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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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788部分:第六十四話 公孫賛、誰からも忘れられていたのことその三


第六十四話 公孫賛、誰からも忘れられていたのことその三

「麗羽はね。時々普通にそうしたことがあるから」
「困りものです」
「全くです」
 曹操の左右に控える曹仁と曹洪が応える。ここでは荀彧と荀攸が階下に控えている。
「あの方らしいですが」
「本当に相変わらずですね」
「そうね。気持ちはわかるわ」
「そうだろう、曹操ならそう言ってくれると思っていた!」
 曹操の言葉を受けてだ。公孫賛は満面の笑顔になった。
 そうしてそのうえでだ。さらに言うのであった。
「いや、本当にだ。幽州の牧は私、この公孫賛なのだ!」
「話は聞いたし気持ちはわかったわ」
 ところがだった。曹操はここでこんなことを言い出した。そのうえで公孫賛を見てだ。怪訝な顔になって、彼女もその顔になってこう言うのであった。
「貴女は。誰なの?」
「な、何っ!?」
「見ない顔だけれど。誰なの!?」
「ちょ、ちょっと待て。曹操までそう言うのか!?」
「だから誰なのよ、貴女」
 荀彧も真剣に怪訝な顔で彼女に問うた。
「全然知らないわよ」
「そうだ。誰なのだ?」
「見たところ武人らしいが」
 曹洪と曹仁も同じことを言う。
「それに幽州に長い間牧はいなかった」
「そのことが朝廷にとって悩みの種の一つだったわ」
「だから麗羽殿の牧就任は」
「朝廷にとっても渡りに舟だったのだけれど」
「そうよね、その通りだわ」
 曹操は従妹達の言葉に応えて頷いた。
「それで劉備が徐州に入ったしね」
「喜ばしいことが続きますね」
「全くです」
 荀彧とその姪も言う。
「こちらの武人が誰かは知らないけれど」
「私もです」
「けれど。見たところそれ程悪い人物ではないようです」
「資質はそこそこといったところでしょうか」
 二人は今度は公孫賛を見ながら話した。
「それでどうされますか?」
「この人物は」
「そうね。何だかんだで人材は一人でも多く必要だし」
 曹操も袁紹と似たようなことを言う。
「貴女、よかったら私の陣営に来る?」
「私の名前を言ってみてくれ」
 公孫賛は曹操の誘いにこう返した。
「答えてくれたら考えさせてもらうが」
「だから誰なの?」
 これが曹操の返答だった。
「名前言ったかしら」
「言ってないですよね」
「そうですよね」
「幽州の牧なんてUMAを出す始末だし」
「一言も」 
「な、言った筈だ!」
 曹操だけでなく他の面々もそれぞれ顔を見合わせながら話す。
 だが本人には確かに記憶があった。それで言い返す。
「公孫賛だ!白馬長史のだ!」
「だから知らないわよ、そんな人」
 荀彧がまた怪訝な顔で言う。
「最近噂になっているあの人?袴で胴当てを身に着けた口髭の男」
「あの男一体何者かしら」
「時々見るけれど」
 曹洪と曹仁もその人物のことは知っていた。彼のことはだ。
「一説によるとその名前は藤堂だとか」
「娘さんがいるらしいわね」
「そうよね。その人のことかしら」
「何故そんな怪しい人間のことが知られていて私のことは知られていないのだ!」
 ここでもいい加減嘆きが入った。
 
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