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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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65部分:第六話 馬超、曹操の命を狙わんとするのことその八


第六話 馬超、曹操の命を狙わんとするのことその八

「聞いているな」
「最初は都で肉屋の家に生まれられたのだったな」
「そうだ。それが妹君が宮廷に入られてだ」
「外戚として大将軍になったな」
「そうだ。何進殿は内心このことをかなり気にしておられる」
 そうだというのだ。
「華琳様は宦官の家の出、そして何進殿が頼むもう一人の袁紹殿もだ」
「母上の出が、だったな。名門袁家であるが」
「生まれはよくないと言われる。御三方は名門とは言えないのだ」
 それに対して馬家はというのである。
「馬家とは違う」
「では曹操殿はそれを嫉妬して、と考えられたのだな」
「実際にそれは風評になっている。袁紹殿という話もあったがあの方は無類の謀略下手だ」
「下手なのか」
「政治はともかく謀略は得意ではない」
 袁紹のバランスの悪さがここでも出ていた。
「我が君とはそこが大きく違う。政治や前線指揮は得意だが奇計や謀略はかなり不得手なのだ」
「では袁紹殿の可能性は誰もが否定したか」
「それに対して華琳様はだ」
 違うというのだ。
「智略の持ち主としても名高い」
「ならば余計にか」
「しかも華琳様はああした方だ。誤解を受けやすい方だ」
 もう一つ問題があるのだった。
「実にな」
「ではそれによってか」
「そうだ、それによってだ」
 また言う夏侯惇であった。
「馬騰殿のことを馬超殿は耳にされて。信じたのであろう」
「そうか」
「そうだ。そういうことだろう」
「わかった。では夏侯惇殿」
「むっ!?」
「その独り言をだ」
 今度は関羽から夏侯惇に対して言ってきた。
「それを馬超の前でも話してくれないか」
「このことをか」
「そうだ、このことをだ」
 こう言うのだった。
「頼めるか」
「・・・・・・いいだろう」
 夏侯惇も関羽の言葉に頷いた。
「それではだ。行こう」
「うむ」
 こうして二人は馬超のところに向かう。彼女はある天幕の中で木の檻に入れられていた。そこでその独り言を聞いてである。
「そんな、じゃああたしは」
「そうだ、曹操殿ではなかったのだ」
 関羽は穏やかな声で馬超に話していた。その檻の前にしゃがみ込んでだ。
「貴殿の勘違いだったのだ」
「我が君はそうしたことはされぬ」
 夏侯惇はまた独り言を言った。
「貴殿の母上は立派だった。最後まで病であることを隠されていたのだからな」
「嘘だ・・・・・・」
 しかしだった。馬超はそれを聞いても信じられなかった。信じたくはなかったと言うべきか。これは感情としてそうなることだった。
「そんなことは嘘だ・・・・・・」
「いや、嘘ではなくだ」
「こいつは曹操の部下だろうが」
「それはその通りだ」
 夏侯惇もそのことは認めた。
「それがどうかしたのか」
「それなら曹操のことを悪く言うものかっ」
 馬超は当然の帰結としてこう考えた。
「そうだろ?そんなの」
「いや、しかしだ」
 関羽は何とか馬超を止めようとして言った。
「そんなことはだな」
「関羽、あんただってな」
 馬超の感情は関羽にも向けられた。
「実際どうなんだよ。曹操の奴にな」
「私が?」
「そうだ、丸め込められたんじゃないのか」
 檻の中から彼女を見据えて言った。
 
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