とある3年4組の卑怯者
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11 学級文庫係
前書き
今回は学級文庫係としての藤木と永沢の活動を描写してみたいと思います。
二人が学級文庫係を担っているという設定はアニメ「ちびまる子ちゃん」2期223話「学級文庫係の苦労」の巻からの引用です。
リリィは教室の黒板の前にある本棚を眺めていた。そこにまる子とたまえが入ってきた。
「リリィ、何してるの?」
まる子が聞いた。
「この本棚に色んな本があると思って」
「ああ、それ学級文庫だよ」
「ガッキューブンコ?」
「クラスのみんなが読んでもらいたいと思う本を家から持ってきてこの本棚に置くんだよ。誰でも自由に読んでいいし、もちろん借りることもできるよ」
たまえが詳しく説明した。
「借りるってことは家に持ち帰ってもいいの?」
「うん、学級文庫係に頼めばできるよ。永沢と藤木が係だから二人のどっちかにお願いすれば借りられるよ」
たまえの説明にリリィは理解できたようだった。そのとき、まる子があることを思いついた。
「そうだ、リリィも是非みんなに読んでもらいたい本があったら持ってきてよ!」
「そうね、そうしようかな」
昼休み、リリィは藤木と永沢に話しかけた。
「永沢君、藤木君、私も学級文庫の本を借りたいんだけど、いいかしら?」
「ああ、もちろんさ、一週間後には返してくれよ」
永沢が応答した。
「ありがとう、この本を借りるわ」
それは藤木が持ってきたとされる(実際には永沢が持ってきてあたかも藤木が愛読していたと見せかけたものであり、後にウソが皆にバレたが)「走れメロス」だった。
藤木は焦った。また内容の説明を要求されたらどうしよう、と。
「あ、リリィ、君も是非読んでもらいたい本があったら持ってきてくれよ」
永沢がリリィにそう告げた。
「そうね、昔読んでいたのは英語の本が多いからみんなには読めないし、日本語の本はあっても日本語の勉強に使った教科書ばかりでつまんないと思うし・・・、そうだ、私も自分で本を買って読んでみたいな。そしたら持ってこれるしね。学校終わったら一緒に本屋さんへ行って手伝ってくれるかな?」
そのとき、藤木は心の中で嬉しくなった。
(リリィが僕を頼ってくれてる・・・!!)
「うん、いいよ!放課後、本屋さんに行こう!」
藤木は喜んで承諾した。
「リリィは本屋さんの場所はわかるのかい?」
永沢が聞いた。
「うーん、案内してくれるかな?」
「分かったよ。僕が案内してやるよ」
永沢が提案した。藤木は永沢にリリィを奪われるのではないかと不安を感じて永沢にこの事を聞いてみた。
「で、でも永沢君、リリィの家どこかわかるのかい?」
いつもは藤木を見下す永沢もさすがにこの質問には答えられず、焦った。藤木の方は招待されたことがあるのでリリィの家の場所は分かっていた。
「わ、分かった。藤木君、案内してくれよ」
「うん」
こうして三人は約束を決めた。
放課後、藤木は家に帰るとランドセルを置いて永沢の家へ向かい、永沢を呼んだ。そして、二人でリリィの家へ向かった。
リリィの家に到着し、ドアを叩いた。リリィの母が出迎えた。
「こんにちは、藤木です。リリィいますか?」
「あら、ちょっと待っててね」
数分して、リリィが出てきた。
「お待たせ、それじゃ行きましょ」
リリィは母に行ってきますと告げて、二人と共に本屋へ向かった。
「あ、そうだ、リリィはお金持っているのかい?」
永沢が聞いた。
「ええ、大丈夫よ。この前藤木君がくれた図書券まだ使ってなくて、これで買おうと思っているの」
藤木は赤面した。その図書券は以前、藤木がまる子やみどりたちとデパートに行った時に文房具屋のおまけで貰い、それをリリィにあげたものだった。
「ありがとう、リリィ、使ってくれて」
「だって、せっかく藤木君がくれたんだもん、使わないともったいないからね」
リリィは微笑んで言った。そのとき、永沢はこの二人の仲が羨ましいのか、藤木だけいい感じになって気にくわないのか、イライラしていた。
藤木が質問した。
「そうだ、イギリスではどんな本があるのかな?」
「そうね、コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』とか、アガサ・クリスティーの『名探偵ポアロ』『ミス・マープル』とか、推理小説が有名ね。『ロビンソン・クルーソー』や『ガリバー旅行記』などの冒険小説も人気あるわよ。他には『不思議の国のアリス』とかかな。私結構それ読むの好きだったわね」
「へえ、じゃ、そういうの探してみようかな」
「うん、みんなに読んでもらえたら嬉しいな」
本屋に到着した。三人はイギリスの作品の本を探した。と、その時・・・。
「うわあ、『トム・ジョーンズ』!パパが好きな本だわ!」
「え、お父さんが好きって君の家にあるのかい?」
藤木が聞いた。
「あるけど英語だから、これならみんなも読めるかな」
「でも、これ長いな。4巻まであるじゃないか。全部買うと図書券1枚で済まないぞ」
永沢が嫌みがありそうに言った。
「う、そうだ、足りない分は僕と永沢君で出そうよ!」
「僕は嫌だね、藤木君、君だけが協力しろよ」
永沢が拒絶する。が、リリィが異議をとなえた。
「永沢君、私のためにここまで来たんでしょ、藤木君に面倒押し付けないでよ!学級文庫係でしよ?」
「ふん、ならリリィと藤木君二人で足りない分のお金をだせばいいだろ?」
「分かったわよ、藤木君そうしよ?」
「う、うん・・・」
藤木とリリィは足りない分のお金を出しあった。
本の購入を済ませて三人は帰る途中、藤木はリリィに本の内容を聞いた。
「リリィ、『トム・ジョーンズ』ってどんな話だい?」
「私も実は実際読んでないからわからないけど、トム・ジョーンズって捨て子の男の人がいろいろな辛い目に遭いながらも生き抜いていく話よ。最後はお互い好きになっていたソファイアっていう女の人とめでたく結ばれるの」
「へえ、 僕も読んでみようかな」
藤木と永沢はリリィと別れ道にさしかかった。
「藤木君、今日はありがとう、さすが学級文庫係ね。バイバイ」
「いやあ、どういたしまして」
藤木は学級文庫係としての自分が誇らしく感じていた。
リリィは二人と別れた。そのとき、永沢はえっ!と驚いた。
(藤木君だけ?!僕は、僕には礼を言わないのかい?!)
永沢はこれが気にくわないのか、藤木と別れるとき、さよならの一言も言わずに帰った。
(永沢君、何をそんなに怒っているんだろ・・・?)
後書き
次回:「拝読」
藤木はリリィが読んだ『トム・ジョーンズ物語』を学級文庫から借りて読むことにする。ところが、その先に事件が・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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