| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ百三 霧を極めその九

「止めておく」
「そうされますか」
「うむ」
「これまで言われた通りに」
「そうする」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「大助をしかと育てていこう」
「それがしが人の優しさを教え」
 そして十勇士達もだ、彼等にしても大助には極めて優しい。甘いと言っても過言ではない程にだ。
「そしてじゃ」
「父上が人の厳しさを」
「教えよう」 
「それでは」
「大助も然るべき時が来れば」
 その時はというのだ。
「働いてもらおう」
「さすれば」
「御主達とわしが育てればな」
「しかとした者になり」
「必ずな」
「よき者になりますな」
「そうしてよき働きをする」
「さすれば」
 幸村も確かな顔で答えた。
「やりましょう」
「大助を育てることもな」
「わかり申した」
 こうしてだ、幼い大助も育てられていった。彼もまた日一日と育っていてよき者になろうとしていた。
 その大助を見てだ、また言った幸村だった。
「親となるのはよきことじゃな」
「子が育つのを観られるから」
「だからですか」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「実にな」
「そうですか、殿もですな」
「親となられてですな」
「お子の大事さを感じられる」
「そうなっておられるのですな」
「うむ、子は銀や金よりも尊いというが」
 万葉集の山上憶良の言葉も思い出していた。
「やはりな」
「その通りですな」
「子は尊い」
「どの様な宝よりもですな」
「尊いですな」
「そうしたものですな」
「そうじゃ」
 まさにとだ、幸村は十勇士達に答えた。
「そう思う、だから元服まで育ってな」
「そして、ですな」
「そのうえで、ですな」
「さらにじゃ」
 元服してからもというのだ。
「長生きして欲しい、そして拙者もじゃ」
「長生きされたい」
「そう思われていますか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