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『ある転生者の奮闘記』

作者:零戦
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TURN41






「サギリ方面長官、この度はシベリア星域の救援ありがとうございました」

「いや、結果的に日本がソビエトと開戦してしまったからな」

 圭子さん達の見舞いの後にリディア・ロコソフスキー提督が花束を持って見舞いにやって来た。

「ですがサギリ方面長官が来てくれなかったらシベリア星域は今頃……」

 恐らくラムダスに人間が喰われていたやろな……。自分も喰われていたかもしれないと、ロコソフスキー提督の肩がプルプルと震えていた。

「サギリ方面長官は私達の身代わりになってしまったようなものです。私に何か恩返しさせて下さい」

 ロコソフスキー提督はそう言って俺の右手を取る。う~ん、恩返しと言ってもなぁ……そうや。

「ならロコソフスキー提督、共有主義の本を手放して生活して下さい」

「え……?」

「残念ながら共有主義は間違っています。騙されたと思って一度置いてみませんか?」

「……分かりました。それが恩返しというなら……」

 ロコソフスキー提督は渋々と頷いてくれた。よしよし、これで味方の提督が増える。後の事はリンファ提督に任せるか。まだ日本星域にいたな、後で東郷長官を通して呼び寄せるか。

 それから、皇居での御前会議は緊迫とした雰囲気があった。

「………」

 いつになく山下長官が無言であった。それは勿論、雪風の左手切断の重傷の報告であった。

 山下長官は見舞いをしていたが、それでも雪風が心配だとして無言を貫き、早く御前会議が終わらないかとまで思っていたりする。

「まさか……こいつがチェリノブのブラックホールから出てくるとは……」

 柴神様はいつになくそわそわしてプルプルと身体を震えさせていた。

「柴神様はこれを知っているので?」

「………」

 柴神様は東郷長官の問いかけに無言で通したが帝が代わりに口を開いた。

「ラムダス……ではないのですか柴神様?」

「ッ!? な、何故それを……」

「ラムダス……それがあの芋虫の正体ですか帝ちゃん?」

 帝の言葉に柴神様は驚き、東郷長官は頷きつつ帝に尋ねた。

「えぇそうです東郷」

「だがそれを何処で……」

「……狹霧さんの記憶にありました」

『ッ!?』

 帝の言葉に全員が驚いた。何故、狹霧がラムダスを知っている?

「ラムダスを知っているのは柴神様の他に狹霧さんと平賀茂さんの二人です」

 そして正座していた帝が立ち上がる。

「今から話す事は狹霧さんの身体を触った時に流れた記憶そのままに喋ります。……ですが山下長官には悲しい話かもしれません。それでもいいですか?」

 帝の言葉に山下長官は頭を下げる。

「構いません。私が仕えるのは帝です」

「……分かりました。勝手に狹霧さん達の過去を話すのは個人情報に反しますが今は国家……人類存亡の時です」

 そして帝は柴神様、東郷長官、山下長官、宇垣長官に自分が超能力を通して見た雪風の過去を話した。




――シベリア星域――

「うん、これは凄いな。義手とは思えないほどの義手やな」

 俺は義手の左手を見つめる。茂が作った義手は外面は北方方面艦隊の乗組員から提供してもらって集められた皮膚であり、中は色々チューブ等があった。

「神経で感じられるように動かされている。作ったのはもう何百年も前の話だよ。僕がしたのは乗組員達から皮膚を提供してもらってそれを上手く合わせただけだよ」

「これは防水加工か?」

「勿論、ただし一ヶ月に一回のメンテナンスが必要だ」

「ま、それくらいは仕方ないよな」

『狹霧長官、面会です』

「ん? ええよ」

 俺が答えると病室の扉が開いて面会人が入って……は?

「帝? それに柴神様に東郷長官、山下長官まで……」

「つ、津波……」

 一体何が……それに後ろには南雲やマリー達も……。

「まずは狹霧さんに謝らなければなりません」

「……なぁ茂。俺は今、非常に嫌な予感がするんやけど……」

「奇遇だね雪風。実は僕もビンビンに感じているよ」

 俺と茂は互いに冷や汗が出ている。そして帝が俺に近寄る。

「実は皆に二人の前世も話しちゃいました」

「「………」」

 ………。

「……マジで?」

「本気と書いてマジです」

「……あんたは一体何をしてんのやァァァーーーッ!!!」

「にゃあぁぁぁぁぁーーーッ!!」

 俺は帝にアイアンクローをかける。

「ギブッ!! ギブですッ!!」

「この試合にギブなど無いッ!!」

 俺は更に力を込める。

「にゃあぁぁぁぁぁーーーッ!!」

「す、済まんがその辺で……」

「こ、これは柴神様」

 流石に話が続かないと思った柴神様が助け船を出して収集をする。

「はぁ、まぁ帝が話したなら文句は言いませんよ。後でもっかいアイアンクローしますけど」

「……意地悪……」

「俺達の秘密をバラしたんです。本気なら闇に葬る程度ですよ」

「狹霧、本当に我々は物語の住人かね?」

「えぇまぁ。ですが、それは我々の世界での事です。エロゲーの前世だろうとなんやろうと、俺達の目の前にいるのはただの人間です。別に俺はそんな事は関係無しに貴方達接していましたが……問題は茂だよな」

 最後はポツリと呟いた。ちなみに茂と津波はさっきから黙りあっている。

「……貧乳だから私が好きなのか?」

「ち、違うッ!! あの告白した時と同じだ。僕は津波だから……津波だからこそ好きなんだッ!! 貧乳だからとか関係無いッ!!」

「……此処で再告白しないで下さい」

「……分かった。貴方をもう一度信じる」

 俺の言葉を無視した津波が茂に抱きついた。

 ……寄りを戻すのはええけど此処(病室)でするなよ……。







 
 

 
後書き
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