とある3年4組の卑怯者
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
21 洋琴(ピアノ)
前書き
城ヶ崎さんと永沢が再び顔を合わせます。果たして仲直りできるのでしょうか・・・?
そのころ永沢家では・・・。
「え!?城ヶ崎の家に行ったって!?」
「ええ、謝りに行ったんだよ。それに太郎が、城ヶ崎さんのピアノを気に入ってさ、また遊びに行く事にしたんだ」
「太郎、なんで城ヶ崎と仲良くなるんだよ・・・!」
「太郎に当たるんじゃないよ!あんたが城ヶ崎さんを傷つけたのがいけないんじゃないか!?あんた、反省してるの!?」
「そりゃ反省してるさ・・・」
「じゃあ、あんたも城ヶ崎さんの家に行って謝ってきな!」
「う、わかったよ・・・」
翌日、不登校二日目。城ヶ崎は昨日よりも明るくはなったが、まだ学校へ登校するまでの回復には至っていなかった。
(永沢・・・、アイツ本人にはなんか会いたくない・・・)
城ヶ崎は永沢と顔合わせる気力がまだないのだ。永沢の母と弟・太郎とは交流ができたが・・・。
「姫子、永沢さんと太郎君が来たわよ」
城ヶ崎の母が呼んだ。
「あ、うん・・・」
永沢の母と太郎が玄関にいた。
「おはようございます」
「おはよう、姫子ちゃん」
「あー、あー!」
「おはよう、太郎君。今日もピアノで遊ぼうね」
城ヶ崎は太郎と再び遊んだ。太郎は鍵盤を弾くことを満喫しているようだった。
「たあーい、たあーい!」
「太郎君、ピアノ好き?」
「あー!」
「それじゃあ、いいものあげるわ。ママ、私が昔使ってたおもちゃのピアノまだあったよね?」
「ええ、ちょっと待ってね」
城ヶ崎の母はしばらくしておもちゃのピアノを持ってきた。
「ありがとう、これ太郎君にあげるわ」
「たあーい!」
「姫子ちゃん、本当にいいのかい?」
「はい、太郎君に使ってくれたら私も嬉しいです」
「よかったね、太郎」
「あー、あー!!」
太郎は非常に喜んでいた。
そのころ学校では永沢が昨日母に言われたことを思い出していた。
「永沢君、今日はなんかイライラしているね」
藤木が聞いてきた。
「ふん、君には関係ないさ!」
(やっぱり城ヶ崎さんとのことだな・・・)
藤木は永沢の心の中を察した。
笹山はまる子、たまえ、とし子と話をしていた。
「笹山さん、大丈夫だよ、きっと城ヶ崎さんは学校に戻れるよ」
とし子が笹山を励ました。
「うん、でもやっぱり永沢君が謝んなきゃ、このまま学校に顔を出すことはないと思うの。藤木君も永沢君に謝らせるようやってくれているんだけど・・・」
「やっぱり永沢が謝んなきゃ話にならないか・・・」
たまえが肩を落とした。
「うん・・・」
学校の時間でいうと、放課後の時間、城ヶ崎家では永沢の母と太郎は既に帰っていた。
(永沢・・・。どうしてもアイツだけには会いたくないと思っちゃうな・・・)
しばらくして再び誰かが来た。城ヶ崎の母が出迎えると、永沢の母が再び来たのだった。
「あら、永沢さん」
「再びお邪魔してすみません。ウチの子を連れてきました。ほら、お兄ちゃん!」
「う・・・、すみません」
「まあ、今すぐウチの子呼びますね」
城ヶ崎の母は娘の部屋に来た。
「姫子、永沢君よ」
「永沢っ!?」
「うん、謝りに来たんだって」
「ええ、分かったわ」
城ヶ崎は母と共に玄関に出た。
「永沢・・・」
永沢の母が息子に催促する。
「ほら、お兄ちゃん、謝んな!!」
「わかったよ、城ヶ崎、一昨日はあんな酷いこと言って本当にごめん。それから太郎と遊んでくれてありがとう・・・」
永沢が恥ずかしがりながら謝った。
「わかったわ、もういいのよ。私は永沢のような苦労を知らないから永沢を怒らせるようなことしてたんだし、あんたが文句言いたくなるのもわかるわ」
「そんな、姫子ちゃんは何も悪くないわよ」
永沢の母が言った。
「いえ、私も贅沢しすぎていたんです」
「そんな、姫子ちゃん、責めないでよ」
「いえ、私も永沢にきつく当たったこともありますから・・・」
「あの、城ヶ崎・・・」
「ん?」
「君をこんなにさせた僕が言うのもなんだけど、やっぱり君がいないと、クラスが寂しいんだ。笹山たちも寂しがっているし、どうか学校に戻ってきてくれ・・・」
永沢は泣きながら言っていた。
「わ、わかったわ。あんたも反省しているようだし・・・」
