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真田十勇士

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巻ノ百四 伊予へその十二

「その時は終わった」
「そうですな」
「うむ、ではな」
「一つの藩ではない」
「そうですか」
「そうじゃ、茶々様は何もわかっておられぬからな」
 幸村は常にそう思っている、そしてこのこと自体が大坂を追い詰めているというのだ。そしてだ。
 そのことを思いつつだ、彼はまた言った。
「あの方がおられる限り大坂は暗い」
「そして最悪のこともですか」
「充分有り得る、政をご存知ない方が実質の主ではな」
 豊臣家のというのだ。
「どうしようもないわ」
「止められる方もおられず」
「あのまま荒れるだけじゃ」
「何もかもが」 
 こうしたことも話した、そうして。 
 修行をしていく、猿飛は確かに強くなっていったが天下特に大阪の動きは非常に暗いものだった。
 秀頼は少しずつ大きくなっていっているが横には常に茶々がいる、その茶々の周りに女達がいてだ、
 政を動かしていた、大坂の男達はその彼女達を見て不吉なものを感じてそのうえで片桐に対して言っていた。
「どうにかなりませぬか」
「茶々様と女房の方々は」
「もう我等は何も言えませぬ」
「政はあの方々のものとなっております」
「修理殿はあの有様」
 彼が茶々を止める筈だがそれを出来ないでいるのだ。
「これではです」
「摂津、河内、和泉三国の内の政は出来ますが」
「幕府とのことは」
「もう何とも」
「そうじゃ、それが肝心じゃが」
 しかしとだ、片桐も言うのだった。
「わしもじゃ」
「茶々様をですな」
「止められぬしな」
 難しい顔で言うのだった。
「だからな」
「最早ですか」
「やはりどうにもなりませぬか」
「あの方のことは」
「幕府にはそうした御仁もおられるが」
 あちらにはというのだ。
「本多殿にそのご子息、崇伝殿に柳生殿とな」
「そうした方々がおられてですな」
「止められますか」
「それが出来ますか」
「後は九度山の真田殿か」
 昌幸の名も出した。
「あの方なら出来るが」
「しかし今の大坂にはおられぬ」
「石田殿も大谷殿もおられず」
「そうした有様なので」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「どうにもならぬ、しかしどうにもならぬのではな」
「家が危うくなりますな」
「そうなりますな」
「危ういままですと」
「厄介ですな」
「そうじゃ」
 こう言った、ここで。
「何か出来る方が大坂に欲しいのう」
「我等はでは力及ばず」
「このことが嘆かわしいですな」
「それも実に」
「何とかしたいですが」
「その力がないとは」
「全くじゃ、真田殿が来て欲しい」 
 片桐はまた昌幸のことを言った。 
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