和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
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第一部 桐嶋和ENDルート
第34話 プロ試験最終日
H12年10月後半
第26戦、進藤ヒカルと和谷義高の対局は進藤が勝利。
本田が片桐に敗れ、わずかにあった合格の可能性が消える。
越智康介 24勝 2敗 最終戦は進藤
奈瀬明日美 23勝 3敗 最終戦は和谷
進藤ヒカル 23勝 3敗 最終戦は越智
和谷義高 23勝 3敗 最終戦は奈瀬
伊角慎一郎 22勝 4敗 最終戦は日野
最終戦を前に越智がプロ試験の合格を決めた。
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「大混戦だよな」
休憩室での飯島のぼやきに周囲の院生たちが反応する。
「奈瀬と和谷は勝った方がプロ入り。進藤も越智に勝てばプロか」
「負けず嫌いの越智が進藤に勝った場合は?」
「たぶん4敗を守る伊角さんを含めて三つ巴のプレーオフ」
「ここは奈瀬にも和谷にも勝ってる足立の意見を聞こう」
「今年は和谷も好調だけど、俺は奈瀬の方が怖かったよ」「怖い?」
「対局は何とか勝った……いや負けたと思って数えたら半目だけ残ってた」
「序盤に自分でも最高の碁が打てて勝ちの体勢を作って後は守れば勝てると思ってた」
「けど奈瀬が無謀と思えるような強引な手順で攻めてきて――
なんとかこらえて、こらえて…ああ負けたなと思ったときに終局した」
「結果は半目残ってたけど……とても勝った気がしない碁だったよ」
「ちぇっ。奈瀬の奴、……今年になって急に変わったよな」
会話に交じっていた奈瀬と同い年の小宮が嘆く。
「そういえば若獅子戦の前に言ってたよ。目標ができたって」
「目標? プロになることか?」
「いや。プロになってタイトルを取るんだって言ってた。」「……タイトル? 女流の?」
「七大タイトル。プロになって女性初のタイトルホルダーになるんだって」「本気かよ!?」
「他人のこと言ってないで俺も精一杯打たないとな。明日につながる碁を」
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「時間になりました、始めてください」
篠田院生師範の凛とした声が室内に響き渡る。
「「お願いします」」
十四面の各々の碁盤に石音が響いた。
奈瀬明日美は深呼吸をして集中する。私は負けない。私の後ろには和-Ai-がいる。
……和谷は強い。好調なだけじゃない。
絶対にプロになりたいっていう強い意志が手から伝わる。
私には石の活路が見つからない……。
けど……だけど……Aiなら、もしAiだったら……この広さがあれば苦もなく中央の厚みを作れると思う。
奈瀬が今までの常識では説明できない手を平然と打つ。
私はプロになる!私も七大タイトルを本気で目指すよ!
私は彼が大切に想う女性-桐嶋和-じゃないけど、私も憧れた師匠の進んだ道を目指すから!
彼は笑って冗談のように話してたけど、和-Ai-先生の声が聞こえるってホントの話だったんだ。
プロ棋士でさえ躊躇するような中央に置く手を迷いなく放つ。
人工知能のように膨大な計算力を持って中央の厚みを計算することは私にはできないけど……。
今まで和-Ai-に教わった私の新しい感覚に身をゆだねる。
だからお願い!私の碁を見て!!
これが今の私が打てる最高の碁!!
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