| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~西風の絶剣~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第21話 D∴G教団壊滅作戦 中編

 
前書き
 アーツについて一部独自設定を入れました。 

 
side:ルトガー


「行くぞ!」


 俺は刀を構えて魔獣ナイトメアに突っ込んでいく。魔獣は手の空いた穴をこちらに向けてくる。するとその穴から熱線のようなものが繰り出された。


「その穴はその為に開いてるのかよ、だが遅い!」


 熱線の速度は大したことはなく即座に反応してかわしていく、そして跳躍して魔獣を斬りつける。


「か、固ってえ!?」


 だが魔獣の体は鉄よりも固く傷をつける位しか効いてなかった。痺れた手を振っていると魔獣が大きな巨体で体当たりしてきた。


「おっと、危ねえな」


 だがそこまで早くはなく楽にかわして今度は背中を切り裂いた。魔獣がこちらに気を取られている内にアリオスが刀を抜き跳躍する。


「二ノ型『疾風』!!」


 アリオスの姿が消えた瞬間魔獣を斬撃が襲った、そして立て続けに魔獣を切り裂いていく。あれが八葉一刀流の奥義か、凄まじい威力だな。あの固い体にダメージを与えているじゃないか。


「やるじゃないか、アリオス!」
「この程度は造作もない、しかし中々に固いな」


 攻撃を中断したアリオスは俺の方に下がってきた。あれだけ切っても魔獣はまだ生きている。


「ルトガー殿、俺が囮になるからお前が一撃を奴に与えてくれ。破壊力はお前の方がありそうだからな」
「そういうのなら得意だぜ、任せておけ!」


 俺とアリオスは一斉に魔獣に向かっていく。作戦通りアリオスが魔獣に攻撃をしながら気を逸らしていく、そして魔獣が巨体を使ってアリオスを押しつぶそうとしたがアリオスはそれを難なくかわした。


「今だ!」


 俺はアリオスの言葉に頷いて大きく跳躍して刀を上段に構える、そして勢いよく振り下ろした。


「おりゃあぁぁぁぁあああっ!!」


 ズガアアァァァァアアアンッッ!!


 渾身の一撃が魔獣の背中に当たり大きな衝撃が響く。魔獣の体には罅が入り緑色の液体が血のように流れている。正直グロいぜ。


 だが俺はこんなのは子供だましだったと後に気づくことになる。魔獣の顔にも罅が入っていきボロボロと崩れ落ちた。


「な、なんだこりゃあ!?」
「……ッ!」


 魔獣の顔が壊れて中から出てきたのは……人間の顔だった。それもいくつもの人間の顔が寄せ集まったようなものだ。流石に俺も思わず声を失った。


「何とも不気味な……」


 イルメダがそう言うと魔獣の下半身についていた球体が光りだした。


「何だ?奴の下半身が光りだしたぞ?」


 光が止んだ瞬間地面が激しく揺れだし亀裂が走っていく。俺とアリアスが素早くその場を離れると大きな爆発が起こる。


「今のはアーツ『グランドプレス』か!?」


 奴が使ったのは『アーツ』と呼ばれる導力魔法の事だ。導力というのは七耀石と呼ばれる鉱石から生み出されるエネルギーの事でこの世界には欠かせない存在だ。


 戦術オーブメントは導力器を使い内部にため込まれた導力を媒体にして使用者の肉体とシンクロし魔法現象の展開プロセス構築を代行する……言ってる俺もよく分からんが簡単に言えば凄い魔法を使うことが出来るって事だ。
 

裏ルートで非売品や訳アリの物が流れてくることもあり、俺達も自分様にカスタマイズした戦術オーブメントを持っている。


「キュァァアアアッ!!」


 魔獣が方向をあげて下半身の機械が光りだす、すると今度は足元から土で出来た刃が飛び出した。


「今度は『アースランス』か、あの機械は巨大な戦術オーブメントってことか!」
「なら攻撃後の力を溜めているときがチャンスという訳だな」


 なら話は速いぜ。俺は奴が放つ熱線をかわしながらアーツの攻撃を待つ事にした。アーツは強力だが発動までに時間がかかる、強力なアーツなら更にな。アリオスは奴に大技を使わせてその後の隙を狙う作戦に出たわけだ。


