恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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9部分:第一話 関羽二人の少女と会うのことその九
第一話 関羽二人の少女と会うのことその九
「それを言っておく」
「では。私はここで」
「立会人になって欲しい」
「わかりました」
「さあ、来るのだ!」
張飛が関羽を蛇矛で指差しながら言ってきた。
「この張飛翼徳にやっつけられるのだ!」
「ではだ。行くぞ」
こうして二人は闘いに入った。彼等はそれぞれの武器で激しく打ち合う。
関羽が得物を振るうとだ。張飛はそれを蛇矛の刃で受けてみせた。
「何っ、今のを受けたのか」
「くっ、何て重さなのだ」
その一合の後でお互いに言い合う。
「どうやら噂通りだな」
「ここまで強い一撃ははじめてなのだ」
「それならだ」
ここでまた言う関羽だった。
「これはどうだ!」
「まだなのだ!」
関羽の振り被ってからの一閃も防いだのだった。それもだ。
「今度はこっちの番なのだ!」
「くっ!」
「受けるのだ!」
張飛は蛇矛から突きを次々に繰り出す。しかしそれは関羽の得物を巧みに動かす動きで全て防がれてしまうのであった。
「鈴々の突きを!?」
「これだけの突きも見たことがない」
関羽をもってしてもだった。
「強いな、間違いなく」
「御前何者なのだ?」
自分の会心の攻撃を全て防がれて驚きを隠せなかった。
「この鈴々の突きを防ぐなんて奴はいなかったのだ」
「御前もだ。これだけの攻撃を繰り出してもまた」
関羽はその彼女にまた言う。
「息が切れていないのか」
「鈴々の体力は底なしなのだ!」
まさにそうだというのである。
「この程度で負けないのだ!」
「ならばだ。私もだ!」
関羽も攻撃をさらに繰り出してきた。そのうえでさらに激しい応酬に入る。
そしてだ。その闘いは続きだ。何時しか夜になっていた。
だがまだ闘いは続く。二人の闘いはまさに龍虎の闘いだった。
既に数百合になっている。だが決着はつかない。
しかしその中でだ。関羽はふと言うのだった。
「惜しいな」
「惜しい!?」
「そうだ、惜しいな」
こう言うのである。
「それだけの腕を持ちながらやっていることはだ」
「何だというのだ?」
「山賊の真似事か」
言うのはこのことだった。
「これだけの腕を持っていれば天下すら動かすことも夢ではないというのにだ」
「五月蝿いのだ!」
張飛は関羽の今の言葉に感情を露わにさせてきた。
「鈴々だって好きでこんなことやっているわけではないのだ!」
「何っ!?」
「鈴々には家族がいないのだ。皆死んでしまったのだ」
「その様だな」
「家族は皆流行り病で死んでしまったのだ」
この時代ではよくあることだった。
「それからはずっとここにいるのだ。一人で」
「一人か」
「そうだ、一人なのだ」
言いながらもまだ攻撃を繰り出し続けている。
「けれど寂しくはないのだ。鈴々には多くの手下がいるのだ」
「同じだな」
だがここでこう言った関羽だった。
「御前もまた。同じだな」
「同じ!?」
「そうだ、同じだ」
こう言うのである。
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