言えない告白
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第一章
言えない告白
きりっとした斜め上を剥いた黒い眉に強い光を放つ一重の目、一文字の唇にしっかりとした形のいい顎、黒髪は右で分けていて横を短めにし耳を見せている。背は一七二程だ。
岩波徹二は端正といっていい外見だ、しかし彼はその外見を曇らせてそのうえで周囲に漏らしていた。
「どうしようかってな」
「まだ悩んでるだな」
「決めてないんだな」
「ああ、もうすぐ卒業だけれどな」
それでもとだ、彼はマクドナルドでハンバーガーを食べつつ友人達に話した。
「まだな」
「先生に言おうかどうか」
「そのことを決めてないんだな」
「あと少しだけれどな」
「覚悟決めてないか」
「決心していないなんてな」
「そうなんだよ、野上先生な」
野上真巳、徹二が憧れている相手だ。彼が通っている学校の国語教師で密かに思いを寄せているのだ。
それでだ、思いを寄せているが故にだ。
「告白しようかってな」
「まだ決めてないんだな」
「卒業式の時に」
「一体どうしようかってか」
「決めてないか」
「ああ、実はな」
徹二は友人達に困った顔で話した。
「大学合格したらってな」
「その時に決めようってか」
「そう思ってたんだな」
「そうだったんだよ、けれどな」
それがというのだ。
「何だかんだで今もな」
「悩んでるんだな」
「そうなんだな」
「先生に告白しようかどうするか」
「それをか」
「ああ、決めてなくてな」
だからだというのだ。
「悩んでるんだよ」
「こういうのて中々勇気出ないからな」
「早く言えよってなるけれどな」
「いざ自分がってなると」
「言えないな」
「そのことわかったぜ」
徹二自身もというのだ。
「自分自身のことになってな」
「だよな、俺達もいざ告白ってなるとな」
「言えないからな、これが」
「どうにもな」
「勇気を出せなくてな」
「勇気、それがな」
とてもとだ、また言う徹二だった。
「出せないな、折角大学も受かったのにな」
「進路決まって後は卒業だけ」
「卒業式だけだけれどな」
「まだ決めてないか」
「もっと言えば決められていないか」
「ああ」
その通りだというのだ。
「勇気がな」
「けれどだろ?」
「そこで勇気を出さないとだろ」
「告白出来ないだろ」
「どうしてもな」
「そうなんだよな、何とかな」
徹二はこの世の何かを決める様な顔でクラスメイト達に話した。
「覚悟を決めないとな」
「御前後悔するぜ」
クラスメイトの一人がこう徹二に話した。
「ここで告白しないとな」
「そうだよな」
「ああ、御前やっぱり告白してな」
「それではいって言ってくれたらな」
その相手がだ。
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