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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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導きの灯編
  偉大なる航路へ

 導きの()の光を道しるべに荒れ狂う嵐の中、ルフィ達はメリー号の舵を切る。 
 船内のキッチンでは偉大なる航路(グランドライン)を目指し、ナミ達が今後の方針について話し合っていた。

偉大なる航路(グランドライン)への入り口は山よ」

 左手で机の上の海図を押さえつけ、ナミは右手を右腰に当てルフィ達に説明する。

「「「「山……?」」」」

 ルフィ達は皆一様に理解できないとばかりに首を傾げる。
 アキトも同様だ。

 アキトは偉大なる航路(グランドライン)から東の海(イーストブルー)に来たとは言え、正規のルートを通ってきたわけではない。
 故に、ナミの言っていることはルフィ達と同様に理解出来ていなかった。

「そう!"導きの()"が指してたのは間違いなくこの赤い土の大陸(レッドライン)にあるリヴァース・マウンテンよ。海図にもそう書いてあるわ」
「おいおいそれじゃ山にぶつかっちまうぞ」

 ウソップが正論を言う。

「違うわよ。海図にもあるようにここに運河があって、そこから山を登るってことよ」

 どうやらナミ自身も理解出来ているわけではなく、依然として偉大なる航路(グランドライン)への航路は不明であるようだ。
 その場に静寂が広がり、ルフィ達が疑問の声を上げる。
 
「そういや、ローグタウンの処刑台でバギーが突然吹き飛んでいたんだが、ありゃアキトの仕業か?」
「そう言えば、あの赤っ鼻突然吹き飛んでいたな。まさかアキトはルフィ同様悪魔の実の能力者だったりするのか?」
 
 ゾロとサンジが今思い出したとばかりにアキトに尋ねる。
 彼らなりにこの場の何とも言えない空気を変えようとしたのかもしれない。

「そういえば言ってなかったな。ゾロとサンジの言う通り俺は悪魔の実の能力者だ」
「何ー!?そうなのか!?」
「そ、それで……?な、何の実を食べたんだ?」

 ルフィとウソップが興味津々とばかりにアキトに尋ねる。
 ナミ達も好奇心を隠せず、アキトを凝視している。

「俺が食べた悪魔の実はジカジカの実だ。能力は自分を中心に引力と斥力を発生させること。つまり磁界人間ってことだ」

 アキトは大まかに自身の悪魔の実の能力の説明を行う。
 ルフィ達は引力と斥力という言葉だけではいまいち要領を得ていないようであったが

「それじゃあ、アーロンパークでモームや魚人達が吹き飛んでいたのは……」

 聡明なナミはアーロンパークでの魚人達を襲った不可解な現象のからくりを即座に理解する。

「俺の能力に興味を持つのは分かるが、今はそれよりも偉大なる航路(グランドライン)に入ることを優先すべきだと思うんだが……」

 アキトは困った様子で頬を掻き、ルフィ達を見据える。

「そ、そうよね……!もう一度言うけど偉大なる航路(グランドライン)に入る方法は赤い土の大陸(レッドライン)にあるリヴァース・マウンテンを登ることよ」
「で、そこからどうすんだ?」

 ウソップの疑問の声にナミは再び口を閉ざし、話しは振り出しに戻ってしまう。

「そ、そういえばアキトは偉大なる航路(グランドライン)から来たって言ってたわよね?何か偉大なる航路(グランドライン)へ入る方法について知らない?」

 ナミは偉大なる航路(グランドライン)出身のアキトに助けを求め、偉大なる航路(グランドライン)への突破口を見つけようとするも……

「悪い、ナミ。俺は船で偉大なる航路(グランドライン)を突破してきたわけではないから、詳しいことは何も知らないんだ」

 アキトは正規のルートで偉大なる航路(グランドライン)から来たわけではなく、空を越えて東の海(イーストブルー)へと来ている。
 そんな彼がリヴァースマウンテンについて知る由もなかった。