「コオォォオォオッ!!」


 そう言っている内に魔獣は力を溜めだした。そして上から炎の塊がいくつも降ってくる。


「『ヴォルカンレイン』か、アリオス!俺があれを防ぐからお前は突っ込め!」
「分かった!」


 俺は双剣銃を出して炎の塊を打ち抜いていく、そしてその隙にアリオスが切りかかっていく。


「これで終わりだ!」


 アリオスが振るった刀が魔獣に当たる……その時だった!


 ガキンッ!!


 魔獣に攻撃が当たる瞬間アリオスの攻撃が弾かれた。あれは『アダマスシールド』か!?馬鹿な、そんな高位アーツをあの一瞬に出せる訳がない。でも奴は実際にやってのけた、どういう事なんだ?


 攻撃が弾かれたアリオス目がけて魔獣は巨大な水の塊を放つ、あれは『ハイドロカノン』か!アリオスは刀を盾にして防ぐが大きく吹き飛ばされてしまった。


「ぐうッ!」


 着地は出来たがアリオスは体制を崩してしまう、そこに追い打ちをかけるように魔獣から稲妻の光線がアリオスに放たれる。


「アリオス!」


 俺はアリオスに前に立ち『ジャッジメントボルト』を刀で打ち消した。


「大丈夫か、アリアス」
「ああ、すまない、助かった。だが奴は何だ?あれ程の高位アーツを瞬時に使いこなすとは……」
「噂でアーツを瞬時に使いこなす男がいるってのを聞いたことがあるがそれ以上だぞ」
「うふふ、驚いてるようね」


 突然イルメダが話しかけてくる。


「何だいきなり、気が散るから黙っていろ」
「貴方たちはアーツというのはどうやって放たれるか分かるかしら?」
「……」
「無視は酷いわね、まあいいわ。アーツというのは戦術オーブメント内に蓄積された導力を媒体にして使用者の肉体とシンクロし魔法現象の展開プロセス構築を代行して起こす現象……簡単に言えば使用者の精神力によってアーツの威力や発動までの時間が決められるのよ。高位アーツになればなるほど時間がかかるのは精神力を大きく消耗するため、だから人間一人では限界があるの」
「おい、何が言いたい?」
「だから私は思ったの、アーツを効率よく使う為には沢山の肉体があればいいんだって……だから私は作った、子供を使ってね」
「人間の子供だと……!?」


 俺はこの魔獣が人間で作られたことを理解してしまった。


「貴様……子供たちを魔獣にしたのか!」
「あら、流石は警察官、理解が早いのね。ええそうよ、このナイトメアは実験で廃人になった子供を再利用して作られた生物兵器、機械の頑丈な体に生物の柔軟な動きを取り入れた私の最高傑作よ」
「ふざけんじゃねえ!てめえには良心ってもんがねえのかよ!」
「廃人になって死んだも当然の子供を有効に使ってあげたのよ?この子の元となった子供達も喜んでるわよ」


 アリオスの質問に嬉しそうに説明する外道女、しまいには子供たちを有効に使った?こんな姿にされて喜んでるだと?こんなの……子供もその親たちも報われねえじゃねえか!!


「てめえは絶対許さん、死なないレベルでボコボコにしてやる……!」
「俺も娘がいる……だからこそお前を許せん!子を奪われた親たちの怒りを思い知らせてやろう!!」


 俺とアリオスは怒りの表情を浮かべながらイルメダを睨みつけた。


「そんな本気で切れちゃって馬鹿みたい。まあ貴方たちがどれだけ怒ろうとナイトメアには勝てないわ。殺りなさい、ナイトメア!」


 イルメダが叫ぶと魔獣は再びアーツの体制になる、俺たちは攻撃を放つがアダマスシールドに防がれてしまう。


「キュアアァァアァァッ!」


 魔獣が叫ぶと上空に巨大な魔方陣が現れて更にそこから巨大な腕が現れた、あれはまさか『クラウ・ソラリオン』か!?


