とある3年4組の卑怯者
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19 不登校
前書き
今回からはアニメでも有名な「永沢vs城ヶ崎」ネタですが、できるだけこの作品オリジナルの内容にしたいと思います。
休み時間、藤木はのんびりと本を読んでいた。その時、多くの女子が城ヶ崎の前に集まっていた。リリィや笹山もその輪の中にいる。
「うわあ、そのリボン可愛いねえ」
まる子の誉め言葉が響いた。
「これ、昨日パパが買ってくれたの」
城ヶ崎は花輪程ではないが、なかなかの金持ちである。だから、父に欲しいものを買ってもらえるのだ。
(さすが城ヶ崎さんだな・・・、美人だからどんな服もリボンも似合うんだから・・・)
その時、いつの間にか永沢が席に戻ってきていた。
「藤木君、君、城ヶ崎なんかが羨ましいとでも思っているんじゃないのかい?」
「そ、そんなことないさ!」
「ふん、しかし、城ヶ崎も図に乗りすぎだな。簡単に欲しいものねだれば手に入るとか考えてんだろ。僕んちにはそんなことは許されないね」
「永沢君ちは火事にあって大変だからね」
永沢は藤木のこの一言にムッとした。
「ふん・・・」
(ったく、城ヶ崎め、いつもいい気になっていやがる・・・!)
永沢は憎たらしい目で城ヶ崎を見ていた。
リリィはまる子、たまえ、そして土橋とし子と共に下校していた。
「いや~、城ヶ崎さんはホント色んなもの買ってもらえるから羨ましいよ。ウチなんかすぐ駄目、ダメ、だめってお母さん言うんだ」
まる子は城ヶ崎を羨ましがっていた。
「お金持ちはいいねえ。リリィも別荘持っているくらいだからお金持ちで何でも手に入るんでしょ?」
「うーん、でもあまりにもねだりすぎると無駄遣いするなってママによく言われるわ。勉強とかお手伝いしっかりやるって条件がつくわね」
「う・・・、あたしにゃ無理だね・・・」
その時、四人の後ろから急に声がした。
「ふん、君たち、欲しいものが簡単に手に入るほど世の中は甘くないよ」
永沢だった。
「なにさ、そんなのわかってるよ!!」
まる子が言い返す。
「なら、城ヶ崎なんか見習うことないじゃないか。苦労のない奴にはホント呆れるよ」
「永沢、そんなこと言わなくてもいいじゃない!」
たまえも文句を言う。
「じゃあ、穂波は僕みたいに家が火事になったことがあるのかい?」
「ないけど・・・」
「じゃあ、君たちには僕んちの苦労なんてわからないだろうな・・・」
永沢はそう言って去った。リリィが尋ねた。
「永沢君の家って火事になったことがあるの?」
「そうなんだ。だからもっとひねくれちゃったんだって」
とし子が答えた。
「そう、何だか可哀想・・・」
「リリィ、永沢なんかに同情することないよ!火事にあった当初は確かに可哀想すぎてしょうがなかったけど、今じゃ、慰めようのないくらいひねくれすぎてんだよ。だから親友であるはずの藤木にさえ嫌味ばかり言うんだ!」
まる子が言った。
「そうなんだ・・・」
リリィは永沢について嫌味なところを軽蔑するべきか、火事にあった辛いことで憐れむべきか、分からなかった。
別の日、笹山は城ヶ崎と話をしていた。
「へえ~、ピアノの発表会に着る新しい衣装買ってもらうの?」
「ええ、ウチのパパが買ってくれるんだって」
「凄いわね。今度見てみたいわね」
その時、リリィ、まる子、たまえ、そしてとし子が現れた。
「ねえ、ねえ、どうしたの?」
まる子が聞いた。
「城ヶ崎さん、今度のピアノの発表会の時に着る服をお父さんから買ってもらえるんだって」
「そう、城ヶ崎さん、良かったわね」
リリィが感心した。
「ふん、そんな贅沢できるなんて、君の家はどれだけ苦労を知らないんだろうね」
急に永沢が藤木と共に現れ、口出しした。
「何よっ!あんたには関係ないでしょっ!?」
城ヶ崎が永沢に対抗した。
「永沢、アンタ一々ケチつけんじゃないよ!」
まる子も永沢を非難する。
(ヤレヤレ、また喧嘩か・・・)
藤木は心の中で呆れていた。
「ふん、大体君は調子に乗りすぎなんだ!そんな簡単に欲しいものが手に入るなんて生意気すぎるぞ!!」
永沢が文句をつけた。
「うるさいわね、生意気になんて思ってないわよっ!!ウチのパパが買ってくれるって言ってたんだからっ!!」
「それなら君のお父さんはただの甘やかしすぎだよ!君のお父さんも現実を見たほうがいいんじゃないのかい?!なんでも欲しいものは買えばいいってもんじゃないんだ!!中には欲しくてもお金がなくて買えない人だっているんだぞ!!君にはそんな人たちの気持ちがわかるわけないだろう!?」