「じゃあ、どうやってアキトは東の海(イーストブルー)に来たの?」
「空を飛んで来たんだ」

 キッチンの天井を指差し、アキトはさらっと信じられないことを口にする。

「空を……!?」

 ナミは空いた口が塞がらない。

「能力の応用だ。詳細は省くが、俺は空を飛ぶことで赤い土の大陸(レッドライン)を越えて来たんだ」

 ナミだけでなくこの場の全員が驚きを隠せなかった。
 どこの世界に赤い土の大陸(レッドライン)を空を飛んで越えて来るやつがいると思うだろうか。

「おい!?嵐が止んだぞ!」
「おーっ、いい天気だな!」

 ウソップとルフィがキッチンの窓から顔を出し、満天の空模様を見渡す。 

「え、そんなまさか……。このまま進めば偉大なる航路(グランドライン)の"入口"まで行けるハズなのに……」

 船外の嵐による暴風雨は静まり、先程までの悪天候が噓のように消えている。
 明らかな異常事態でもあるにも関わらず、ルフィ達はナミの気も知らないではしゃいでいる。

「しまった……!"凪の帯(カームベルト)"に入っちゃった……」
「「「「カームベルトってなんだぁ?」」」」
「……」

 全くこいつらは、とナミは呆れながらも説明する。

「"凪の帯(カームベルト)"。偉大なる航路(グランドライン)の両側を無風の領域である2本の海域が挟み込んでいるの。それが今私たちがいるここ"凪の帯(カームベルト)"よ」

 ナミの言う通り凪の帯(カームベルト)の向こう側では今なお嵐が続いている。
 対する此方の領域は無風であり、この領域の異常性を際立たせていた。

「"(カーム)"ねェ。つまりどういうことだ?」
「つまりこの海域には……!?」

 途端、メリー号全体を大きく揺らす振動が響く。

 ただならぬ事態だ。
 次の瞬間、メリー号そのものが動き始めた。

 いや違う。
 とてつもなく巨大な何かにメリー号そのものを()()()()()()()()()()()

 海底からメリー号の下に現れる()

 見れば眼下にはあのアーロンパークのモームが可愛く見えるほどの超大型の海王類がいた。
 人がゴミのように見える大きさである。

「「「「「「……!!?」」」」」」

 驚愕・愕然・唖然・呆然

 ルフィ達は皆一様に目の前の光景に言葉を失っていた。
 ウソップにいたっては口から泡を吹き出し、気絶する寸前だ。

「でか……!」
「う、嘘だろ……」
「もうダメだ、おしまいだぁ……」
「か、海王類の巣なの……。大型のね……」

 ナミはメインマストに抱き着きながら泣き崩れる。
 超大型の海王類がメリー号の下に現れ、正に絶望的な状況が広がっていた。
 しかし、幸いなことに海王類達は未だにルフィ達の存在に気付いておらず、周囲を見渡している。

「いいか……!この海王類が海へ戻っていく瞬間に船を思いっきり漕ぐんだ!!」
「「しょ、承知!!」」

 ゾロの提案にルフィとサンジの2人が冷や汗を流しながらも頷き、オールを力強く握りしめる。

 だが、物事は決して予想通りには進まない。
 メリー号を持ち上げる海王類が突然のくしゃみを炸裂し、ルフィ達が天高く吹き飛ばされてしまった。
 加えて、超大型の蛙の海王類が水面から空高く飛び上がり、メリー号へと突貫する。

「蛙が飛んで来たぞ!」
「アイエエエエ!カエル!?カエルナンデ!?」
「おい!ウソップが奇声を上げながら、メリー号から投げ出されたぞ!?」
「ウソップ───!」
「いやああああああっ!!」

 しかし、予想を裏切り、その蛙はメリー号の直前で不自然にも止まる。
 まるで不可視の壁に阻まれたかの如く、空中で勢い良く跳ね返された。

 無論、それはジカジカの実の能力であり、アキトは反射的に特大の威力を秘めた衝撃波を放ち、蛙の巨体を吹き飛ばしていた。
 巨大な図体を誇る蛙は眼下の海の水面に直撃し、大きな水しぶきを上げながら沈んでいく。

 続けて、ルフィがウソップを救出し、アキトがルフィ達が船外に飛ばされないように能力で船内に引き付ける。
 こうしてルフィ達は命辛々、凪の帯(カームベルト)を抜け出すことに成功した。



