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針千本

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第二章

「桑田ちゃんの言うことは嘘だぞ」
「えっ、じゃあ私ハリセンボン飲まさせられるんじゃなくて」
「閻魔様に舌を抜かれるんだぞ」 
 こう言うのでした、そう言われてです。
 宏美はびっくりしてです、お家に帰ってお母さんにこのお話をしました。
「閻魔様に舌を抜かれるって言われたの」
「嘘を吐いたらね」
「ハリセンボンを飲まさせられるんじゃなくて」
「そう言われたのね」
「同じクラスの大助君に、だからね」
 それでというのです。
「私閻魔様に舌を抜かれるの?」
「それはね」
「それは?」
「同じよ」
「同じって」
「嘘を吐いたらその人によってお仕置きが違うのよ」
 お母さんは優しく笑って宏美に言うのでした。
「閻魔様に舌を抜かれたりね」
「ハリセンボンを飲まさせられたリ」
「色々なの」
「そうなの」
「だから宏美ちゃんは嘘を言っていないわ」 
 このことは安心していいというのです。
「だから心配しなくていいわ」
「そうなの」
「それにハリセンボンというけれど」
 お母さんはさらにお話しました。
「針千本の場合もあるの」
「本当に針を千本なの」
「その場合もあるのよ」
「あのお魚に限らないで」
「そうよ、だから気をつけてね」
 このこともというのです。
「ハリセンボンと針千本があるの」
「そうなの」
「嘘を吐いた時もね」
 その時に飲まさせられるものもというのです。
「また違うから」
「何か難しいね」
「難しく考えることはないの」
 お母さんは優しく笑って考えだした宏美に言いました。
「宏美ちゃんも大きくなったらわかるから」
「お母さんみたいな歳になったら?」
「その時にはね」
「そうなの、じゃあ」
「その時に宏美ちゃんの子供に教えてあげてね」
「うん」
 宏美はお母さんに頷いて答えました。
「私そうするわね」
「そうしてね」
「それじゃあね」
 宏美も頷きました、そして実際にです。
 宏美が結婚して子供が出来てです、その子に同じことを教えました。お母さんに言われたことをそのまま。


針千本   完


                2017・5・21 
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