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真田十勇士

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巻ノ百一 錫杖の冴えその十

「よき教えである、しかし問題はじゃ」
「その教えを悪用してですな」
「そのうえで国や民を脅かす」
「そうした邪な者がおる」
「それが問題ですな」
「太閤様はそれ故に切支丹を禁じられた」
 そうしたものを見た、特に民達が他の国で奴隷として売られ働かされていると知って驚いて買い戻したことからだ。
 家康はその秀吉の傍にいた、それでよく知っていているのだ。このことも。
「そしてじゃ」
「大御所殿もですな」
「そうされますな」
「間もなく」
「切支丹の教えの問題ではなく」
「教えはよいのじゃ」
 切支丹のそれ自体はというのだ。
「問題はそのよき教えを隠れ蓑に悪を行う者達じゃ」
「では幕府のこの行いは善」
「そうなりますか」
「うむ、多少手荒くともじゃ」
 それでもというのだ。
「幕府は本気で国と民を護るつもりじゃ」
「ならば善ですな」
「幕府のその政は」
「そうなりますな」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「民、国を護る為には必要じゃ」
「多少手荒くとも」
「それでも」
「しかし伴天連より酷くはならぬ」
 その手荒なこともというのだ。
「ああして神社仏閣を壊したり神主や僧を追放したりな」
「そこまではせぬ」
「そうですか」
「確かに立ち退かぬ者達は死罪にもしようが」 
 しかしというのだ。
「立ち去る、教えを捨てるならよし」
「そうしていきますか、幕府も」
「人の命は無暗に奪いませぬか」
「そこまではせぬ」
 幕府としてもというのだ。
「幾ら何でもな、しかし禁じることは禁じる」
「それは絶対として」
「天下に広まる」
「ではそれに伴いですな」
「天下は動きますな」
「あらゆることがな」 
 幕府の政も諸藩の政もというのだ。
「そうなっていく、切支丹禁制が一つの軸じゃ」
「幕政のですな」
「それになる」
「そしてそれに触れればよくはない」
「到底ですな」
「手荒なことはせぬに限るが」
 しかしというのだ。
「必要とあらばな」
「そうしたこともせねばですか」
「民も国も守れぬ」
「そうした相手ですか」
「そう思う、だからじゃ」
 それでというのだ。
「拙者もそこまでせぬといかんと思う」
「多少手荒でも」
「それでもですか」
「そうしてですか」
「民も天下も守るべきですか」
「そうすべきじゃ、切支丹は危うい」 
 実にだ、こう言ったのだった。そうしてだった。
 幸村は天下万民のことも考えて切支丹のことはそうするしかないと考えていた。だがそれでもだった。
 大坂ではだ、茶々が周りの者達にこんなことを言っていた。
「大坂に切支丹が来ておるとな」
「はい、そうなってきております」
「近頃はです」
「そうなっております」
「幕府や諸藩の動きを見てです」
「大坂に逃れてです」
「そこで生きようとしております」
 周りの女房達が茶々に話した。
「それで伴天連の教会も建っております」
「その数が増えております」
「左様か」
 そう聞いてだ、茶々は言った。 
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