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真田十勇士

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巻ノ百四 伊予へその十五

 熊本の加藤清正は難しい顔でだ、家臣達に言った。
「難しいのう」
「左様ですな」
「そう言われましても」
「我等にとっては」
「今が大事です」
「豊臣家には残って欲しい」
 これが加藤の今の考えだ。
「このままな」
「幕府の中で」
「そうしてもらいたいですな」
「是非ですな」
「そうして欲しいですな」
「天下は定まろうとしておる」
 加藤にもこのことがわかっていた。
「徳川家の下でな」
「それは思えば関ヶ原の前からでしたな」
「大御所様に多くの者が従う様になり」
「我等は治部憎しのみでしたが」
「あの頃に既に」
「今でも間に合うか」
 何が間に合うかというと。
「茶々様と大御所様のことじゃが」
「ご正室にですな」
「茶々様を望まれていますな」
「そのお話をですか」
「大坂の茶々様にお話しますか」
「あの方が首を縦に振られれば」
 その茶々がというのだ。
「万事収まる」
「左様ですな」
「そうなってくれればです」
「豊臣家も安泰です」
「何よりお拾様が」
「だからじゃ、何とかな」
 この話をというのだ。
「今から話すか」
「それを考えますか」
「そうなれば茶々様は自然に江戸に入られます」
「しかもお拾様はご正室のお子」
「大御所様のお子ともなりますし」
「無体にされる筈がない」
 家康にしてもというのだ。
「だからと思うが」
「それで、ですな」
「あの方にお話しますか」
「そして何とかですな」
「豊臣家を救いますか」
「そうしたい、天下人は大御所様だが」
 家康にだ、最早このことは覆せないというのだ。
「豊臣家を残すことは出来る」
「だからですな」
「何としてもですな」
「こちらから大坂に文を送り」
「茶々様にそうしてもらいますか」
「他の豊臣家恩顧の家にも話すか」
 福島及び他の七将達の家にだ。
「そうするか」
「それがよいかも知れませぬな」
「やるなら早いうちにですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだった。
「だからな」
「はい、では」
「このこと考えておきましょう」
「そのうえでどうするか」
「それを決めましょう」
「それが豊臣家の為じゃ」 
 加藤はまた言った。 
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