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人非人

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第二章

「何かと黒い噂がある人物ですね」
「こいつがいるところだ」
 まさにとだ、河原崎はさらに言った。
「何か胡散臭いものがある」
「過激派にテロ国家にですね」
「運動だ」
 そうしたものがというのだ。
「そういうものばかりだ」
「そいつが国選弁護人になったんですね」
「その団長だ」
「厄介ですね」
「全く、国も何を考え得ているんだ」
 苦々しい顔でだ、河原崎はこうも言った。
「国選弁護人でもだ」
「人は選ばないといけないですね」
「これはとんでもない裁判になるかもな」
「団長がよりによってこいつですから」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「俺達も用心しないとな」
「裁判を引っ搔き回されますね」
「むしろそれを狙う筈だ」
 安田はというのだ。
「絶対にな」
「絶対ですか」
「死刑廃止論者だな」 
 このことからだ、河原崎は言うのだった。それも実に嫌そうな顔で。
「それも反体制派だな」
「体制云々は」
「古いと思うか?」
「古臭い考えじゃ」
「権力でも何でもだな」
「権力なんて国家権力だけじゃないでしょ」
 山田は所謂『体制派』という検事の立場から答えた。
「マスコミなんて凄いし」
「俺達以上の権力があるな」
「第四の権力どころかです」
「第一だな」
「あれだけの情報持って金もあって」
「やりたい放題だな」
「嘘報道しても責任取る必要ないですから」
 そうした有様だからというのだ。
「俺達よりずっとです」
「権力者だな」
「そうですよ、連中もそうで」
 山田はさらに話した。
「労働組合特に日教組は」
「あそこも権力あるな」
「そうじゃないですか?」
「権力は他人に強制出来る力だ」
 河原崎は極めてクールな口調で言った。
「じゃあマスコミや学校の先生は権力者だ」
「そうですよね」
「ものを書いてそれを世間におおっぴらに言えたり生徒に教えられるとな」
 もうそれだけでというのだ。
「権力者だ」
「権力者って何処にでもいますよね」
「会社の社長もな」
「それで組合も」
「何処でもあるんだ」
 権力、そして権力者はというのだ。
「本当にな」
「だから体制だの反体制だのも」
「権力と反権力だな」
「古い考えですよ」
 権力が国家権力だけだと考えているそれはというのだ。
「今回の事件にしろ」
「あの教団は権力があるな」
「少なくとも教祖は権力者ですよね」
 その範疇に入る存在だというのだ。
「金持って多くの信者抱えて」
「その信者にテロをやらせたんだからな」
「そうですよね」
「しかもそのテロの目的がだ」
「クーデター起こして自分達が政権握ろうっていうんですから」 
 そうした考えでテロを起こしたからだというのだ。 
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