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歌集「春雪花」

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 淋しさの

  香る秋風

   夜をわたり

 想い侘び濡る

    野に虫の鳴く



 静かに…少しずつ冷えてきた風は、来る秋を感じさせる…。

 真夏の喧騒さえ、まるで幻であったかのように…。

 そんな淋しさを纏う秋の風は、淡い月影の中…どこまでも遠く、彼のところまでも吹いているようで…。

 こんな静かな夜更けは、ただ独り…侘しさに堪え忍び、心で彼を想いて嘆くだけ…。

 あちこちの草むらは秋虫の鳴く音が響き…


 より一層…彼への思慕を募らせる…。



 天の原

  御簾の下がりし

   月なれば

 眺むも侘し

     夜半の秋風



 見上げれば、世の初めから見下ろす広大な空…。

 こんなに広いと言うのに…月は淡い雲の奥へと身を隠してしまっているとは…。

 ささやかに洩れ出ずる月明かり…一人、彼へと想いを馳せる私へと降り注ぐ…。

 心を慰めるものもなく、淋しさに喘ぐ私の横を、肌寒い秋の風だけが吹き抜けてゆく…。


 自業自得と言わんばかりに…。



 
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