカブト。

位置は、エスティアの円形部の右側。
その上に着地したカブトは、周囲を見渡し敵の確認と周囲の観察を始めた。


カブトがいるのはエスティアの円形部の内側であり、軽い傾斜はある物の角度を感じるほどの物ではない。
外側に行けば角度はつくが、ここはまだ緩やかだ。

前方の砲台部に向かい、そこからこっちに来たので、カブトはエスティアの後方に向いて立っている。
右を見れば壁、そのまま視線を上げれば、一段盛り上がった円形部――――エスティアのブリッジがある。


が、そこまで観察してカブトが何かに感づく。

背後に、誰かがいる。
ゆっくりと振り返る。


そこにいたのは――――――


「お前か、仮面ライダーサソード」

「そう。俺は神代剣。神に代わって剣を振るう男。俺はサーヴァントとなっても、頂点になる男だ!!」

その闘志を利用された、新たなサーヴァント・セイバーが、カブトの前に立つ。



そして、それは彼だけではなく。





エスティア後部。
ブースター部があること以外、カブトがいる場所と変わらない景観だ。

そこに叩きつけられたまどかは、起き上がると目の前に漆黒の騎士がいるのを見た。

即座に立ち上がって、弓を手にする。
ドレスのたなびきが、彼女の警戒心を如実に表している。


その騎士は、全身が黒く
その騎士は、剣型のデバイスを手にしており
その騎士は、腰にベルトを巻いていた

そして、その騎士を見たまどかが、即座に思いついた記号は「Ω」。


「あなたは・・・・?」

「俺か?俺は、仮面ライダーオーガ」

かつて理想を追い求め、そしてその重さに負けてしまった男は言った。

「理想を掲げながら、それを諦めてしまったバカな男さ」





そして



「あんた、誰だ?」

「気を付けて。この個体から、生体反応はない」

無事砲台部に着地したガタックと長門の前に現れたのもまた、仮面ライダー。
とりあえず名前を聞いたガタックに、警告を促す長門。


その男――――その仮面ライダーは、眼光を妖しく光らせ、マントを払い振り返った。
そして、思いっ切り力を溜めながら、グッ!!と親指を下に向けた。

万国共通の仕草だ。
その意味は「地獄に堕ちろ」

そして彼はそれを踏まえてこう叫ぶのだ。


「さあ・・・・地獄を楽しみなァ!!!」




アルカンシェル発射可能時間まで


残り、11分38秒






to be continued
 
 

 
後書き

登場したのは、仮面ライダー三人!!!

サソード、オーガ、エターナルでした!!


ちなみに今のサーヴァント配分は


キャスター:プレシア・テスタロッサ

セイバー:神代剣(仮面ライダーサソード)

セイバー:木場勇治(仮面ライダーオーガ)

アサシン:大道克己(仮面ライダーエターナル)

キャスター:クライド・ハラオウン

ブレイカー:鉄翔剣

ですね。

後の一体は、保険として開けている状態です。


え?なんで本編に出てないオーガがいるかって?
劇場版含め「原典」ということで。

ここら辺の認識はニュアンスでお願いします。


そして、草加さん暴走。
ホント彼はやってくれます。

そして地味にかっこいいな、三原。
ファイズの中では一番好きなキャラです、三原。

日常を追い求めるために非日常に飛び込むのは勇気がいることです。
それができるんだから、三原は何気に一番すごいんです。ヘタレなのは否定しませんが



エスティアに関しては、アースラの画像を見て参考にしています。
同型機とのことなので。

「アースラ なのは」で検索したら、凄くわかりやすいサイトがあったので、そこを参考に。
プラモみたいの作ってる画像ですね。すげぇです。


ここから一端、エスティアでの戦いへと突入します。
第六章を区分けするなら「エスティア編」ですかね?


では、この辺で


フォーゼ
「次回!!艦内に敵無し!?」

ではまた次回 
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