「これで分かったでしょ?入り口から入る理由……」
「ああ、痛いほど分かった」

 ルフィ達は甲板上で脱力し、力無く横たわる。
 アキトも平静を装ってはいるが、どこか疲れた表情をしていた。

「アイエェェ……」
「おい、ウソップ大丈夫か?」
「蛙、怖い、怖い……」

 こりゃ暫くウソップは駄目だ、とサンジは感じ、深く嘆息する。
 メリー号は船員の気力も復活しないまま嵐の中を進んだ。



 やがてメリー号の前方に赤い土の大陸(レッドライン)が現れる。

 赤い土の大陸(レッドライン)は眼前に天高くそびえ立ち、雲が頂上を隠す形で頂きの高さが窺い知れない。
 アキトを除いたルフィ達が赤い土の大陸(レッドライン)の迫力に圧倒されていた。

 反してアキトの赤い土の大陸(レッドライン)に対する認識は軽いものだったが

 "ああ、あの山、空を飛んで越えたな"程度の認識である。
 アキト自身、かなり神経が図太くなってきている。

「見て!あそこがリヴァース・マウンテンの運河の入り口よ!」
「野郎ども!面舵一杯だ!!吸い込まれるぞ!」

 リヴァース・マウンテンへと海流が逆流するがごとく山を流れている。
 あれこそが偉大なる航路(グランドライン)へと続く入り口だ。

「「面舵一杯だ──!」」

 サンジとウソップが力一杯舵を切り船を安定させようとする。
 しかし、不幸がとどまることはなく船内に鈍い音が響き、メリー号の舵が折れた。

「舵が折れ……!?」
「嘘でしょ……!?」
「「「「「ぶ、ぶつかる────っ!!!」」」」」

 メリー号に迫りくる運河の門

 メリー号が海の藻屑と化してしまうことを防ぐべく、アキトが能力を発動するよりも早くルフィが動く。

「ゴムゴムの~……風船っ!!」

 ルフィの尽力によりメリー号は無事、運河を登り始める。
 ゾロの手に掴まりメリー号に無事戻るルフィ

 メリー号は逆流に乗り途轍もない速度でリヴァース・マウンテンを登り、山頂に近付いていった。

「入ったぞ!偉大なる航路(グランドライン)!」
「あとは運河を下るだけよ!」
「なあ、ナミ。前方に山が見えるんだが」
「山?そんなはずないわよ、アキト。この先の双子岬を越えたら海しかないはずなのよ」
「いや、ナミさん。確かにアキトの言う通り前方に山が見えるぜ」

 前方に山が姿を現す。
 それは山などではなく鯨であったが

 その鯨はルフィ達を見下ろす形で咆哮を上げ、その巨大な体躯でリヴァース・マウンテンの運河の入り口を塞いでいた。

「山じゃなくて鯨だったかぁ……」

 アキトは一本取られたぜとばかりに右手を額に当て嘆息する。

「何吞気なこと言ってんのよ、アキト!このままじゃぶつかってしまうわよ!!」
「おい、舵切れ!!」
「舵、左だ~!!」

 ゾロ達が眼前の鯨を回避しようと折れた舵を切る。

 ただ一人、ルフィは船内に入り、大砲をぶっ放した。
 砲撃音が轟き、メリー号のスピードが減少する。
 しかし、完全にメリー号のスピードが消えるわけも無く、鯨との衝突の影響でメリー号の船主がへし折れ、ご臨終を迎えた。
 
「よし、船止まったか?」

 不幸は終わらない。
 喜色満面の顔で船内から姿を現したルフィは船主の無残な姿に衝撃を受け、あろうことか鯨の目に直接攻撃を仕掛けた。

「嘘でしょ、何やってんのよ、ルフィ……」

 ルフィの常軌を逸した愚行にナミが涙を流し、アキトにもたれ掛かる。
 私達、死んだ、とばかりにその姿は絶望に暮れていた。
 
 案の定、メリー号の存在に気付いた鯨が大口を開け、ルフィ達を海水ごと飲み込まんとする。
 既にナミ達に鯨から逃げる術など持ち得なかった。
 舵はもはや意味をなさない。

「いやああああああっ!飲み込まれるー!!」
「あーあ、食われちまうな、俺達」
「だから、何でアキトはそんな呑気でいられるのよ!?」

 抵抗虚しくメリー号は鯨に飲み込まれた。 
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