真田十勇士
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巻ノ百一 錫杖の冴えその九
「それが何処であっても」
「幕府でもですな」
「他の家でもですな」
「あの方はやがてはですか」
「召し抱えられ」
「また世に出られ」
「名を馳せられますか」
「うむ」
その通りだというのだ。
「あの方は」
「わかりました」
「それでは」
「うむ、しかし幕府はな」
幸村は今度は幕府のことについても話した。
「切支丹について厳しくなるやもな」
「ですな、どうにも」
「天下を巡っていても感じます」
「諸藩を巡っていても」
「そして幕府の領地にいますと特にです」
十勇士達も言う。
「何かです」
「これまでも切支丹に思うところはあったと感じていましたが」
「どうもです」
「幕府も考えを決めた様ですな」
「切支丹を禁ずる」
「その様に」
「うむ、切支丹は本朝の民を海の外に売り奴隷として使うしな」
それにというのだ。
「切支丹を増やし国を乗っ取ろうと考えている者もおる」
「そうした怪しい者達もいますな」
「民を奴隷にしたり国を乗っ取ろうとする」
「そうした考えの者達も」
「他の教えも認めませぬし」
「厄介な者達ですな」
「そうじゃ、だからな」
それ故にというのだ。
「幕府もじゃ」
「どうしてもですな」
「切支丹を認められぬ」
「そうした者達はですな」
「どうしてもですな」
「そうした風になりますな」
「このことは諸藩もわかっておる」
幕府のその動きを見てだ。
「それで切支丹を禁じだす、若しもじゃ」
「切支丹達と手を結んだなら」
「その者達はですな」
「例え誰であろうと」
「幕府は許す訳にはいかぬ」
「幕府は民を護るのが務めじゃ」
即ち天下の泰平をだ、まさにそれをだ。
「だからこそな」
「民、国を害そうとする切支丹達を許せぬ」
「そしてですな」
「切支丹達と結ぶ者達も許さぬ」
「そうしていきますか」
「そうなる、このことは天下の大事となる」
幸村はこのことがわかっていた、天下を見ているが故に。
「このことを踏まえて我等もな」
「動いていくべきですな」
「切支丹は天下にとって危うい者達である」
「そのことを踏まえてですな」
「動いていくべきですな」
「我等も」
「そうじゃ、拙者もあの者達に危うさを感じておるからな」
幸村自身もというのだ。
「中には純粋に信じておる御仁もおられるから厄介じゃ」
「高山殿ですな」
「あの方はひたすら純粋ですな」
「切支丹の教えを守られていましたな」
「ひたすら信じられ」
「細川殿の奥方もじゃった」
明智光秀の娘であったたまだ、洗礼名はガラシャといいその美貌は天下に広く知られていた。
「純粋に信じておられる方も多い」
「ですな、そうした方もおられる」
「それが余計に厄介ですな」
「教え自体の素晴らしさに触れて」
「そうなられる方も」
「実は伴天連の書も読んだことがある」
この辺り学問に励む幸村らしかった。
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