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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 佐為編(桐嶋和ENDルート)
  第39話 sai vs toya koyo

H13年4月 side-Asumi

 大手合いの初日に塔矢名人が倒れて救急車で病院に運ばれた。私は初戦に勝利したが、進藤の塔矢アキラとの対局は不戦敗となった。

 進藤に名人のお見舞いに行かないかと誘われたけど、お世話になった桑原先生や緒方先生ならともかく塔矢名人とは面識もないので断った。

 ある日、toya koyoというアカウントがネット碁で打っていてビックリした。

 対局を観戦していたRX-7(緒方先生)にチャットで「本物ですか?」って尋ねたら。

――ネット碁を覚えれば入院中の先生も退屈しないと思ってね

 というメッセージが返ってきた。

 どうやら病院の許可を貰って緒方先生が塔矢名人の個室にノートパソコンをセットしたらしい。

 塔矢名人とネット碁ができるなんて凄い!

 私も対局を申し込んでみようと思ったけど、対局申し込み者が殺到して大変なことになってるみたいで対局が成立しなかった。

 緒方先生に頼んで対局できるようにお願いしようかなとか考えたけど気恥ずかしくって止めた。

 彼に塔矢名人がtoya koyoのアカウントでネット碁をやってることを伝えて今ならAiとtoya koyoという夢の対決がネット碁で実現できると訴えたけど……。

 彼は「焦らなくても大丈夫」と私の棋譜を並べながら笑って答えるだけった。

 zelda(和谷)やYang(楊海八段)にもtoya koyoがネット碁をしていることを伝えた。

 和谷は「2年前ならsai vs toya koyoが見れたのにーっ!」て叫んで、楊海八段からは中国でも話題になってること、Ai vs toya koyoが見てみたいという返事が来た。

 ichiryuこと一柳先生もまさかホンモノとは思わなかったと――。

 ネット碁で対局した後にチャットで昨日行われた十段戦第4局の観戦話をしながら教えてくれた。

 そして4月の2週目の土曜日、いつも通りに彼の部屋を訪ねると珍しいことに和-Ai-のノートパソコンがなく彼もいなかった。

 もしかして元の世界に戻っちゃったのかと急に不安になって彼の携帯にメールを入れると「今日は用事があるからネット碁でもしといて夜には帰るから」と返事があった。

 焦って送った送信メールの恥ずかしい内容を思い返して、気分転換に軽く一局打とうとネット碁のサイトに繋ぐ……。

 そこに始まったばかりの< sai vs toya koyo >の対局を見つけた。

 私はsaiの対局を見るのは初めてだった。

 和谷と進藤がsaiは凄く強いと言っていたし、正体不明の無敗のネット棋士としてAiと比較されてるのも知っていた。

 けど和-Ai-の底知れない強さを身をもって知っている私としては、saiはあくまでプロに匹敵する力を持った一介のアマチュアといった認識だった。

「持ち時間はネット碁なのに3時間も……」

 ここまでの盤面は平穏だがにtoya koyoはもちろんsaiも噂にたがわぬ実力者だと分かる。

「――あっ、saiから仕掛けた」

 saiの手に対し名人が長考の末の答えを返す。

 あの塔矢名人を相手に互先で一歩もひけをとってない。
 saiがAiに並ぶ強さってネットで言われるのも納得ができた。

「それでも……やっぱり塔矢名人は強い! saiの手がいつの間にか働きを失ってる」

 私が七大タイトルを“天元”を目指すなら乗り越えなければならない強敵の碁を目に焼き付ける。

「……形勢は黒が良いの? 大ヨセも終わりが近づいて来たけど……あ、この白の手は……」

 五冠で国内最高の棋士といえる塔矢名人を相手にこんな素晴らしい碁が打てるなんてsaiって何者なの? 
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