「それはちょっと考えすぎじゃないっ!?何もかも我慢しろっていうのっ!?」
「そうじゃない、ただ君は調子に乗りすぎているんだよ!!」
藤木は二人の口喧嘩を止めなきゃと思って心が焦った。
「あ、あの、二人とも・・・」
藤木は喧嘩を止めようとした。しかし、声が小さくて二人には聞こえていない。
「二人ともやめてよ!」
たまえが心配そうに仲裁に入った。
「そうだよ、永沢も文句言いすぎだし、城ヶ崎さんも相手にすることないよ・・・!」
とし子も困った顔で止めた。
「この金持ち女!これだから不自由ない奴は生意気で嫌いなんだ。僕の家みたいに火事にならなきゃ僕のような苦労はわからないだろうな!!」
永沢は自分の嫌な思い出となる「火事」の言葉を発した。
「な、永沢君・・・!?」
藤木は驚愕した。確かに永沢は火事に遭った。しかし、そのために火に用心するように皆に呼び掛けているのに人の家に火事になってしまえなど想像もできない発言をしたのだ。
「何よっ!?それどういう事よっ!?」
「君みたいな嫌な奴は火事になって何もかも燃えて失くなってしまえばいいんだ!そうすれば僕みたいな苦労がわかるだろう!?」
城ヶ崎は永沢のこの一言で震えていた。
「何よ、自分が火事になったからって、そんな人の家に火事になれって、ヒドイわねっ!!永沢のこのバカっ!!タマネギっ!!」
城ヶ崎はベソをかき出し永沢にビンタした。そして教室を出て言った。
「あ、城ヶ崎さん!!」
笹山は慌てて城ヶ崎を追いかけた。
「ふん、ほっとくがいいさ・・・」
永沢は知らん顔で言った。しかし、まる子が激怒した。
「永沢、アンタが悪いんでしょ!?何さ、いくら城ヶ崎さんが嫌いだからってあんなこと言うことないじゃない!?」
「まあ、アイツはそれだけ言われなきゃ、自分が何やっているのか分からないのさ」
その時、藤木も怒りを見せた。
「どう見ても永沢君が悪いよ!君がいちゃもんつけてきたんだし、それに君は火事にあった経験で皆に火に用心するように呼びかけていたじゃないか!!なのに火事になれなんて君らしくないよ!!」
「藤木君、君はそういってすぐ強そうな方に味方する!!そんなんだから君は卑怯って言われるんだ!!」
その時、リリィが怒鳴った。
「今は藤木君の卑怯は関係ないでしょ!!?」
永沢はドキッとした。
「う、うるさい!!皆アイツの味方して!!僕は火事にあったんだぞ!!僕の方が苦労しているんだ!!」
永沢はそう言ってその場を離れた。皆は永沢に怒りを向けて睨みつけていた。
「永沢君・・・、君はどうして嫌味しか言えないんだい・・・?」
藤木はこの時ばかりは親友と思っている永沢に失望した。
城ヶ崎は体育館裏で体を丸めて泣いていた。笹山が慰める。
「もう何よ、あんなのっ・・・!!嫌味ばかり・・・」
「城ヶ崎さん・・・」
「何よ、アイツっ・・・!顔も見たくないっ・・・!!」
「でもそろそろ授業始まるよ・・・」
「う、うん、分かったわ・・・。ごめんね、笹山さん、迷惑かけて・・・」
「ううん、いいのよ・・・」
笹山と城ヶ崎は教室に戻った。
放課後、城ヶ崎はさっさと帰ろうとした。
「城ヶ崎さん・・・?」
笹山は城ヶ崎さんと一緒に帰ろうと思って止めた。
「笹山さん、ごめん・・・一人で帰らせて・・・」
城ヶ崎はそう言って駆け足で去っていった。笹山は城ヶ崎が心配でならなかった。
翌日、城ヶ崎は学校に来ることはなかった。
リリィが城ヶ崎を心配して、藤木に話しかけた。
「城ヶ崎さん、来なかったわね」
「うん、やっぱり永沢君の言葉で相当傷ついたんだね・・・」
「今日城ヶ崎さんの家行かない?」
「う、うん、そうだね・・・」
リリィは笹山を呼んだ。
「あ、笹山さん。今日城ヶ崎さんの家に行かない?私たちすごく心配してるの」
「そうね、昨日ピアノのお稽古休んでたもの」
「えっ・・・!?」
藤木もリリィも驚いていた。外に出たくないくらい永沢が城ヶ崎に浴びせた暴言の精神的なダメージは相当大きいものだと・・・。
その頃、城ヶ崎は自宅の自分の部屋で座り込んでいた。
後書き
次回:「赤子」
永沢の暴言によるショックで不登校となり、性格も暗くなった城ヶ崎。そんな中で彼女は永沢の母と永沢の弟・太郎と出会う・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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