世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
白虎日和
「え?今蒔風いねぇの?」
「はい・・・・いま主は・・・・ビスコッティとの戦興行に向けて・・・・準備中なので・・・・」
「うぅ・・・困ったよ・・・がお」
「EARTH」本部局長室前
そこにいたのは、神尾観鈴と国崎往人。
そして、扉の前で彼等を出迎えた青龍だ。
扉を開けると彼らがちょうどいて、今は忙しいので取り合えない旨を伝える。
「なにか・・・・あったのですか?」
「ちょっとなくしものが・・・・」
「いや、まあ大事なもんだけど、しょうがないッちゃないし」
「そんなことないよ!!あれがないと往人さん飢え死んじゃう!!」
「オイコラ観鈴」
「お金ないんだよ!?仕事ないんだよ!?一文無しだよ!?無一文だよ!?」
「なぜそこまで金がないことを強調するんだ」
「あう・・・がお」
話を振った青龍ではあるが、勝手に二人で盛り上がられて少しおいて行かれてしまう。
青龍はもともと静かなので、言葉を挟むタイミングを失いまくっている、ともいえるが。
「なにしてんの~?」
「あ、白虎さん!!」
と、そこに扉を開けてやってきたのは白虎だ。
開けた扉が青龍に当たりそうになるが、それを紙一重で青龍は静かな顔をして躱す。
危ないと言うのに悪びれないのは、これくらいは平気だと思っているのか、白虎が楽天的だからか。
「青龍、まだここにいたの?舜が飲みモン買って来てって頼んでからけっこー経ってるよ?」
「・・・・しまった」
そう言って、青龍がゆっくりと駆け出していく。
「んで?お二人は何を?」
「あ、それがですね・・・・」
気になる事には首を突っ込む白虎。
観鈴は聞かれるがままに話し始める。
「それがね・・・・」
「うん」
「往人さんの人形がなくなっちゃったの」
「・・・・それだけ?」
「それだけ」
「なんだ」
「なんだってことはないよ!!」
白虎の軽い一言に、観鈴がプンプンと怒りながら語りだす。
「往人さんの大切な人形だよ?ずっと昔から一緒にいて、富める時も、貧しきときも、苦しいときも健やかなる時も一緒にいた人形だよ!」
「まて。俺はあれと結婚はしてねぇ」
「でも富める時ってあったの?」
「あ・・・ごめん往人さん」
「謝んなやゴラァ」
「手伝ってやれよ、トラ公」
「天馬」
と、そこで再び扉が開いて、顔を出してきたのは天馬である。
一応「トラ公」の発言に文句を言いながら、白虎は聞く。
「いいの?いまみんな忙しいでしょ」
「あー、大丈夫だ。と言うか早く行け」
「?」
「お前がついさっき書類ぶちまけたせいで大変なことになってんだからお前はどっか 行 っ て ろ や 」
ギィ、と少しだけ扉が開き、局長室の扉が開かれる。
そこには―――――
「ぎゃぁあああ!!こっちはマジュウ対応マニュアルのページがバラバラになってるゥゥウウウ!!」
「なぜじゃ・・・・十三時間もかけて書類を時系列通りに並べたのに・・・・・またバラバラになっとる・・・・」
「書類仕事自体は普通なのに、どうしてこう白虎が絡むとめちゃくちゃになるのだ!?」
「行きなさい。ホント頼むから行って来い(怒)」
「・・・・ごめんなさい」
いつもと違い、丁寧な言葉遣いの天馬に言い返せなくなる白虎。
こうして、白虎は観鈴たちについて行くことになったのだ。
数分後
「主・・・・飲み物・・・・買ってきました・・・・今開けます・・・・よ!」
「バカ青龍、全力疾走してコーラ開けると――――」
ブシャァッッ!!(開けた瞬間キャップから円形に広がるコーラ)
「「「「ノぉォォォオオオオオ!?」」」」
「主は無事か!?」
「ダメだ・・・・机に突っ伏して気絶してる」
「白虎が・・・・焦らすから・・・・」
「 ま た あ い つ か 」
