血の付いた大扉
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第一章
血の付いた大扉
アイルランドには一つの伝説がある、その伝説はよく知られているものだ。
しかし同じEU内でありアイルランドまで教師の仕事でポーランドから来たミカエラ=キュリーはその話を聞いて驚いて言った。
「首のないですか」
「いえいえ、首はあります」
驚くミカエラに校長のダグラス=オーウェンは話した。見事な金髪に湖の色の睫毛の長い瞳を持ち面長できめ細かな白い肌に豊かな胸を持つ彼女に。数学の教師だが女優としても通用する外見だ。野暮ったい大きな鼻がやけに赤いオーウェンとは正反対といっていい外見である。
「脇に持っています」
「自分の」
「はい、その姿は騎士だったり美女だったりしまして」
「首なし馬に曳かれた馬車に乗ってですね」
「夜の街を走るのです」
「そうした妖精がいますか」
ミカエラは古い校舎の廊下を歩きつつ話してくれているオーウェンに応えた。
「アイルランドには」
「はい、そうです」
「何かです」
ミカエラはデュラハンについてその姿からこうも言った。
「幽霊みたいですね」
「妖精ではなくですね」
「はい、誰かが死んでです」
そしてというのだ。
「幽霊になったものでは」
「そうかも知れませんね」
オーウェンもミカエラのその可能性を否定しなかった。
「その外見から考えまして」
「そうですね、自分の首を脇に抱えた騎士ですと」
「美女という説もあります」
「どちらにしろその外見ですと」
たどたどしい言葉で言う。
「そう思います」
「そうですね」
「はい、しかしここでは有名ですか」
「知らないアイルランド人はいないかと」
そこまで有名だというのだ。
「アイルランドは他にも多くの妖精達がいますが」
「妖精の国ですね」
「そうです」
オーウェンは微笑んでミカエラに答えた。
「そう言っていい国です」
「そうなのですね」
「妖精の本も出ている程です」
「妖精について書かれた本が」
「よければそちらもお読みになって下さい」
「はい」
数学の教師だがミカエラはそういったファンタジー系の話も嫌いではないのですぐに答えた。
「そうさせてもらいます」
「それでは」
「はい、それでデュラハンですが」
ミカエラはオーウェンにあらためて言った。
「一体何をする妖精でしょうか」
「何を、ですか」
「はい、ただ夜の町を走っているだけですか?」
首なし馬に曳かれた馬車に乗ってだ。
「そうしているだけですか?」
「いえいえ、勿論そうではありません」
オーウェンはミカエラに笑顔で答えた。
「何かをします」
「何かとは」
「それはですね」
オーウェンはここで話そうとした、しかし。
ここでオーウェンに後ろから学校に昔からいる教師が声をかけてきた、そして校長にいる彼に言ってきた。
「あの、校長先生」
「何でしょうか」
「実はです」
学校内で出来事が起こったことを話した、すると。
その話を聞いてだ、彼はミカエラに顔を戻して言った。
「すいません、急用が出来まして」
「そうですか」
「はい、このお話は後で」
「それでは」
「はい、また」
こう言ってだ、彼は学園内の何処かに声をかけてきた教師と共に行った。そしてだった。
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