「まずい、こんなところであんなもん撃たれたらこのロッジが吹っ飛ぶぞ!?」


 だが時は既に遅く、巨大な腕から光線が放たれた。


「クソッタレが!!」


 俺とアリオスは光線を刀で受け止めるがすさまじい衝撃に思わず膝をついてしまった。


「くそ。何て威力だ……!」
「これでは動けんぞ……!」


 何とか奴に反撃をしたいところだが光線の威力が高くて身動きが取れなくなっちまった。


「あはは、大口を叩いた割りには無様ね。さあナイトメア、トドメを刺しなさい!」


 イルメダがそう命令すると光線の威力が更に上がった、このままじゃ不味いぞ……!


「さあ、これで終わりよ!」












「そうはさせないぞ!」


 突然何者かの声が聞こえる。だが俺には分かるぞ、この声は間違いない!アイツだ!



「フィー、行くよ!」
「了解!!」


 俺たちがいる空間の上にある高台から俺の息子たち、リィンとフィーが飛び降りて魔獣に攻撃を放つ。


「何、新手!?」


 イルメダが突然の乱入者に慌てる、それと同時に魔獣が攻撃された為か光線の勢いが弱まった。


「ルトガー殿、今だ!」
「応よ!」


 俺とアリオスは力を合わせて巨大な斬撃を放ち巨大な腕を真っ二つにした。


「ぐっ、しまった!ナイトメア!奴らに攻撃を……」
「させん、『紅葉切り』!!」


 魔獣がアーツを発動させる前に、アリオスが魔獣を切り裂き強制的にアーツを解除した。


「ルトガー殿、やれ!」
「任せろ!」


 俺は魔獣目がけて大きく跳躍した。すまねえな、俺にはお前らを助けてやれねえ。せめてこれ以上苦しむ前に楽にしてやるからな。


「猟兵王が一撃、見せてやるぜ。『ギルガメスブレイカー』!!」


 双銃剣からありったけの銃弾を魔獣に喰らわせる、そして一閃で斬りつけて俺は大きく跳躍した。そして双剣銃を魔獣に投げつけて突き刺して動けなくさせ、最後に渾身の力を太刀に込めて魔獣に叩きつけた。


「……アリガトウ」


 魔獣が消える前にそんな言葉が聞こえた。ありがとうか……せめて空の女神の元に行き今度は幸せな生き方をしてもらいたいぜ。


「バ、バカな……私のナイトメアが……に、逃げなくては!」


 イルメダは魔獣が倒されたと知るや早々に逃げ出そうとした。当然そんな事はさせないがな。


「おい、どこに行くんだ?」


 俺はイルメダの前に立ちいく手を阻んだ。


「な、いつの間に!?」
「言ったよな。お前は死なない程度にボコボコにするってよ……」
「お、女を殴るつもり!この人でなし!」
「そりゃてめえの事だろうが!!」


 ドガッ!!


 俺はイルメダの顔面を思いっきり殴ってやった。イルメダは数回地面にバウンドして壁に激突してその場に倒れた。痙攣してるから生きてるだろ。


「団長!大丈夫ですか?」
「おお、リィン、フィー。よく来てくれたな。お前らが来てくれなかったら流石に危なかったかもな」


 俺はリィンとフィーの頭を撫でる。


「アリオス、取りあえずこいつらふんじばって外に連れて行くぞ。他の奴らもまとめて縛っておく」
「そうだな、全員しばりつけてガイたちと合流するとしよう」
「ああ、リィン達も手伝ってくれ」
「「了解!!」」


 さてとこっちは何とかなったしあとはガイたちと合流するか。早く子供たちの供養もしてやりたいからな。


 
 

 
後書き
 因みにルトガーとアリオスは魔獣が子供の肉体で作られたという事は流石にショックが大きいということでリィンとフィーには話してません。



ーーー オリジナル魔獣紹介 ---


『ナイトメア』


 イメルダが錬金術などの技術を使い生み出した人工魔獣、実験で廃棄された子供達の肉体を使っており高位アーツを略一瞬で使うことが出来る。元ネタは『メトロイド』のナイトメア。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