恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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726部分:第五十八話 三姉妹、反乱を起こすのことその七
第五十八話 三姉妹、反乱を起こすのことその七
「あ奴はどうも戦は好きではないようじゃが」
「えっ、そうなのですか!?」
「それは初耳ですが」
「武の方では」
「いや、あ奴は戦をしたことはない」
それは大将軍である何進ならば知っていることだった。
「官位も文官のものじゃしいつも着ている服もじゃ」
「そうなのですか」
「噂では血を好むと言われていますが」
「そうではないのですか」
「意外ですが」
「擁州自体も平穏というしのう」
彼女の統治の結果である。そうなっているのだ。
「だから戦には不向きじゃが」
「しかしあの方の下には優れた将がいます」
「それも一人ではありません」
このことはよく知られていることだった。
「あの飛将軍呂布にです」
「そして張遼将軍」
「二人がいます」
「ですから」
こう話していく。しかしであった。
ここでだ。一人が言った。
「いや、もう一人いなかったか?」
「もう一人とは?」
「妹君の董白殿ではないのか?」
「軍師の賈駆殿ではなく」
「いや、他に一人いた筈だ」
こう話すのだった。
「誰だった?あの銀髪の」
「銀髪?」
「銀髪なのか?」
「そして髪が短い」
このことも指摘される。
「しかも斧を使ったな」
「ううむ、誰だそれは」
「そういえばいたような気がするが」
「一体誰だった?」
「その人物は」
「そういえばいたような気がするのう」
何進もいぶかしむ顔で首を捻るのだった。
「何か随分と目立たぬのがじゃ」
「まあ目立たないですし」
「特に気にすることもないですね」
「それでは」
その人物についてはこれで話が終わったのだった。しかしだ。
話は決まりかけていた。何進は意を決した顔になって述べた。
「ではもう一人はじゃ」
「はい、それでは」
「董卓殿にも」
部下達も頷き話が決まろうとしていた。しかしである。
ここでだ。ある少女が出て来た。白く丈の長い、そしてゆったりとした見事な服である。
背はあまり高くはない。黒髪を長く伸ばし切れ長の琥珀を思わせる目をしている。顔は白く顔立ちはまだ幼い。その少女が出て来て言うのであった。
「将軍、お待ち下さい」
「司馬慰か」
「はい」
少女は何進に名前を告げられ静かに頷いたのだった。
「私の考えを述べさせてもらいたいのですが」
「うむ、何じゃ」
何進の顔に微笑みが宿った。司馬慰を見ると急に笑顔になるのだった。
「申してみよ」
「ここは董卓殿よりもです」
「他に相応しい者がおるのじゃな」
「はい、その通りです」
こう何進に言う司馬慰だった。
「ですからここはその方に」
「そんな者がいたか?」
「いや、知らない」
「そうだな。董卓殿よりもとは」
「一体」
「北にいます」
司馬慰は美しいが冷たい響きのする、氷を思わせる声で述べた。
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