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真田十勇士

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巻ノ百一 錫杖の冴えその十一

「わかった」
「それでどうされますか」
「切支丹のことは」
「幕府は嫌いはじめていますが」
「どうされますか」
「幕府なぞ関係ないわ」
 顔を背ける様にしてだ、茶々は答えた。
「それこそのう」
「それでは、ですか」
「このことは別に構わない」
「そう言われますか」
「何故か太閤様は嫌われておったが」
 それが何故かまではだ、茶々は知らなかった。そしてもっと言えば考えようともしていなかった。
「叔父上は違っておられた」
「はい、元右府様はです」
「確かにそうでした」
「フロイスという者を大事にしており」
「色々と知識を得ていました」
「それで何故幕府は禁じるのか」
 茶々は何もわからないまま言う。
「妾にはわからぬ」
「では切支丹は」
「このままですか」
「そうされますか」
「幕府は幕府じゃ」
 茶々は本音を出した。
「ではじゃ」
「はい、それでは」
「このことはよしとされますか」
「その様に」
「修理達にもそう言うのじゃ」
 家を取り仕切る彼等にもというのだ。
「幕府は幕府じゃ」
「我等は我等」
「むしろ幕府が従うべき」
「左様ですな」
「太閤様のお家じゃ」
 豊臣家はというのだ。
「それで何故幕府に従うのじゃ」
「むしろ幕府がですな」
「あちらが従うべきですな」
「何かと勝手をしていますが」
「それでも」
「右府殿もじゃ」
 家康、彼もというのだ。
「太閤様の家臣であられたのじゃ」
「ではお拾様にもですな」
「従うべきですな」
「近頃逆らってばかりですが」
「それもまた」
「そうじゃ、姫の祖父殿といってもじゃ」
 千姫、秀頼の正室の彼女のだ。
「勝手はならん」
「ましてやまだ茶々様にご自身の正室にと言われています」
「駿府からその様に」
「不遜極まりまい」
「全く以てです」
「全くじゃ、妾はお拾殿の母であるぞ」 
 彼女が思う天下人のだ。
「その妾にそうした話をしてくるなぞ」
「無礼にも程があります」
「しかも何度も行って来るとは」
「何処まで図々しいのか」
「恥知らずにも程があります」
「その様なことは絶対にせぬ」
 茶々は強い声で言いきった。
「妾はな」
「そうされるべきです」
「ここは是非です」
「そうされてです」
「天下人が誰か見せるべきです」
「必ずや」
「わかっておる」
 茶々はまた言った。 
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