昔の美食
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第二章
「それでね」
「ご存知ですね」
「ある程度にしてもね」
実際にとだ、ヴィットリオは答えた。
「私も知ってるよ」
「左様ですか」
「香辛料なんかはね」
ヴィットリオは現代の料理に欠かせないこちらの話もした。
「あれだね」
「はい、胡椒はです」
「古代ローマでも貴重だったね」
「戦略物資の様なものでした」
軍の貴重な備蓄品として扱われていたのだ、当然これを使った料理を食べられる者は限られていた。この時代でも。
「左様でした」
「そうだったね」
「はい、しかしです」
ホワンは主に畏まって話した。
「そこはです」
「再現しないね」
「いえ、お出しするメニューは当時の最高級のご馳走なので」
「胡椒もだね」
「使っていますので」
「そのことはだね」
「ご安心下さい」
こう主に答えた。
「そのことは」
「ではそうしたこともね」
ヴィットリオにしても香辛料特に胡椒が使った肉料理でないとどうにも口に出来ない。そうした意味で彼も現代の人間だ。
「楽しみにしているよ」
「それでは」
ホワンはヴィットリオに応えた、そしてだった。ヴィットリオはホワンにあらためて尋ねた。今度尋ねたことはというと。
「あとね」
「はい、何でしょうか」
「どういった場でのメニューかな」
ヴィットリオはホワンにこのことを問うた。
「それで一体」
「はい、個人で召し上がるものではなく」
「宴、パーティーでだね」
「召し上がるものでして」
「ではね」
ここまで聞いてだ、ヴィットリオはホワンに言った。
「皆で食べよう」
「屋敷にいる者全てで、ですか」
「そう、いつも通りね」
実はヴィットリオは宴等の食事の時は人を招いたりホワン達屋敷で働いている者達を皆集めて共に食べているのだ、友人が多く使用人達にも優しく公平なのだ。その為多くの者に慕われている。
「そうしよう」
「有り難きお言葉、それでは」
「皆で食べようね」
「屋敷の者全員で」
「是非ね」
こうしてだ、彼は屋敷の者達つまり使用人達と共にその古代ローマのメニューを食べることになった。そしてだった。
その古代ローマの料理を食べる時が来た、夜にだった。
多くの寝台が用意された部屋にタキシードを着て入りだ、ヴィットリオはまずはこう言った。
「そうそう、古代ローマはね」
「はい、宴はです」
「こうしてだったね」
「寝そべって食べていました」
「そうだったね」
「下にクッションを置いて」
ホワンも礼装でヴィットリオに話す、他の使用人達もそうした服装だ。
「そのうえで手で食べます」
「そうだね、しかし服は」
「現代の礼装です」
「古代ローマの服ではないね」
「それは再現しませんでした」
「それは何故かな」
「歌劇の演出を見まして」
そこからだとだ、ホワンはヴィットリオに話した。
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