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「と言うわけで!!過去のことは振り返らない!!名探偵白虎の登場だよ!!」
「いや、反省しようぜ」
そんなこんなで、やってきたのは神尾家である。
往人にしても、あの人形が見つかるならばそれに越したことはない。
というか、できれば見つかってほしい。
「だってゆきとん、あの人形無いと何ができるのか全く分からないしね」
「うるせーな!!悪かったな微弱な力でよ!ってか、今はその力もねーよ!」
国崎往人は、掌に乗るほどの小さな人形を操ることができる。
それを見世物にして昔は旅をしていた。
最も、今になっては観鈴を解放するためにその法術の力を使い果たし、何もできないのだが。
「で?いつ無くなったの?」
「無くなったのに気付いたのは、昨日だな」
「いつもの自販機でジュース買ってる時に気付いたんだよね」
その日の日差しは、強かった。
これから夏にもなろうとするので、この街はさらに熱くなる。
その暑さに耐えかね外に出て、そこでジュースを買おうとしてそこで気付いたのだ。
「ほら、このジュース」
「どろり濃厚ピーチ味・・・・?」
「俺が勝ったのは普通にこっちのスポーツドリンクだ」
フムフム・・・と頷き、白虎はその場をよく見る。
だが、そんなところに証拠があるわけもない。
「最後に人形を確認したのは?」
「昨日・・・・風呂に入った時だな。ズボンに入ってんのは確認してる」
「そっかー。それからの行動は?」
時間は大体だけど、と最初に言い、往人が一昨日の記憶を掘り返す。
20:00・・・入浴(出た時に人形を確認済み)
20:30・・・風に当たりに散歩に出る
21:00・・・観鈴と一緒にテレビを見る
22:00・・・テレビの中の花火に感化され、観鈴がやりたがる
22:30・・・長い捜索時間を経て、押し入れの中から花火を発見
23:00・・・準備を済ませ海岸へ。花火開始
23:45・・・花火終了。帰宅
23:55・・・晴子帰宅。いつも通りバイクごと納屋に突撃。土産だと言って、抱えるほど大量の花火を部屋中にばらまく。
24:08・・・晴子飲酒。花火だ!とわめきだす。
24:10・・・花火再び開始。そして戦争が始まった。
※以降のことは、たとえ悪い子でもやってはいけません。
24:30・・・晴子、手持ち花火を片手に二十本持って一斉点火。追い回す。
24:32・・・往人、対抗。が、まぎれていたロケット花火に気付かない。
24:33・・・ロケットに着火。ほかの手持ち花火に引っ掛かって飛ばず、手元で破裂。晴子・観鈴、爆笑。
24:40・・・晴子が持ち込んだ缶ビールをいつの間にか観鈴が完飲。暴走開始
この時点で素面の人間は0になった。
24:42・・・打ち上げ花火の導火線を結び、一斉点火しようと提案。
24:45・・・打ち上げに着火。直後、強風が吹き軒並み倒れる。三人の方を向いて。
ここから観鈴、開翼。
24:48・・・ねずみ花火250発に一斉着火。観鈴、衝撃波で広範囲にばらまく。
24:50・・・晴子、対抗しようと噴出花火「ドラゴン」に着火して、投げる。
24:51・・・追い詰められる往人。手元に残った花火をごっそりつかんで一斉点火。が、残念ヘビ花火。
24:53・・・ヤケになった往人、煙玉50発投入。
その後、猛烈な煙に周囲の住民が通報。
数分後には警察がやってきて、三人を厳重注意。
帰宅、就寝
「昨晩はそんな感じだな」
「あれは楽しかったね~」
「(ポカーン)」
二人の話を聞き、唖然としてしまう白虎。
自分もはっちゃける方ではあるのだが、流石にそこまでではない。
「で、朝起きてだな・・・」
「も、もういいよ」
「そうか?」
白虎はお腹いっぱいだと言わんばかりに止め、深呼吸してから結論を述べる。
