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賢者の石

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第二章

「教えてもらうよ、そしてね」
「賢者の石をフランスの為に使う」
「そうするね」
「是非ね」
 こう言ってだ、実際にだった。
 彼はある日サン=ジェルマン伯爵に手紙を出し面会を申し出た。すると流暢な文体でだった。
 フランス語の文章で返事が返って来た、差出人は本人だった。そこには手紙に書いてある日に自身の屋敷に来て欲しいとあった。
 ベルナールは伯爵のその手紙を見て飛び上がらんばかりに驚いた、そしてだった。
 その日を指を折る様にして待っていた、その日が来ることを。その日が来るとだった。
 急いで伯爵の家にまで赴いた、すると門に家の者が待っていて快く中に通してくれた。伯爵の家は貴族の屋敷としては然程大きくなかったが。
 清潔であり不思議な整いがあった、その屋敷の中に入るとだ。
 赤の系統の色でまとめた貴族の服を着たやや小柄な緑の目の男が現れた、緑の目は神秘的な輝きを放ち何処か猫の目に似ていた。
 髪の毛は白いがそれは貴族らしく鬘だ、その男が出て来てだ。ベルナールに礼儀正しい動作を挨拶をしてきた。
「はじめまして、ギース=ベルナールさんですね」
「はい、卿がですね」
「サン=ジェルマンです」
「はじめまして」
 今度はベルナールが挨拶をした。
「今日はお招き頂き有り難うございます」
「いえいえ、それでなのですが」
「手紙に書いていたことですが」
「賢者の石のことですね」
「はい」 
 ベルナールは手紙に何故自分が伯爵と会いたいのかも話していた、賢者の石のこともだ。そして伯爵もだった。 
 そのことを知っていてだ、こう答えてきたのだ。
「わかりました、ではです」
「その賢者の石のことをですか」
「お見せしましょう」
 これが伯爵の返事だった。
「そう致しましょう」
「見せて頂けるのですか」
「左様です」 
 伯爵はベルナールに知的でかつ落ち着いた声で答えた。
「私のお部屋で」
「それでは」
「こちらにどうぞ」
 伯爵自ら案内してだ、彼はベルナールを自室に入れた。そこは自室というよりは色々な書がある書斎といった場所だった。錬金術の道具も多いのは伯爵がどういった人物を物語っているとだ。ベルナールはその部屋に入って思った。 
 その彼を部屋に入れてだ、ベルナールはあらためて彼に話した。
「では今からです」
「はい、賢者の石をですね」
「お見せしましょう」
 こう言ってだ、実際にだった。伯爵は懐から一つの青く輝く石を取り出した。そのうえでベルナールに対して話した。
「これが賢者の石です」
「あらゆるものを金や銀、宝石に変えるという」
「はい、この通りです」
 伯爵はここでだ、部屋の机の上にあった一つのペンを取ってだ。
 石にかざしてみせた、するとそのペンがだ。
 金になった、そしてまたかざすとだ。
 ダイヤになりまたかざすと銀にもなった。伯爵はその様々な高価なものになったペンを見せたうえでベルナールに話した。
「この通りです」
「賢者の石は本当にあり」
「はい、この様にしてです」
「あらゆるものをですね」
「あらゆるものに変えられます」
 実際にというのだ。
「錬金術の奥義を知ればです」
「その賢者の石を作ることが出来て」
「例えば石を金に変えられます」
「素晴らしいですね」
「そうですね、確かに」
「私に賢者の石の造り方をです」
 ベルナールは伯爵にあらためて申し出た、今は銀になっているペンを熱い視線で観ながら。 
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