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とある3年4組の卑怯者

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27 真心(マフィン)

 
前書き
 笹山は手作りのマフィンを藤木に食べてもらいたいと思い、藤木を誘うことにした。そして、それを耳にした小杉までもが食べたいと言い、やむなく承諾する・・・。

 はっきり言って私は小杉は嫌いなキャラです・・・。食べ物の事となると、いつも独り占め、他人の物まで奪うところが気に入りません。以前アニメ25周年スペシャルにてまる子が讃岐旅行に行った回では、さくら家お土産のうどんを横取りして、非常に腹が立ちました・・・。 

 
 笹山は帰宅するなり、昨日作って保存したマフィンを冷蔵庫から取り出した。
「お母さん、今日藤木君と小杉君が来てこのマフィンを食べさせてあげるの。いいかな?」
「あら、よかったじゃない。もちろんいいわよ」
 母は承諾してくれた。

 そして、玄関から誰か来た。
(もしかして、藤木君?)
 笹山は玄関へ向かった。しかし、来たのは小杉だった。 
「おう、笹山。マフィン食わせてくれよ!!」
「あ、でも藤木君が来てからね・・・」
「ああ、わかってるって!!」
 小杉はお邪魔しますとも言わずに入った。その直後に藤木が入ってくる。
「こんにちは」
「あ、藤木君。待ってたわ」
「あ、うん、ありがとう」
 藤木はやや照れていた。藤木は笹山が自分を待っていてくれるのが嬉しかった。これまで笹山からは優しくされていた藤木ではあるが、堀内との一件以来、笹山はより自分と接触しようとしているような感があった。
 藤木は笹山に連れられて居間に入った。しかし、小杉が既にマフィンを5個ほど食べてしまっていた。笹山の母が苦笑していた。
「あ、やだ、小杉君!そんなに食べないでよ!藤木君の分が無くなっちゃうじゃない!!」
「だって、うめえんだもん!!」
 笹山は小杉のこの遠慮ない態度に呆れた。藤木も小杉に呆れた。
(小杉君、どうして君はいつも食べ物のこととなると、そんな図々しくなるんだい?どうして君は食べる事しか頭にないのかい!?)
 藤木は軽蔑の目で小杉を睨みつけた。笹山は皿に残ったマフィンを4個ほど取り上げて、藤木に渡した。
「あ、おい、何すんだよ!!」
「これは藤木君に食べてもらうの!藤木君、召しあがって」
「うん、ありがとう・・・」
 藤木は笹山が作ったマフィンを口にした。生地は柔らかく、非常に美味しく藤木には感じた。
「お、美味しいや・・・、もう一個いいかい?」
「もちろん、食べて!」
 藤木は2個目、3個目と食べた。早食いする小杉とは異なり、マフィンの味をゆっくりと味わい、噛みしめた。藤木は笹山のマフィンを食べて、何かを感じた。
(笹山さんって本当に料理得意だよな・・・。このマフィン、笹山さんの気持ちっていうのかな、そんなものを感じるな・・・)
 藤木は顔が喜んでいた。笹山は藤木のその顔を見て笹山は藤木がこんなに自分のマフィンを喜んでくれていると思い、嬉しく感じていた。
(藤木君がこんなに喜んでいる・・・。すっごく嬉しい・・・)
 笹山も笑顔でいないわけにはいかなくなった。その時、小杉が苦しそうな顔をした。
「やべえ・・・、ちょ、ちょっと、み、ず・・・、水く、れ・・・」
 小杉が勢いよくマフィンを口にするために喉に詰まらせてしまったのだ。笹山の母が水を入れたグラスを持ってきた。小杉がそれを飲み、流し込んだ。
「サンキュー、おばさん!!」
「小杉君、落ち着いて食べてね・・・」
 笹山の母はしょうがないなという顔で言った。これを見た藤木と笹山は小杉がいると、落ち着かないなと感じた。
 
 藤木と小杉は帰宅することとなった。
「笹山さん、今日はありがとう、とっても美味しかったよ」
「あ、ありがとう・・・」
 笹山は藤木に褒められて照れた。
「おう、笹山んちはホントサイコーだな!!次なんかうまいもん作ってきたらまた俺に声をかけてくれよ!!そしたらいつでも食ってやるぜ!!それじゃあ、楽しみにしてるぜー!!」
 小杉は高らかに言ってその場を去った。
「私別に小杉君なんて呼んでないんだけど・・・」
「そうだよね、話を聞いて無理やり入ってきたんだもんね・・・」
 これからは小杉に聞かれないように気を付けようと思う笹山だった。
「それじゃあ、僕も失礼するよ」
 藤木が去ろうとすると、笹山が呼び止めた。
「あ、あの、藤木君・・・」
「何だい?」
「今日は来てくれてありがとう。また何かお菓子作ったら是非藤木君に食べてもらいたいな」
「あ、う、うん、僕は笹山さんが作るお菓子好きだよ・・・。えっと、何ていうのかな・・・?真心がこもっていた気がしたよ・・・。それじゃあ・・・」
「さようなら・・・」
 藤木は帰っていった。笹山は藤木が言った言葉が身に染みた。
 《僕は笹山さんが作るお菓子好きだよ・・・。えっと、何ていうのかな・・・?真心がこもっていた気がしたよ・・・》
 笹山は藤木から言われたこの言葉で自分は藤木にどれだけ好かれているか、改めて感じた。
(真心か・・・。藤木君が私の作るお菓子を気に入ってくれている・・・。また藤木君に私のお菓子食べてもらいたいな・・・。今度は何を作ろうかな・・・?)
 その時、笹山ははっとなぜ昨日から藤木をそんなに意識しているのか、と我に返った。
(もしかして、私も藤木君のことを・・・?)
 笹山はまさか自分も藤木に気があるのか、と己を疑った。
(気・・・、気のせいよね・・・)

 家に帰る途中、藤木は(小杉の邪魔もあったが)笹山と過ごせたことを楽しく、誇りに思った。
(笹山さんのマフィン、美味しかったなあ・・・。それにしても笹山さん、普通ならさくらとか城ヶ崎さんを誘うはずなのにどうして僕だけ誘ったんだろう・・・?確かにあの時、笹山さんが好きだって気付いてもらったからなのかな?もしかして笹山さんも僕の事が好きだったりして・・・!?)
 藤木はニヤニヤしながら歩いていた。
(もし笹山さんみたいな人と結婚したら、毎日美味しい手作り料理が食べられるんだな・・・)
 藤木は笹山と結婚し、笹山の夫になる事を妄想していた。その後、その妄想に気を取られて電柱にぶつかり、いつものツイていない自分に戻ってしまった事は言うまでもない。 
 

 
後書き
次回:「転校生」
 学校に友達がいない事に悩み、常に孤独な学校生活を送る女子・吉川みどり。そんな彼女のクラスに、一人の女子が転校してくる。その女子は美しく・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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