城ヶ崎は永沢につられて自分も泣きそうになっていた。
「まったく、お兄ちゃん。あんたもうこんな事すんじゃないよ。それじゃあ、失礼します」
そう言って永沢の母は息子を連れて帰ろうとする。その時、城ヶ崎が止めた。
「あ、待ってくださいっ!永沢、またこれからも太郎君と遊んでもいい?」
「あ、ああ、太郎も君に懐いているしな・・・」
「なら、今度の日曜、太郎君を連れて私の家に遊びに来て!太郎君にもまたピアノを聞かせてあげたいし・・・」
「わかったよ。じゃあな・・・」
永沢はそう言って去った。城ヶ崎は母に言った。
「ママ、私また学校に行くことにするわ・・・」
「姫子・・・分かったわ」
翌日、城ヶ崎は学校に復帰した。彼女の不登校生活は2日で終止符が打たれたのだ。
「城ヶ崎さん!!」
笹山が出迎えた。
「笹山さん・・・。私学校に戻れるようになったわ・・・」
「よかった。皆心配していたのよ・・・」
「城ヶ崎さん!!」
まる子やたまえ、とし子、リリィが城ヶ崎の復帰を喜んで集まった。
「よかった~、学校に行けるようになったんだねえ」
「ええ、昨日永沢がウチに来て謝ったの」
「永沢が!?」
とし子が驚いて言った。
「うん、それに太郎君と遊んでありがとうとも言っていたわ」
「そうなんだ・・・」
その後、藤木もリリィから話を聞き、城ヶ崎の復帰に安堵していた。
「そりゃよかったね。永沢君、君も素直なとこあるじゃないか」
藤木が永沢を少し見直した。
「ああ、そりゃ、君と違って卑怯じゃないからさ」
永沢の藤木に対する態度は相変わらずだった。
(そんないい方しなくたっていいじゃないか・・・)
「あ、そうそう。城ヶ崎さんが日曜に洋琴を弾いてくれるって。藤木君も行く?」
リリィが招いた。
「そうだね、行ってみようかな・・・」
(日曜にリリィと一緒だなんて・・・)
藤木は気が高揚していた。
「藤木君、君もしかしてリリィと一緒で喜んでいるんじゃないだろうね?」
永沢が心の中を見抜こうとした。
「う・・・」
「別にいいじゃない。藤木君も仲直りに協力してたんだし」
リリィは嫌ではなさそうだった。
こうして日曜、藤木は城ヶ崎家に向かった。
「おーい、永沢君」
「ああ、藤木君」
藤木は太郎を連れている永沢に出会った。
「やあ、太郎君」
「たあ、たあ」
太郎は喜んでいた。
「太郎君、城ヶ崎さんに会うのを楽しみにしているようだね」
「そりゃそうさ。あれだけ遊んでもらったからね」
永沢は無表情で言った。
三人は城ヶ崎家に到着した。
「こんにちは」
「やあ、こんにちは」
城ヶ崎の両親が出迎えた。
「娘は居間で待っているよ」
城ヶ崎の父が言った。藤木たちは居間に向かうと、城ヶ崎がその場にいた。髪型は普段と異なりポニーテールにしており、服は紫のドレスだった。
「いらっしゃい、太郎君、永沢、藤木。この服パパに買ってもらったの。今度のピアノ発表会で着るつもりだけど、今日は皆にサービスでこれを着てを弾くわ」
藤木は城ヶ崎がいつもより美しく見えた。永沢は無愛想な顔だったが、その反面、太郎は城ヶ崎に笑顔を見せていた。
「あー、あー!!」
「太郎君、城ヶ崎さんが綺麗で惚れたみたいだね」
「ああ、そうだね・・・」
その後、リリィたちも到着して、全員が集合した。
「それじゃあ、ピアノを弾くわね」
城ヶ崎はピアノを弾き始めた。皆城ヶ崎のピアノの音色を心地よく聴いていた。城ヶ崎が全曲弾き終わると、拍手喝采だった。
「あー、あー!」
太郎は城ヶ崎のピアノに非常に満足しているようだった。
「太郎君、ありがとう」
城ヶ崎が太郎に感謝した。藤木は太郎とピアノを通して、永沢と城ヶ崎が仲良くなればと思った。
数日後、教室で永沢と城ヶ崎は口論していた。藤木とリリィはその様子を傍観していた。
「本当に仲直りしたと思ったのに・・・」
「まあ、二人の喧嘩はやっぱりこのクラスに欠かせないものなのかもね・・・」
結局はいつもの永沢と城ヶ崎の姿に戻ってしまい、やれやれと思う二人だった。
後書き
次回:「別荘」
連休ができ、藤木はリリィと彼女の別荘に行くことになる。彼女と初めて出会った時を思い出す中、隣の花輪の別荘にも花輪らが来ており・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
ページ上へ戻る