恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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636部分:第四十九話 馬岱、真名を言うのことその七
第四十九話 馬岱、真名を言うのことその七
「だからここはじゃ」
「わかったわ。それじゃあね」
こうしてだった。一行は一つ一つ跳んでそれで進んでいく。そしてだ。
劉備は何とか慎重に進む。魏延がその彼女を見て言う。
「大丈夫です、桃香様」
「けれど何か」
「いざとなれば私がいますから」
だからだというのである。
「ですから御安心下さい」
「魏延さんが」
「いざという時は御身体を御護りします」
こう言ってやはり劉備の傍を離れないのだった。この時もだった。
劉備は無事渡り終えた。それを見てほっとする魏延だった。
「無事で何よりです」
「何が魏延さんって本当に」
「いえいえ、御気になさらずに」
劉備にはあくまで忠義である。
「それではいよいよですね」
「そうですね。五つの谷の最後ですね」
「そこを越えれば」
「いよいよ南蛮なんですね」
劉備のその顔に期待するものが宿る。
「それじゃあ」
「はい、参りましょう」
四つ目の谷も越えたのであった。そして。
最後の谷であった。ここは。
「ここなのだ?」
「何か下の泉真っ赤なんだけど」
「しかもぶくぶと出ているのだ」
「沸騰してる?まさか」
張飛と馬岱が下のその泉を覗いて言う。
「ここって」
「とんでもない場所なのだ」
「言うまでもないことじゃが」
ここで厳顔も話してきた。
「ここに落ちればじゃ」
「死にますよね」
「骨も残らん」
素っ気無いがとんでもない言葉だった、
「あっという間にだ」
「ここを渡らないといけないのだ」
「ここを渡ればいよいよ南蛮じゃ」
厳顔は張飛にこうも話した。
「それではわかるな」
「わかってはいるのだ」
張飛はそれは間違いないというのであった。
「要は落ちないといいのだ」
「怖くはないな」
「鈴々はお化け以外は怖くはないのだ」
何気に自分の弱点まで言ってしまった張飛だった。
「だからここも大丈夫なのだ」
「その割りには怯えているように見えるが?」
「鈴々はいいのだ」
自分自身はというのだ。それは確かな声によるものだった。
「けれど。お姉ちゃんは」
「劉備殿か」
「ここを渡れるのだ?」
「それは任せてくれ」
ここで言うのは魏延だった。
「私がいる限り劉備様は何があろうとも」
「それは私が言おうと思っていたのだが」
関羽は魏延の今の言葉を聞いて面白くなさそうな顔で述べた。
「どうも最近姉者の傍にいることが少なくなったな」
「それは気のせいではないのだ」
張飛はここでも困った顔を見せる。
「焔耶があまりにもおねえちゃんを独占し過ぎるのだ」
「いや、これは独占ではない」
本人はそれを否定する。
「私はただ、だ。劉備様を」
「ばればれだがな」
「あたしでもはっきりわかるぜ」
趙雲と馬超も呆れてしまっている。
「それでも桃香殿の安全は保たれているがな」
「けれど殆ど独占だよな」
「まあとにかく」
黄忠は穏やかな調子で話してきた。
「ここはね。慎重に渡りましょう」
「さて、橋はあるがじゃ」
厳顔は吊り橋を見ていた。
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