真田十勇士
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巻ノ百四 伊予へその四
「考えてみればここから九度山に一人で来て帰るなぞ」
「普通は出来ぬな」
「はい、確かに」
「そうじゃ、この歳になるがな」
「猿達と共に遊び」
「それがよい鍛錬になっておってな」
それでというのだ。
「今も猿や山の者達の様に動ける」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
さらにというのだ。
「お主もじゃ」
「猿達と共に修行を行えば」
「それでじゃ」
「よい修行になりますか」
「そうした修行を考えておる」
実際にというのだ。
「お主とのそれはな」
「では」
「うむ、これよりじゃ」
「猿達の中に入り」
「猿の様に動いてな」
山の中をというのだ。
「まさに猿となりじゃ」
「この山の中を駆け回り」
「修行をする」
「それでは」
「では拙者も」
幸村もここで言った。
「共に」
「修行をされますか」
「本朝はとかく山が多い」
木々に満ちたそうした山がというのだ。
「だからな」
「猿達のその動きをですな」
「うむ、身に着ければじゃ」
まさにというのだ。
「大きな力になる」
「だからですか」
「この度の修行もな」
「されてですか」
「備えたい」
大介が自身の孫である猿飛に教えるその術をというのだ。
「それでよいか」
「是非共」
大介は笑みを浮かべて幸村の願いに応えた。
「それでは」
「共にな」
「修行をしましょうぞ」
「猿達の中に入り」
「猿の動きを備えましょうぞ」
「では祖父殿」
猿飛は意気込む笑みで大介に言った。
「これより」
「修行をしましょうぞ」
「それでは」
こう話してだ、そのうえでだ。
大介は早速猿飛そして幸村との修行をはじめた、家を出てすぐに猿達のところに行き彼等と共にだった。
山を駆け回る、木と木の間を飛び移り川を泳ぎ谷を身軽に飛び越えるがその動きの中でだった。
猿飛は笑顔でだ、大介に言った。
「いや、この修行は」
「どうじゃ」
「祖父殿が授けてくれた中でも」
「猿と共に遊んだことはあってもな」
「ここまではじゃな」
「深く激しく遊んだことはありませぬ」
「そうじゃな、あえてな」
大介はその猿飛以上に身軽に動き周りつつ孫に話す。
「この度はじゃ」
「こうした鍛錬をですか」
「しておるのじゃ」
「わしの為に」
「より強くなりたいならじゃ」
そう思うならというのだ。
「ここまで出来ぬとな」
「なれぬ」
「だからじゃ」
まさにそれ故にというのだ。
「ここまでの修行をしておる」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
「そして?」
「お主ただ強くなりたいだけではないな」
「はい、それはです」
猿飛は木々を手も使って駆け抜けつつ答えた。
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