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とある3年4組の卑怯者

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22 別荘

 
前書き
 今回は藤木とリリィが初めて出会った場所が舞台となります。 

 
 藤木はリリィの別荘に来ていた。たまたま次の月曜も祝日で学校が休みとなり、日月と2日間の休みを利用して行くことにしていたのだ。

 リリィの方から別荘に行こうと藤木を誘ったのだった。リリィの両親も彼女が学校でいい友達ができたことを知っており、同行を承諾していた。藤木は行っていいのかどうか自分の両親とも相談すると言って返答を待たせた。

 その日の夜、藤木は父と母に相談した。
「父さん、母さん、この連休、リリィから別荘に誘われたんだけど行ってもいいかな?」
 母が答えた。
「別荘ねえ、いいじゃない、折角誘ってもらったんだから、行ってらっしゃいよ」
「リリィってあのイギリス人の女の子か?お前も結構モテてんだな」
 父が息子をからかった。
「父さん・・・」
「いいかい、茂、卑怯と言われるようなことするんじゃないよ」
 母が釘をさすように言った。
「わ、わかったよ・・・」
 藤木は凍り付いて答えた。自分の欠点である「卑怯」という言葉を親に出されたからであった。
(まあ、リリィと一緒だから楽しみだ。こんないいこと滅多にないしな・・・)
 それでも藤木は内心ではリリィと共に出かける事ができて嬉しかった。

 待ち合わせ場所でリリィの家に向かうと、リリィの父が手配したというタクシーに乗ることになった。移動にタクシー使うとはさすがお金持ちだな、と藤木は思った。こうして別荘に着くと、藤木は早速リリィの家族とくつろいでいた。そんな時、リリィが藤木に声をかけた。
「藤木君、一緒に浜辺(ビーチ)行こう?ママ、パパいい?」
「え、あ、うん」
「Okay、しかし、海には入るなよ」
「泳ぐ時期じゃないし、風邪ひくからね」
「ハーイ!」
「行ってまいります・・・」
 二人は浜辺へと向かった。
 
 藤木とリリィは浜辺で貝殻を集めていた。藤木はリリィと初めて会った時もこうして貝殻を拾っていたことを思い出していた。
(そういえば、あの日もそうだったな・・・)
 リリィは当時の自分をどう見ていたのか、藤木は気になった。リリィが話しかけてきた。
「藤木君、初めて会ったときも、あなたは貝殻を拾っていたわよね」
「あ、うん・・・、そうだったね・・・」
「皆が泳いでいるのにあなたは体の調子が悪くて泳げなかったのね」
「う、うん・・・、そうだったね・・・」
 藤木は頭の中で嫌な感じがした。確かに自分だけは泳がなかった。しかし、本当の理由は、海パンを忘れたのだ。山田笑太も忘れていたが、パンツで泳いだ。しかし、自分は山田と同じようにパンツで泳ぐなんてそんなことしたら山田みたいなバカに見えて嫌だった。だから浜辺で貝殻を拾っていたのだった。そんなことリリィに言うと、恥ずかしくて言えなかった。だから藤木は「体の調子が悪い」と嘘をついたのだった。
 今は泳ぐ時期ではないので海パンを持ってこなくても安心した。

 藤木とリリィは様々な種類の貝殻を集めた。
「藤木君もいろんなの集めたわね」
「う、うん・・・」
「私達が集めたの、持って帰りましょう!」
「そ、そうだね・・・」
 藤木は少し照れながら言った。
 藤木とリリィが二人きりになるというのは久々だった。確かリリィの家(清水市内にある方)へ初めて訪れた時以来だったかもしれない。藤木にとっては今自分が幸せだと感じている瞬間だった。

 ・・・の(はず)が隣のビーチから声がした。
「あれれ?そこにいるのは藤木君とリリィじゃないか!?君たちもここに来てたんだね~」
 二人が声のある方向を向くとそれはクラスのバカ男子、山田だった。
「や、山田君!?なんで君がここにいるんだよ!?」
「アハハハ、そりゃあ、花輪クンにしょう待されたんだじょ~」
 山田は笑いながら言った。
「え、じゃあ、花輪クンもここにいるの?」
 リリィが聞いた。
「アハハハハ、もちろんだじょ~」
 山田は笑いながら答えた。そのとき、別の二人組が寄ってくる。
「山田、お前こんなとこにいたのか」
 はまじとブー太郎だった。
「おー、藤木にリリィじゃねーか。お前らも来てたのか」
「は、浜崎君に富田君・・・」
 藤木はリリィと二人きりでいたいと思ったのに、ここでクラスメイトと出くわすなんてやっぱりツイてないなと落胆していた。
「あなたたちも来てたの?」
 リリィが聞いた。
「あー、花輪がお手伝いのメアリーさんの孫が日本に来たっていうんで、一緒に遊ぶことにしたんだ」
「へえ~」
「ところでお前たち二人で何やってるんだブー?」
 ブー太郎が聞いた。
「私たちも別荘で休息(リラックス)しに来たの。藤木君も誘ってね」
「藤木を誘うってことはリリィは藤木が好きなのかブー?」
 藤木は心臓の鼓動が強くなった。もし本当にそうならどうしようか迷った。藤木はリリィの家で嘗て自分があげた貝殻を彼女から見せてもらった時、「素敵」とは言われた。しかし、あくまでリリィは「好き」とは言っていない上、花輪にも魅力を感じているのでやや気になった。
「それはわからないけど、藤木君は私の友達だからね・・・」
 リリィはやや照れて答えた。藤木は彼女が自分の事を「好き」か知ることはなかったが、友達として扱ってくれている事にやや嬉しく思った。
「そーだ、お前らもよかったらこっちに来ないか?さくらや穂波とかもいるぜ」
「いいわね。行こう、藤木君!」
「あ、うん・・・」
 藤木とリリィは別荘に戻り、リリィの両親に断って花輪家の別荘に向かった。

 藤木とリリィは花輪家の別荘に入った。花輪とヒデじい、そして別荘の手入れをしているメアリーに出会った。
「こんにちは」
「Hey、君たちもここに来ていたなんて偶然だね、baby」
「どうもこんにちは、リリィさん、藤木君」
 ヒデじいがお辞儀をして言った。
「ドウゾ、お上がり下さい!ワタシのマゴも遊びに来ていますのでゼヒイッショに遊んであげてください!」
 メアリーは二人を歓迎して言った。
「ありがとうございます!」
 リリィが返事した。二人が上がってみると、山田やはまじ、ブー太郎の他、まる子やたまえ、永沢、丸尾、みぎわもいた。その中に見知らぬ外国人少女がいた。きっとはまじが言っていたメアリーの孫だろう。
「あ、藤木にリリィ!アンタたちも来てたんだ~」
 まる子が驚いた。
「あ、うん、そうなんだ・・・」
 藤木が答えた。
「そうだ、君たちにも紹介するよ、メアリーの孫のエミリーだよ」
 花輪が外国人少女を紹介した。
「ハ、ハーイ・・・」
 エミリーは恥ずかしそうに挨拶した。
「ハーイ!」
 リリィが英語で返した。二人は英語でお互いを自己紹介しているようだった。藤木は英語を話せるリリィが羨ましく感じていた。 
 

 
後書き
次回:「暴走」
 エミリーと出会った藤木とリリィ。エミリーは花輪に惹かれていくものの、それに対してみぎわは彼女が気に食わず・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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