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第四章

「もうここを出るか」
「この城をか」
「公孫賛のところをか」
「そうするのか?」
「見捨てられて死ぬより攻めて死ぬ方がいいだろ」 
 こうした言葉も出て来た。
「もう袁紹のところに行かないか?」
「あっちの方がずっと勢いあるしな」
「周りの城は全部袁紹の手に落ちたしな」
「公孫賛なら平気で見捨てるしな」
「俺達は無駄死にだぜ」
「じゃあな」
「勝つ方に行く方がいいしな」 
 その方が生きられる可能性も高いからだというのだ。
「それじゃあな」
「もうここから逃げるか」
「袁紹のところに行くか」
「あの五百人の報い与えてやろうぜ」
「五百人位逃げるんじゃないのか?」
「あいつが見捨てた分だけな」 
 こうした話をしてだ、実際にだった。
 公孫賛の兵達は次々に逃げていった、彼等は五百公孫賛が見捨てただけ逃げると思っていた。だが。
 その五百人以上に逃げていった、そしてだった。
 公孫賛軍の士気はかなり落ち全体的に沈んだ雰囲気になった。見張りも気が抜けた様になり。
 それを見てだ、沮授は袁紹に言った。
「機かと」
「兵の士気が落ちているからだな」
「はい、攻めるべきです」
「殿、その攻め方ですが」
 田豊も袁紹に言ってきた。
「ただ攻めるよりもです」
「策を使うか」
「城の中のことは降ってきた兵達から細かく聞きました」
 その城を出て袁紹のところに来た彼等からだ。
「ですから中に入り込みましょう」
「穴を掘りだな」
「そうです、確かに士気は緩んでいますが壁は高く厚いです」 
 その為堅固さは健在だというのだ。
「ですから正面から攻めず」
「下から攻めるか」
「そうしましょう」
「わかった、ではすぐに穴を掘るのだ」
 袁紹は田豊の策をよしとした、こうしてだった。
 袁紹軍は間道を掘り城の下まで掘り進めてだ、外に出たところでだ。
 兵達を一気に送り込み門も開けて一気に攻めた、これには公孫賛は打つ手がなく妻子を殺し自身も自害して果てた。
 こうして公孫賛は滅び袁紹は幽州を完全に手中に収め彼の勢力も併呑した。その祝いの後でだった。
 袁紹は冀州においてだ、田豊と沮授に対して言った。
「公孫賛は過ちを犯したな」
「はい」
 二人は共に主に答えた。
「公孫賛は兵を見捨てました」
「あれが大きかったです」
「兵達に疑念を生じさせ出ていく兵を出しました」
「その兵達が我等に城の中のことを知らせました」
「士気もかなり落ちましたし」
「あのことが決め手になりました」
「そうだな、若しあそこで公孫賛が五百の兵を見捨てていなければ」
 袁紹は二人の話を聞いて述べた。
「我等は今も城を攻め落とせていなかったかもな」
「そうかも知れません」
「囲んだままだったかも知れません」
「あのままですと」
「どうにも」
「そうだな、公孫賛は過ちを犯した」
 五百の兵を見捨てたこと、それがというのだ。
「それで我々に滅ぼされた」
「その通りです」
「公孫賛はその過ちで滅びました」
「自ら滅んだのです」
「その過ちにより」
「そうだな、公孫賛は自ら滅んだのだ」
 袁紹も確かな声で言った。 
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