「海に流されたんじゃない?」
「あー、やっぱそうか」
「わかってたの!?」
「てかそれしかないだろ」
「それで海とか捜索できるようなむちゃができるのは舜さんくらいかなって」
「いくら舜でもそれは無理だよ・・・・」
あきれ顔でがっくりと肩を落とす白虎。
だが、流されたのが一昨日なら、少し離れた海岸に打ち上げられている可能性もある。
「海岸線沿いに歩いて探す?」
「もうそれしかないっしょー?」
そう言って、砂浜に立つ三人。
手に持つのは熊手だったりスコップだったり。
「潮干狩りですか?」と聞かれて「はい」と答えられるような格好である。
「うぉぉ・・・海藻の塊・・・・」
「これの裏とか・・・うひゃぁフナ虫の大群!?」
「あ~のう~み~・・・どこまでも~」
そんなこんなで、捜索を開始する。
そうして、三時間ほどたったころ。
「あれ!」
「ん?」
「お」
砂浜と道路の間。
防波堤のすぐ下に、一本の杭が打ち込まれていた。
そこに見覚えのある人形がひっかけられており、小さなメモが置いてあった。
《落ちていたので、置いておきます》
「わぁ・・・優しい人が拾ってくれたんだね!!」
「ああ。ありがとな、白虎も」
「いやぁ、もうこれは半分運だよね」
そんなこんなで、人形を見つけ依頼を完遂した白虎。
神尾家にあさりを届けてから、「EARTH」へと帰還する。
そして、局長室に向かうと――――
《白虎立ち入り禁止》
《書類仕事中》
《トラ入るべからず》
「なにこれ」
そんな張り紙が、彼を待ち受けていた。
「入れてよー!」
『バカお前入ってくんな!!』
『書類仕事にはもう関わらせません!!』
「僕だって気を付けるから!!」
『気を付けたってお前のは起こるんだよ!!』
追い出されてしまったようである。
当然だ。
残りの時間が暇になった白虎は、仕方がないのでそれから一日、AGITΩ食堂でお手伝いをしていたそうな。
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(人形が必要かと思ったが、都合のいいものがあるならこっちの方がいい)
防波堤の上。
海岸線の向こうに、今まさに夕日が沈んで行こうとしている。
「良かったね、往人さん」
「まあな。なんだかんだ言って、やっぱり思い入れはあるからな」
海に向かって腰かける男の後ろ。
コンクリートの道路を、観鈴と往人が歩いて帰宅している。
二人はまるで男が見えていないかのように、何の差しさわりもない会話をしながら道を曲がって姿が見えなくなる。
それを男は見るわけでもなく、しかし何となく気配で感じ取る。
指先が、ほんのりと光った。
男の脇の転がる小石が、踊るようにステップを踏んで踊る。
(・・・・ふぅ)
それを止めさせると小石はパタリと倒れ、男の指先には魔法陣のような物が浮かび上がった。
(法術の術式・・・・もう力も弱いが、必要なものだからな)
そう言うなり指をクン、と曲げて方陣をゆがませる。
それは渦を巻いて塊、そして一枚のカラスの羽になった。
懐にしまいこみ、砂浜に飛び降りる男。
その砂浜を見て見ると―――――
一対の足跡があるだけで、男の姿は消えてしまっていた。
to be continued
後書き
またまた登場、謎の男。
そろそろ、彼の行動が何基準なのかわかる人もいるでしょう!!
で、始まった七獣日和
今回は白虎さんです。
ボツタイトルは「しろとら探偵ビャッコ!!」でした。
なに?前の方が良かった?
味気なくてすみません。
ここは往人さんの旅人つながりのキャラでも出そうかと思ったんですが、シンプルに少数メンバーで。
多分次回あたりもそうなります。
白虎
「次回~ 一体誰の日常かな~?」
ではまた次回
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