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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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638部分:第四十九話 馬岱、真名を言うのことその九


第四十九話 馬岱、真名を言うのことその九

 谷の向かい側の大木の一本に狙いを定めてだ。そのうえで矢を放った。
 矢は一直線に大木に向かい突き刺さった。そうしてからだった。
「それじゃあ」
「はい、今度は蒲公英ちゃんが御願いできますか」
「最初に行ってくれますか?」
「うん、わかったよ」
 馬岱は孔明と鳳統の願いに笑顔で応える。
「それじゃあ向かい側に言ってだよね」
「そうです。命綱を大木に何重も括り付けて下さい」
「それも御願いします」
「用心に用心を重ねてだよね」
 こんな話をしてであった。今回はまず馬岱が橋を渡った。彼女は何なく渡りそのうえでだった。大木に命綱を何重にも括り付けた。それからだった。
「それじゃあ皆さん」
「渡りましょう」
 軍師二人の言葉と共にであった。一行は橋を渡るのだった。
 一人また一人と渡り最後はいつも通り劉備だった。やはりその横には魏延がいる。彼女は腰の命綱を見ながら劉備に話す。
「それではですね」
「はい、いよいよ」
 劉備も両手を拳にして異を決した顔になる。
「ここを渡って」
「南蛮に行きましょう」
「南蛮に行けば」
 どうかというのだった。
「皆で美味しい果物が食べられますね」
「はい、その通りです」
 向かい側にいる他の面々は劉備の今の言葉にずっこける。しかし魏延だけは真面目な顔でだ。彼女のその言葉に頷くのだった。
「参りましょう」
「それでは」
「全ては私にお任せ下さい」
 魏延の熱さはここでも変わらない。
「それでは」
「いつもすいません」
「ですからそれは御気になさらずに」
「けれど」
「私は私のしたいようにしているだけですから」
 それが彼女だというのである。
「しかし何はともあれです」
「橋を渡ってですね」
「はい」
 劉備に対してこくりと頷いて述べる。
「渡りましょう」
「それじゃあ」
 劉備を護るようにしてそのうえでだった。二人もまた命綱を着けてそのうえで橋を渡ろうとする。二人はすぐに橋の真ん中まで来た。
「劉備さんも渡ったらいよいよね」
「そうですね」
 神楽と月はその二人を見ながら話をしていた。
「南蛮ね」
「もうここが南蛮ですよね」
「その通りじゃ」
 厳顔もこう二人に答える。
「ここがまさにそれじゃ」
「じゃあいよいよ剣が」
「劉備さんの剣が元通りに」
「なるぞ。ではじゃ」
「劉備さんが渡ったら」
「いよいよ」
 彼女達は安心していた。これで谷は終わったと思った。だが。
 劉備が足を滑らせてしまった。そしてだ。
 左手から落ちようとする。一行はそれを見て慌てた。
「まずい!」
「これは!」
 だが魏延がいた。彼女はすぐに劉備のその手を取った。
「劉備様!」
「ぎ、魏延さん!」
「危ない!」
 慌てて彼女のその右手を掴む。そのうえで引き上げようとする。しかしだった。
 彼女は何とか劉備の手は掴めた。しかしだ。
 橋に何とかしがみついているだけだった。彼女も落ちようとしている。劉備の下はその沸騰する赤い泉が顎を開いていた。
「くっ・・・・・・」
 魏延は何とか劉備を引き揚げようとする。しかしだった。
 中々引き揚げられない。その顔に苦渋が浮き出る。
「まずい、このままでは」
「魏延さん、ここは」
 その劉備がだ。彼女の顔を見上げながら言う。
 
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